神話の絵本 *1
短めです。
もう一話か二話くらいで、いつもの話に戻ると思います。
昔々。世界は自然で溢れていました。
海、森、溶岩、土……、何だってありました。
風が吹き抜ければ木々が軽やかな音を奏で、時間の移り変わりによって光と闇でさえも共存していたのです。
そんなある時、世界の中央に位置する大木から小さな生物が生まれました。
まだ何も知らないその子は、すくすくと育ちました。その子の明るさは大木の周りの木々をも元気付けました。
そして、その木々が花咲かせやがて実を付けて枯れていく様を見たその子は、唐突に理解してしまったのです。
――自分は、一人ぼっちだということに。
その子は植物と心を通わせることが出来ましたが、取り残された後の寂しさが余計に募るだけでした。
その子は、ついに泣き出してしまいました。
明るかったあの頃を知っている植物たちが一生懸命に慰めましたが、その子が泣き止むことはありません。
とうとう、その子は自分の涙の池に沈んでしまいました。
そんな時でした、新しい生物が生まれたのは。
その子は、風の形をしていました。風の子は何処までも行くことが出来ましたし、空気の動きに敏感でした。そのため、植物の子のことも簡単に見つけてしまいました。
「一緒に遊ぼう」と誘う風の子に、植物の子は首を振るばかり。
風の子は、「どうして出てこないのか」と尋ねました。
植物の子は、一言「別れが辛いから」と答えると、また黙り込んでしまいました。
そこまで聞くと、風の子は何かにひらめいた様子で飛び立っていきました。
風の子は世界中を旅しました。
空にだって行きましたし、星にも挨拶しました。時には、マグマの中へさえも……。仲間を探して、飛び回ったのです。
沢山の仲間を連れて涙の池の前に戻ってきた風の子は満身創痍でした。植物を通して風の子の旅をずっと見てきたその子は、慌てたように池から飛び出しました。
言葉よりも行動が、植物の子の心に響いたのでしょう。二人は、一番の親友になりました。
……自然から生まれた子どもたちが幸せに暮らし始めていた頃、世界の中心では災いの根が静かに、しかし確実に伸びていたのです。
そう、あの涙の池からです。植物の子の嘆きと悲しみで満たせれた池の水は、その周辺の植物を確実に蝕んでいきました。
そんなある日、植物の子が体調を崩しました。
その子に繋がる眷属の根が完全に飲み込まれてしまったので当然なのですが、そんなことを知らない風の子は一生懸命に看病しました。このままでは一向に良くならず、下手をすればもっと弱ってしまうだろうことを悟った風の子は再び旅に出ることにしました。




