捜索願い……?
移動中に書けたので、投稿します。
まだテストは終わっていないので、次話は金曜日か土曜日になると思います。
「……おお、イール。無事だったのか」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘のように表情を緩めると、その人はティーさんに話し掛けた。
「おう、なんとかな。……ツカサ、帰ってきてっか?」
ティーさんが尋ねると、その人は露骨に嫌そうな表情を浮かべた。
「帰って来た様子はないが、どっちにしろあいつを置いてやれるような心の広いやつは居ないと思うぜ」
それを聞いた瞬間、ティーさんはボクの方をちらりと見た。
……どうやら、今自分が行ったところでどうにもならないということは理解しているみたいだね。
というか、それ以前にこの会話しているおじさんが許してくれないような気もするけど。
ボクは一瞬だけ考えてから、ティーさんの視線に頷きで返した。
ボクの反応を正しく理解したらしいティーさんは、微かに安堵の表情を浮かべるとおじさんの方に向き直って会話を続けた。
……何だかティーさんにも信頼されてしまったみたいだし、さっさと捜しに行くかな。のんびりしていたら、ユノくんとかに見つかって面倒なことになる可能性もあるからね。
ボクはやるべきことを頭の中でまとめると、魔力の反応を頼りに移動を開始した。
龍が逃げた方向は分かっているから、どちらか考えるまでもなく向かうことが出来る。
浮いているから、基本的に疲れ知らずで快適だね。
……まあ、足の筋力が落ちきる前に帰りたいところだけど。一応、魔力を使って衰え対策はしているけど、長くなったらどうなるか分からないし。
……ここは、早いところ帰還第一号を確保しないとね。
「……この辺り、みたいなんだけど」
ボクは、魔力の反応と自分の視界に映る情報との違いに首を傾げた。
目の前に広がるのは、ただ海だけ。
「ふむ、何処に居るのかな?」
もう一度位置を照らし合わせて確認しようとしたボクは、嫌な可能性に気付いてしまった。
「……海の中に居るとか、ないよね?」
否定しようにも、確かに魔力の反応は正面方向にあるわけで。
その時、数メートル先の海から、気泡が上がるのが見えた。
「……」
ボクは、諦めてその位置まで移動することにした。
海は、陸からの距離の割には深いみたいで、底まで確認することが出来ない。
まあ、恐らくはここだよね。……生きていると良いのだけど。
異世界で溺死とか、笑えないからね。
【水転。流れる水、彼の場所を護れ。……水壁】
唱えると、有名な海を割るという現象が、小規模ではあるけど発生した。
まあ、割るというよりは、水槽の水と空気が逆転した状況といった方が近いけど。
姿を現した海底には、予想通りと言えないこともない光景が広がっていた。
「捕食中……?」
そこには、巨大な魚の口に上半身がすっぽりと包まれている人間(推定)の姿があった。
……あ、助けないと。
ボクは数秒間固まった後、慌てて底に降りるとその人の足を引っ張った。
「助かった……」
「……間に合って良かったけど、どうしてあんなことになっていたんだい?」
「人が少ない方向に走ってたら、落ちちまったんだ」
……何というか、残念な人だね。
どうすれば、海に落ちるだけで魚に食べられるのかな? まあ、そこまで興味も無いから態々聞かないけどね。
「……そうそう、キミ、伊波くんだよね?」
「ああ、そうだけど。……そういうお前は、星砂だったか?」
「そうだよ。……ということは、やっぱりあの龍は、東雲くんか」
伊波くんと東雲くんは、ほぼ常に一緒に行動していたからね。
確か、最後に見たときも、二人で何かを話していた筈。
「そうだと思うんだが……」
「?」
「俺、最近のあいつのことがよく分かんねぇんだ」
「……取り敢えず、ボクも現状では何も推測しようが無いから、あれから起こったことを教えてくれないかな?」
先ずは、情報収集から始めることにした。




