伊波くんと東雲くん
今回は説明が多めです。
次話は、もう少しストーリーを進められると思います。
「教室から移動させられたところまでは、知ってるよな? ……そのあと、変な所に移動させられて『アーツ』っつう能力? をもらったんだ」
……勝手にこの世界の人しか使えないのかと思っていたのだけど、そういう訳ではないらしい。
まあ、そうでもないと平和ボケした子供たちなんて生き残れるはずが無いよね。何の為に呼んだのか知らないけどさ。
「何か、この指輪があれば使えるらしいんだが、発動まで時間がかかるしはっきり言って使い勝手が悪い」
伊波くんは、左手の小指についた指輪を見せながら説明をしてくれていたけど、ボクの思考は完全に別のところに行っていた。
『――まあ、指輪を使っている国もあるッスけど、オイラたちはあの国……。すみませんッス。これ以上は知らなくて良いことッスね』
『アーツ』を使ったユノくんにイヤリングについて尋ねた時に返ってきた言葉。
……もしかしなくても、ユノくんが言っていた国というのは、ボクたちを召喚しようとした国なのではないかな。世の中って、狭いんだね。
「因みに、キミが使えるのは、どういう能力なの?」
ボクが尋ねると、伊波くんはあからさまに渋面を作った。
「……『索敵』、『検索』、『付与』、『譲与』とか、サポート系ばっか。単独で役に立つやつなんて何一つない」
ボクは別に悪いとは思わないけど、本人が気にしているようだからこれ以上は聞かないでおこうかな。
「……で、『アーツ』が決まったらもう一回移動させられて、そのあとすぐに国の姫……? とにかく、お偉いさんがめぼしいやつら連れて行っちまった」
「どういうことさ?」
「なんか、こう言っちゃなんだけど見た目が良いやつら全員。……空閑、無敵、月見里とか。あと、辰巳も。……青柳先生も狙われてたみたいだけど、残ってくれた」
今名前が挙がったのは、皆ボクと同じクラスの人だけど、察するに他にも沢山居るんだろうね。
因みに、月見里くんは所謂記憶に残らない美形という感じ。ついでに言うと、存在感も少し不足気味。
お姫さまに気付いてもらえて、喜んでいたのではないかと思う。
「……あれ? 久遠くんは?」
一番気になる人の名前が出ていなかったことに気付いて、ボクは尋ねた。
「そーいや、見た覚えねーな。……いや、あの場には居たはずだ。帰ったやつとかを引いて、先生が誰か欠けてねぇか点呼とってたから」
ボクの不安な気持ちが伝ったのか、伊波くんは慌てたように付け加えた。
「んで、残ったやつらは『アーツ』やらの説明をされて講習みたいなのをやったんだが、なんてったって選ばれなかったやつらばっかだから女子のモチベーションの下がり方が半端なかった。……あれは、怖かった」
そのときの状況が目に浮かぶようで、ボクは小さく苦笑した。
「その講習会が、二週間くらい前に漸く終わったんだ。……それで、旅に出る許可が出た頃になってあいつ――辰巳が帰ってきたんだ。やりたいことが出来たから力を貸せって。元々、『アーツ』は二人で相談してバランス見て決めたもんだったから、俺は二つ返事で了承した」
「力を貸すというのは、具体的には?」
「……探して欲しいものがあるって言われて、最終的に見つけたのがこの島だった。あいつが何でこの島を探していたのか、俺は知らねぇがな……」
「それで、この島で生活して数日経った今日何があったのか知らないけど、東雲くんが龍化して島を襲ったということだね」
ボクは、伊波くんの話の続きを予想で口にした。
それに対して、頷きで返す伊波くん。
「……それで? キミはどうしたいのかな?」
「どうしたいっつうのは?」
「ボクとしては、キミにはさっさと元の世界に戻って欲しいところなのだけど、どうせ東雲くんの問題が解決するまでは帰らないでしょう?」
ボクの質問に、伊波くんは尚も首を傾げるばかり。
「帰るって……、帰れんのか!?」
「……あ、御免、言っていなかったね。ボクが、責任を持って安全に元の世界に帰すことを保障するよ」
「……」
ボクの言葉に、伊波くんは呆然とした表情で見返してきた。
……何だか、失礼な反応だね。




