寝ている間の出来事 *1(リューノ)
*Side:リューノ
目の前に変な歪みが出現しても動じなかったオイラ達だが、それを作り出したユオリの体が傾くのを見た途端慌てて駆け出していた。
二人を護るように展開されていた結界も同時に消えていたようで、その行動を阻むものは何も無かった。
「セ、セーフッス……」
思わず安堵の溜息が漏れた。
腕の中には、ギリギリのところで落下を免れたユオリの姿があった。予想外に軽い体重に、驚きと罪悪感が同時に芽生えた。
瞼が閉じられたことで意志の強そうな瞳が隠されると、思っていたよりも幼い顔立ちであることに気付いた。
雰囲気から少し年上くらいかと思っていたッスけど、もしかしたら同い年……、どころか年下である可能性もあるッスね。
「取りあえず、安全なところに運んだ方が良くねぇか?」
時間を忘れてユオリのことをじっと見詰めていたことに気付いて、オイラは顔に熱が集まるのを感じた。
……これでは、不審者ッスね。
気持ちを落ち着けるために大きく深呼吸をして、オイラはユオリを肩に担ぎ上げた。
船に着くと、真っ直ぐユオリの部屋に向かった。
イールは、他の人に知らせに行くと言っていたので別行動だ。
中に入ると、他の部屋に例外なくあまり物は置かれていなかった。
目を引くのは、壁に掛けられた大きな絵だけで、さして私物も無いように思われる。
……考えてみれば、そもそもユオリの私物って殆ど見た覚え無いッスね。それどころか、お互いに踏み込まないから、何かの事情があるんだろうということくらいしか知らないッス。
ベッドの上に寝かせてから、熱を測ろうと額に触れるとユオリの口元が微かに弧を描いた。
……いつになく幸せそうッス。懐かしい夢でも見ているんスかね?
その時、部屋の天井付近に魔力の揺らぎを感じ取った。
以前にも何度かユオリの部屋でそのような揺らぎがあったという報告は受けていたので、必要以上に慌てることなく身構えた。
その揺らぎは、見守るうちに円を描いてその向こうに別の空間を映し出した。
《……お、繋がったな。癒織、聞こえているか?》
その向こう側に映った人物は、何やら親しげな様子でユオリに話しかけた。
その暢気な様子に、少しの苛立ちを感じながらも無視をするわけにもいかないので口を開く。
「……お前、誰ッスか? ユオリは、魔力の使いすぎで意識が無いんスけど、それでも伝えなければならないような事ッスか?」
《本当か。だから、無理をするなとあれほど……。っと、返事をするのが先だったな、すまない。俺は、詩緑という名で、癒織の所属する組織の隊長を務めている。……君の名前を聞いても良いか?》
シロクと名乗った男が、予想外に丁寧な対応をしてきたことに驚いた。この年齢で隊長ということは、よほど実力のある人なのだろうと、気が引き締まる思いがした。
「オイラは、リューノという名前ッス。……今、ユオリが乗っている船の船員の一人ッス」
《リューノか。……もしかして、ユオリが「ユノ」と言っていた人か?》
「え? そうッスけど……」
まさか、相手が自分のことを認識しているとは思っていなかったので、口からは間抜けな声が漏れた。
《話には聞いている。……変な所で心配性で隊長が二人に増えたみたいだと言っていた》
シロクさんは、その時のことを思い出しているのか笑い混じりの声で言った。
……ユオリが、オイラのことをそんな風に話していたというのが何だか意外ッス。
そういう話はあまりしないタイプなのかと思っていたッス。実際、ユオリから知り合いらしき人の話を初めて聞いたのは、つい最近のことッスし。
オイラは、新しい発見に少しだけ嬉しい気持ちになった。
もう少し、ユノくん目線の話が続きます。




