家庭訪問 *3
本当は昨日に内に更新する予定だったのですが、不慮の事故(鍵を忘れて外出した)のせいで、野外で五時間弱待ちぼうけをして力尽きました。
突然現れた少年は、無言でボクたちの方に歩を進めてきた。
後数歩で積み木に到達するというところで、友里音ちゃんが両手を広げて立ち上がった。
「これ以上近づかないで欲しいの」
あまり大きな声では無かったけど、言った相手には伝わっていたようで、少年は眉をひそめた。
その様子に、友里音ちゃんは小さく体を震わせた。
「……ムカつく。なに逆らってんだよ? 大体、俺に断りもなく人呼びやがって」
どうやら、ボクも彼の不機嫌の一端を担っているらしい。
まあ、仕事で敵意を向けられることもその逆も多々あるから、別にこれくらいどうということも無いけど。
……寧ろ、こんな中途半端な殺気を飛ばしたら、ただ怒りを買って無意味に仕事の難易度が上がるだけだし。
「お父様に言われたの。……貴方の許可は必要ないの」
「……」
友里音ちゃんは事実をそのまま言っているだけなのだろうけど、こういう相手には逆効果だと思うんだよね……。
案の定、少年は激昂して残りの数歩を簡単に詰めると、無造作にその右手を払った。
大きな音を立てて崩れる積み木の山。
友里音ちゃんは、止めようとしていた中途半端な体勢のまま、少年を怒りと諦めが混ざった表情で見つめていた。
二人の様子をただ見ていたボクは、少年が友里音ちゃんを嫌っているわけではないことを何と無く察した。
言うならば、小学校低学年の男子が好きな子に嫌がらせをしてしまうような感じかな。
まあ、この二人の場合は、恋愛感情というより興味関心だと思う。
気になるからちょっかいを出して、反応が気にくわないから怒るというのもどうかとは思うけど。というか、本人に伝わっていなければ世話ないよね。
……どう見ても、友里音ちゃんは彼に苦手意識を持っているよ。
「ごめんね、癒織。……他の事で遊ぶので良い?」
「……構わないよ」
どうやら、友里音ちゃんは少年に対して無視を決め込んだようだ。ボクは、一瞬無視して良いものか迷ったけど、今は友里音ちゃんのお客なので彼女の意向に従うことにした。
「ちょっと、お茶とお菓子を貰ってくるの」
「ボクもついて行った方が良い?」
「大丈夫なの」
友里音ちゃんは、小さく呟くと少年の横をすり抜けて部屋を出て行った。
「……」
「……」
……こうなるのが分かっていたからついて行くか聞いたのに。
残されたボクと少年は、お互いに友里音ちゃんを通して先程軽く知り合ったばかりの上に、控えめに言っても良い感情は抱いていない。
当然の如く、この場は嫌な静寂で包まれた。




