別れの支度
「おーい、ユオリー。朝ッスよ!」
突然聴こえてきた大きな声に、ボクは微かなうめき声を漏らしながら布団の中に退避した。
恐らく、眉間には皺が寄っていることだろう。
「今日は……、お休みびよりぃ……」
「寝ぼけてないで起きて下さいッス~! 今日は、大事な日じゃないんスか? ……約束をしていたッスよね?」
……あ。
「起きるよ」
ボクは、布団を跳ね飛ばすような真似はせずゆっくりと這い出ると、それを綺麗に畳んだ。
「良かったッス」
「いやー、助かったよ。……危うく寝過ごすところだったね」
「……何となくこうなりそうな気がしていたッスから」
まさか、ユノくんに行動を読まれるとは。……不覚。
「でも、ナイスだよ、ユノくん」
「褒められたッス……!」
感動したようなユノくんの反応に、今までそんなに邪険にしていたかと首を傾げる。
因みに、会話をしながらもボクは魔力の状態の確認を行っていた。
……昨日の晩に使い果たした分も元通りに回復しているようで、概ね問題は無さそうだね。
そこまで確認すると、ボクは口を開いた。
「では、二人のところに行こうか」
東雲くんと伊波くんの近くに【転移】すると、二人はもう起きていたようでのんびりと会話をしていた。その傍には、ティーくんの姿もある。
「お早う」
「おう!」
「おはよー」
これから帰る二人は、昨日のうちに満足がいくまで話し合ったのか、穏やかな表情で挨拶を返してくれた。
「お別れは済んでいるのかい?」
「一応昨日で済ませた筈なんだけど、見送りに来てくれたみたいなんだ」
東雲くんが、ゆったりと笑いながら言った。
何だかんだで、この三人は良い友人関係を築いたんだね……。
ボクは何だかほっこりとしながらも、このまま彼らを別れさせてしまうのは惜しいような気がした。
「伊波くん、東雲くん、ティーくん。少しこっちに寄ってもらっても良いかな?」
三人は不思議そうな表情ながらも素直に従ってくれた。
「少々失礼するよ」
【魔転。彼の者等に宿りし魔力、我の元に集いて混ざり合え。……魔力合成】
そこまで唱えると、ボクは息を整えた。
……やっぱり他人の魔力に手を出すのは無駄に消耗するね。
【魔石作成】
ボクは、綺麗に三等分した魔力を魔石化させて三人の掌に落とした。
「この三つは、本来は同じものだから強い繋がりを持つんだよね。……つまり、離れていても会話くらいはできる様になっているから大事にするように」
まだ理解できていないのか呆然としている様子の三人に、ボクは笑い掛けた。
「……やっぱり、人との縁は大切なものだと思うからさ」
「……ありがとう」
東雲くんが言うと、二人も後に続いて同じように礼の言葉を口にした。
「では、そろそろ良いかな?」
ボクが三人の方を見回しながら言うと、伊波くんが慌てたように一歩踏み出した。
「俺たちも相談して決めたことがあるんだ」




