決着
「『ミラーゲート』ッス!」
言い終わると、ユノくんの正面には銀色の楕円が出現していた。
ユノくんが躊躇することなくその円に右手を入れて出すと、彼の手には何処と無く見覚えのある鎌が握られていた。
「……これは、もしかして」
「気付いたッスか? ……実は、あのときの魔物の持ち物の模造品なんス」
ユノくんの言葉を聞いて、さっきまで頭の中にぼんやりとあったものが像を結んだ。
……あのお化け騒動の時に、ユノくんが倒した相手だね。
「因みにッスけど、これは使い手が理解している機能しか利用出来ないらしいッス」
そう言いながらも、ユノくんは鎌を振るったりと攻撃の手を弱める様子は無い。
「もちろん、こんなことも出来るッスよ!」
ユノくんは、鎌に赤い魔力を纏わせて振るった。
それと同時に、青白い炎が宙を舞う。
【闇転。忍び寄る闇、彼の者に取り憑きて蝕め。……魔力吸収】
結局、前回と同じ魔術を用いることにした。
幸いにも、相手は魔力量の多い龍。間違っても魔力が足りなくなって死ぬことはない筈だ。
「『解析』! ……今ので、必要量の半分くらい削った」
「了解」
「『増幅』、『付与:氷』」
【氷転。凍てつく氷、鋭くとがりて我が剣となれ。……氷剣】
ボクは、両手に短剣サイズの氷を持って龍に向かって飛んだ。
「……せいっ」
ボクは、龍の頭上を通るタイミングで右手の方の短剣を頭に向かって投げ下ろした。
「……ぐ?」
実は、今回投げた方の短剣には、直接ダメージを与えるような効果は無い。
……ただし、相手の思考力を低下させたり無意識下に呼びかけたり出来るから、恐ろしい魔術であることに間違いは無いけどね。
「……更に続いてっと」
そのまま龍の下に回りこむと、今度は残った方の短剣を投げつけた。
「ぐぎゃっ!!」
短剣が刺さった龍が払い落とそうと身悶えるけど、抜け落ちることは無い。
こちらの剣には、「返し」が付いているので、いくら龍の表皮が固くとも刺さってしまえばこっちのものなのだ。
ボクは、先に刺した方の短剣を利用して龍を大人しくさせてから、新しく刺さった短剣のところまで移動した。
因みに、この間もユノくんが鎌で龍に小さな傷を与え続けてくれている。
「これで、ラスト」
ボクは短剣を左手で握り込むと、全力で魔力を流した。
じわりじわりと、氷に包まれていく龍。始めは抵抗していたけど、氷の進行につれて大人しくなり、ついには意識を手放したのか全く動かなくなった。
ボクは、頭を残して龍が全て氷漬けになったのを確認すると、伊波くんを見上げた。
「あ、えっと、『検索』! ……完璧だ。あとは、意識を取り戻すのを待つだけだぜ!」
井波君のお墨付きを貰って、ボクは安堵の息を吐き出した。
「やったッス!」
「上手くいって良かったよ。……いつもと違うことをするとやっぱり無駄に疲れるよね」
……お昼寝したい。ここ、意外と日当たりが良いんだよね。
のんびりと伸びをしていたボクは、続いたユノくんの言葉を一度聞き逃した。
というか、もう話は終わったものだと思っていたよ。
「……ッスね!」
「ん?」
「だから、ご飯にしないかって言ったんス」
「え? ……ここで? というか、持って来たの?」
僕が困惑のままに尋ねると、ユノくんは得意気な表情になった。
「昨日の夜のうちに仕込んで置いたッス!」
食べ物を用意する余裕があったり、龍の目の前で食事をすると言い出したり……。キミは、馬鹿と大物、どっちなんだい?
昨日中に投稿しようと思っていたのに間に合いませんでした。




