家庭訪問 *4
「……お前は、」
無言で見詰め合っていると、少年が口を開いた。どうやら、かなりの社交スキルを持っているようだ。
少なくとも、ボクはこの状態で口を開く勇気は無いよ。
ボクは少し感心しながら、少年の言葉の続きを待った。
「あいつから何か聞いてんのか?」
「……何か、とは?」
「あいつのこととか」
「……いえ、特には」
一瞬、「よく物を壊す兄」の話は聞いていたという言葉が頭を過ぎったけど、面倒なことになりそうだと思ってボクは口を噤んだ。
「ふぅん。……だったら、俺が教えてやろうか?」
自分が教える側という、ある意味では優位に立ったと感じたからなのか、そう言った彼は少しだけ機嫌が良くなったように見えた。
「……」
正直に言うと、ボクは困っていた。
こういう話は本来本人が居ないところでするべきではない、とボクは思っている。
だけど、同時に彼の機嫌を損ねるのも得策ではないと勘が告げている。
「ふん、だったら教えてやるよ」
ボクの無言を肯定ととったのか、はたまた、ただ話したかっただけなのか、口を開いた彼は特にもったいぶることなく話し始めた。
「あいつは、元々この家の子供じゃないんだ。……別に、複雑な話でもないんだけど」
彼は一度そこで言葉を切ると、ボクの方を見てきた。
まるで、話についてこられているか確かめるような様子に、ボクは意外に思いながらも少しだけ苛立った。
流石に、そこで躓く人は居ないと思うんだけど。そもそも、まだ話し始めたばかりなわけだし。
無言で促してやると、彼は満足気に頷いて口を開いた。
「まあ、簡単に言うと、俺の父親の再婚相手の子供ってわけ」
「……なるほど」
だからこそ、この家での扱いがこんな風なのかな?
さっきから何度か思っていたけど、ボクのイメージしている良家の人に対する行動に沿わないところがあったし。
考えてみれば、この部屋の位置も中心からずれている。
それに良く見れば、この部屋にはそのまま生活出来そうな家具やらが多くある。そのことも、あまりこの部屋から出ないようにしていると考えれば説明がつく。
まあ、それが友里音ちゃんの意思なのか、この家の主人の意向なのかは分からない。
……どちらにせよ、本家の子供ではないだけでこのような扱いというのには疑問を感じるけど。
「なんだよ、もう少し反応しろよ! 面白くねぇの」
「そう言われてもね……」
ボクは、彼の相手をするより今の話について考えたいんだけど。
「……じゃあ、もう一つとっておきの話をしてやる」
少しむくれた後、彼は得意気な表情になった。
此処まで聞いたならば同じことだと、ボクも話を聞く体勢になった。




