隊長、再び
「……」
ボクは、読み終えた本を無言で閉じた。
あの後ユノくんがボクを連れ回したせいで本屋に行くのに随分と時間がかかってしまったけど、漸く手に入れた本は期待通りの内容だった。
……寧ろ、『アーツ』のこと以外にも幾つか新しい情報があったし、結構得をした気分なくらいだね。
「……さてと、ボクは明日に備えて早めに休むつもりだけど、ユノくんはどうするのかな? というか、ボクは、船で寝るつもりだけど大丈夫だよね?」
「それは問題ないッス。というより、そうしてもらった方が助かるッス。……やっぱり、今は余所者に対してぴりぴりしてるッスから。……オイラは、まだ見て回りたいところがあるッスから、先に戻ってくれて良いッスよ」
「んー、了解。……早いけど、お休みユノくん」
ボクはユノくんに軽く手を振ると、再び【転移】を唱えて船に移動した。
「あー、そういえば、隊長に連絡しないとだったね」
【無転。漂う無、我と彼の者を繋げ。……魔力線】
ボクは、以前と同じ要領で魔力を隊長に繋いだ。
そういえば、最近全く連絡できていなかったからね。……怒っていないと良いのだけど。
《やあ、隊長。久しぶりだね》
《癒織か? ……どうしたんだ、最近連絡が無いから心配していたんだぞ》
怒られるかと身構えたボクをよそに、隊長は心底心配しているという表情で言った。
……何だか、少し申し訳ない気持ちになるね。
《少し立て込んでいてね》
《危険なことをしていないならそれで良いんだが。……無茶はするなよ》
《……わ、分かっているよ》
ボクは今までにあった事を頭に思い浮かべて、お世辞にも安全と言えない内容ばかりであることに気付いて微かに顔を背けながら答えた。
それに対して、疑いの表情を浮かべる隊長。
……見逃して欲しい。切実に。
《まあ良い。取り敢えず元気そうだしな》
ボクの願いが通じたのか、隊長は表情を緩めると微笑んだ。
《ところで、何か用があったんじゃないのか? ……もちろん、無意味に連絡してきてくれて構わないんだが。魔力の消費が馬鹿にならないだろう》
《まあね。……でも、訓練はまだ続けているから、魔力を消費してしまっても問題ないし。寧ろ、魔力を大量に消費出来るから助かっているくらいだよ》
《そうか。……身体にどんな悪影響があるか分からないから、あんまり良いこととは言えないと思うがな》
そういう隊長は渋い表情で、ボクのことを思って言ってくれているというのが伝わってくる。
……でも、父上から教わった事だから、可能な限りは実行し続けたいんだよね。
《んー、まあ、ほどほどに頑張るよ。……あ、で、明日隊長たちの方に二人送る予定なのだけど、大丈夫かな? 保護もお願いしたいのだけど……》
そもそもこのために連絡した筈なのに、随分遠回りをした気がするよ。
《もうそこまで頑張ってくれたのか》
隊長は、優しい表情で言った。きっと、ボクがその場に居たら頭を撫でていてくれたことだろう。
《……ただ、何だか問題が発生しているみたいなんだよね。現にボクが送ろうとしている子の片方は魅了のバッドステータスを抱えていたし》
《きな臭いな。……まあ、何にしても保護の件については了解した。そっちのことも、調べられそうなら調べてみるからちゃんと連絡をよこすように》
《了解だよ。……では、そろそろ休むね。お休み》
《ああ。ゆっくり休めよ》
手を振る隊長の映像を最後に、【魔力線】は切れた。
ボクは、そのまま布団に潜り込んで目を閉じた。




