第一島民
ボクは、島の襲撃の話を聞いてすぐに、念のためと魔力を展開してみた。
その時に、覚えのある気配を二つ見つけたボクは驚きに飛び上がった。
慌てたボクは、きーさんに「先に降りている」と宣言して気配に向かい、一時的に龍を追い払って今に至る。
「……ええと、改めて。ボクは癒織、宜しくね」
「ああ、オレはイールだ。……で、お前は、ツカサとタツミの知り合いっつうことで良いんだな? 「くらすめいと」だったか?」
「うん、そうだよ。……宜しく、ティーさん」
因みに、今回は、イール→ルイ→涙→ティアー→ティー、という流れだったりする。
苗字がある可能性もあるけど、名乗らなかったのを聞き返すのも面倒だから、この方法を取らせてもらった。
「ティー……?」
お馴染みになってきた反応に頷きで返しながら、ボクはさっき見た光景を思い出していた。
「……ところで、キミは魔術を使えるのかい? ボクの見間違いでなければ、使っていたと思うのだけど」
ボクが尋ねると、ティーさんは、少し困ったような表情で頬を掻いた。
「……まあな。オレが使えるのは、星の魔術だけだがな。島のやつらにも言ってねぇから、勝手にばらしたりすんなよ」
……つまり、あの龍には天体系統の魔術は効き難いということだね。
「それは、心配無いよ。ボクは、約束は守る主義だから。……というか、魔術がこの辺りに普及していないのは分かっているしね。もしかして、何か理由が有るのかい?」
「……お前、魔術を使ってんのに知らなかったのかよ」
何処と無く呆れた様な表情のティーさんに、返す言葉も無いボクは無言で肯定の意を示した。
「この辺りって連合国家だろ? でな、一番のお偉いさんが、魔術の存在を認めてくれねぇんだ」
「どうしてなのか、聞いても大丈夫かな?」
ボクは、新しく得た情報を頭の中で整理しながら尋ねた。
「理由っつうほど立派なもんじゃないかもしんねぇぞ?」
「というと?」
「お偉いさんの家系に魔術の才能があるやつが居ないってのが理由だって、専らの噂だな」
「……確かに、それが本当なら、物凄くくだらない理由だね」
「てなわけで、色んな場所に魔術が使えるやつが隠れ住んでるらしい。人伝に聞いたやつだから確証はねぇが、魔術師の組織みたいなのも存在するとか」
成程。……いずれ、探しに行ってみるのも良いかもしれないね。
「……良し。大体話も分かったし、取り敢えず人が居る方に行かないかい? ……もう一人からも、話を聞きたいしね」
「ああ、そうだな。お前の話を信じるなら、今は安全ってことだしな」
言うと、ティーさんは、松葉杖らしきものをついて立ち上がった。
「そういえば、キミは足を怪我しているのかい?」
「……前にヘマをやっちまってな。お陰で、船を降りることにもなった」
「ふむ、魔術で運んだ方が楽そうだね。……船の近くで良いかな?」
「……あ、ああ。構わねぇが、わざわざそんなことしなくても」
「遠慮は無用だよ」
ボクは、言いながら魔力を展開して船の人たちの位置を確認した。
そこから、少しずれた所に着くように設定すると、ボクは詠唱に入った。
【風転。吹き抜ける風、我らを包みて運べ。……転移】
薄黄緑色の魔力がボクたちを包んだかと思うと、もう視界は切り替わっていた。
「……だから、余所者を島に入れるのは反対だったんだ!」
……あまり、良いタイミングではなかったかもしれないね。
流れを察したボクは、一人気付かれる前に物陰に移動した。




