新たな問題
「ああ」
中から聞こえてきた声に促されて、ボクは部屋の扉に手を掛けた。
部屋の中は、薬品の匂いで満ちていた。その中央には、机に向かって何かの作業をしているきーさんの姿。
「呼んでいると言われて来たのだけど、何のようかな?」
「少し聞いておきたいことがあったのである」
きーさんは、そこまで言うと少しだけ考えるような素振りを見せた。
「率直に聞くので、答えられないことはそう言ってくれて構わないのである」
「了解だよ」
真剣な様子のきーさんの言葉に、ボクは背筋を伸ばしてから答えた。
……まあ、質問の内容は何と無く想像出来ているけどね。このタイミングで聞くということは、流石に無視しきれなくなってきたのかな?
「まずは、体調からである。……最初に聞いておくべきだったが、体調面で伝えておきたいことはあるか?」
「んー、特に無いかな。ただ魔力を体力に変換しているから体力に不安はあるけど。長時間の運動とかには向かないね」
「ふむ。魔力を変換とは、なかなか興味深いのである。……ところで、ずっと気になっていたのだが、その翼はなんなのであるか?」
「……」
もはや誰も突っ込まないから、気にしていないのかと思っていたことを今更になって尋ねられてボクは閉口した。
「……足を少し怪我していて、それの補助という感じかな」
「足を!? ……気付かなかったのである」
「まあ、言っていなかったからね。……治すあてはあるから、これは診てくれなくて大丈夫だよ」
ボクの足に固定されたきーさんの視線に苦笑しながら言った。
……いくら仕事上慣れているとはいっても、あまり見たいものではないだろうし。そもそも、ボクも見せたいとは思わないからね。
「……そうであるか。そういえば、今回の原因は魔力の使い過ぎだと聞いていたのだが、ワタシの勘違いでなければ魔力量がゼロを下回っていた気がするのであるが……」
「あ、うん。一度発動すると中断出来ないタイプの魔術を使うと偶になるんだよね。……ついでに言うと、一日に一度は魔力を空にするようにしているから慣れているし」
これこそが、父上に教えられた魔力を増やすためのトレーニングだったりする。因みに、魔力を使いきった状態で魔術を発動すると制御の難易度が極端に上がる。
……まあ、ボクは慣れているから、発動しかけの魔術を暴走させたことはないけどね。
「一応、禁術だった気がするのであるが……」
「あ、やっぱりか。……ボクの居た辺りでは、禁術の一歩手前くらいだったからね」
一応、見つからないように気をつけた方が良いのかな?
「……大体聞きたいことは聞いたのである。あと、最後にもう一つ」
「何かな?」
「最近巷で有名な噂があるのだが、リューノから聞いているか?」
「いや、知らないよ」
「黒髪黒目の子供達が、色々と問題を起こしているらしくてな。……もしかして、お主の知り合いであるか?」




