家庭訪問 *5
「……今、あいつ付きの使用人は居ない。三ヶ月くらい前に五人目のやつが辞めてそれっきりだ」
その言葉を聞いた時、ボクの脳内では先程の映像が繰り返し再生された。
『あたしのお友達は、あたしの事に巻き込まれていなくなっちゃうから』
この言葉と寂しげな表情の友里音ちゃん。
丁度、目の前の彼が乱入してきて話が中断されてしまったけど、きっと今の話に関係があるのだろう。
「五人目というのは、いまいちぴんと来ないけど多い……よね?」
「ああ。基本的に一定の年齢になったら一人決めるんだ。あ、家系に仕えるんじゃなくて個人に付くやつの話な」
引っかかる可能性のあるところで質問する前に補足説明を入れられることには単純に感心した。
……それだけの気遣いが出来るなら、友里音ちゃんにも同じように接すれば良いと思うんだけど。
「使用人というより、従者のような感じ?」
「そう。俺の時は生涯のパートナーになるって教えられた。……あいつは、家に来たときにはもう使用人が居て良い年齢だったからすぐに決められた」
そこまで一息に言うと、彼は何かを思い出そうとしているのか視線を天井に移した。
「……でも、その使用人は異例の速さで辞職した」
「理由を聞いても?」
「いや、知らん」
「……」
どうして話したんだろう、彼。
思わず呆れた眼差しを向けると、流石に自覚はあったのか怒り出すことは無く逆に視線を逸らしてぼそぼそと呟き始めた。
「お前は知らなくて良いって言われた」
「……だから、何故に話した」
「ん? だから? ……あ、でも、そのときに流れた噂なら知ってるぞ」
思わず口をついてしまった言葉にもさして反応を示さなかった彼に、ボクは何ともいえない気持ちになった。
かなり短い付き合いだけど、彼の人柄は何と無く分かった。
まず、説明の仕方から分かるように、意外に面倒見が良い。
そして、友里音ちゃんのことを嫌っているわけではない。にもかかわらず、あの態度だけど。
それから、今までのボクに対する話し方から推測するに、そこまで怒りの沸点が低いわけでもない。
つまり、此処から導き出される答えは、友里音ちゃん限定で子供じみた暴力性が顔を出すという、残念極まりない性格であるということ。
ツンデレと形容するのも何だか違う気がするし、とにかく残念としか言いようが無い。
ボクは、何とか溜息を呑みこむと、脱線しかけた思考を切り替えて彼をじっと見詰めた。




