束の間の安息 *1
「一応、お邪魔します……」
家主は居ないけど、念の為扉を軽く叩いてから部屋に入らせてもらった。中は相変わらず片付いていて、年頃の子供を持つ母親なんかが羨ましがりそうだと思った。
取り敢えず中央に置いてあったテーブルの傍に座って待たせてもらうことにした。
……しかし、偶然かもしれないけど、今回二人帰して眠っていた期間も二日間だから、一人につき回復に丸一日かかる分の魔力を消費と考えると、結構な重労働になりそうなにがするんだよね。
多少魔力量が増えることを考慮しても、正直焼け石に水だろうし。
何人召喚されたのか定かではないけど、目に見える範囲だけでも相当な人数が居た筈だから、やはり何か手を打たないとかな。……何も思いつかないけど。
今後のことを考えて少し憂鬱になったとき、部屋の扉が勢い良く開いた。どうやら荷物で手がふさがっていて足を使って開けたようだ。
「遅くなったッス」
「いや、それは別に良いのだけど、声を掛けてくれればボクは扉くらいなら開けたよ?」
「あ」
間の抜けた表情のユノくんは、先程と同じ声を漏らした。その後ろから入ってきたひーちゃんが失笑しているのが見える。
……これは、気づいていて放置した感じかな? この二人はなんだかんだ言っても仲良しだよね。
「リューノ、湯のみを出してもらっても良いかしら?」
「了解ッス」
ユノくんは、ひーちゃんの言葉に手に持っていた籠をテーブルに置くと部屋の天井付近にある戸棚から湯飲みを三つ取り出した。ひーちゃんは手に持っていた急須を傾けて中身を均等に注いでいった。
その色がやたらと鮮やかな紫色で、ボクは妙に懐かしさを感じた。
……前に出してもらったお茶も青色だったからね。ひーちゃんは、こういうのが好きなのかな?
「これは、キリーに用意してもらった滋養のあるお茶よ。色はこれだけど、身体に害はないわ」
「うん、別にそれは心配していないよ」
「こっちは島で貰ってきたお菓子ッス。冷やさないといけない物もあったから、地下に置いておいたんス」
「成程ね。それにしても、量がものすごく多い気がするのだけど」
「あ、それは、お礼にとイールが大量によこしたからッスよ。これとは別に、ユオリ宛に預かっているから後で渡すッスね」
これだけでもかなりの量なのにまだあるとは……。
少し、ティーくんの懐事情が心配だよ。
ひーちゃんは話はこれで終わりというように咳払いを一つすると、湯飲みを手に持って掲げた。その意を汲んで、ボクたちも湯飲みを持った。
「では、改めまして、ユオリの快気を祝して……、乾杯!」




