家庭訪問 *6
「なんでも、あいつが居なくなればこの家の富が手に入るとか……」
「……どういうこと?」
思わず呟くと、彼は呆れた表情を向けてきた。
「だから、俺は詳しく知らないんだって」
「……あ、そうだね。ごめん」
別に彼に質問した訳ではなかったけど、一応謝罪しておいた。
その時、先程よりは控え目な音を響かせて扉が開いた。
「勝手に変な話をしないで欲しいの」
言いながら部屋の中に入ってきた友里音ちゃんの手にはお盆があり、その上に湯飲みとお茶菓子が乗っていた。
湯飲みからは湯気が立ち上がっているので、恐らく淹れたてなのだろう。
「俺が何をしようがお前には関係ないだろ」
「……癒織に適当なことを言わないでって言っているの」
少年の言葉に、友里音ちゃんはすかさず言い返して彼を睨み付けた。負けじと、少年も友里音ちゃんに険しい視線を向けた。
やはり、この二人が揃うと揉め事に発展するらしい。
「あたしは癒織と遊びたいの。いい加減に出ていって」
「……まあ、俺はお前と違って忙しいからな。望み通り出ていってやるよ」
流石に分が悪いと思ったのか、少年は吐き捨てるように告げると友里音ちゃんのとすれ違いで部屋から出ていった。
扉が閉まるところを見届けると、部屋の中を暫しの沈黙が包み込んだ。
「……」
「……変なこと言われなかった?」
「いや、そういうことはなかったけど……」
語尾を濁すと、友里音ちゃんはボクが言いたいことを正確に理解したようで困ったような表情を浮かべた。
「あの話は気にしなくて良いの」
「……そうは言われてもね」
流石にあんな中途半端なところで終わられるとすっきりしないからね。
友里音ちゃんを無言で見詰めると、彼女は観念したらしく溜め息を一つ吐いた。
「……確かにそういう噂はあったの。お父様は有名な実業家だから、あたしが言うのもなんだけど狙っている人は多かったの」
「それからどうしてそういう噂に?」
「ただあたしとお父様が知り合ったのが、お母様と知り合ったのより早かったというだけなの」
「……ええと、つまり、周りの人たちは友里音ちゃんの父親が母親には然程興味が無いと思っている、ということかな?」
提示された情報から考えて半信半疑で尋ねると、友里音ちゃんは無言で肯定した。
「……でも、キミの話から察するにそのようなことは無いんだよね?」
「勿論なの」
友里音ちゃんは、力強く頷いた。
恐らく、友里音ちゃんにとって二人は自慢の存在なのだろう。
「……ところで、さっき言っていた「お人形なら一緒に居られる」とかいうのはどういう意味なのか聞いても良いかな?」
この流れなら話してくれる可能性もあるかなと、あまり不自然にならないように意識して聞いてみた。
ボクの質問に、友里音は「しまった」と言いたげな表情になった。




