きーさんと提案
「……そうだ。別に、誕生日のお祝いという訳ではないけど、何か質問に答えようか? ……聞きたいこととか、何か無いかな?」
「ふむ」
「正直な所、ボクは、必要のない事はやりたくないという結構な面倒くさがりだからね。……以降、またチャンスがあるかは分からないよ?」
今回に限り、本当に言っては不味いこと以外は話してしまっても良いかな、という気持ちになっている。
ボクには、この世界の常識とかが致命的に足りないからね。
これで自然に情報を得られたら、という考えが有る事も否めないけど。ここで過ごした今までの期間で、多少疑われるような質問をしても大丈夫だと思えるくらいの信頼は出来ているしね。
「……なら、幾つか質問させてもらうのである」
「どうぞ」
きーさんは、ボクの顔をじっと見詰めた。
「先ほど、お主が使っていた力は魔法であるか? ……複数の属性を使いこなしているように見えたのであるが、お主は王族なのであるか?」
いきなり「当り」を引いたなと思いながら、ボクは表面上では真顔を貫き通した。
「いや、魔法ではないよ。……ところで、複数の属性を使えたら、王族と決まっているのかい?」
「そういう訳ではないが。そういう才能の有る人は、大抵王族に吸収されてしまうものであるからな」
渋面を作って答えるきーさんから、彼が王族もそれに与する人たちにも良い感情を抱いていないと言うことは伝わってきた。
……うーん、久遠くんたちが王族に保護されていたら面倒なことになりそうだね。
才能を見せたら、簡単に手放してくれるとは思えないしね。上手く立ち回ってくれていると良いのだけど。
「……お主の住んでいた地域では、ワタシたちの知らない知識が出回っているようであるが、《天使の祝福》などには、予防法があったりするのであるか?」
懐かしの、魔力の循環不良だね。
「ええとね、キミたちが海上で生活している限り可能性を零には出来ないかな。ただ、同質の魔力に晒され続けた事によって起こったみたいだから、箸休めとでも言えば良いのかな? 他の魔力に触れれば発病率は下げられると思うよ」
「ふむ。……具体的に、何かお勧めの方法とかを挙げてもらえると助かるのである。お主の言っていることを完全に理解出来たわけではないから、間違った認識によって患者を増やす事になってしまっては大変であるからな」
きーさんがこういう謙虚な態度を取り続ける限りは、この船の医療関係は安泰だね。
解っていないのに知ったかぶりをする人が一番迷惑をかけるからね。……解らない事を解らないと言える人には、好感を抱くし、手助けをしたいと思うよね。
「そうだね。……魔力を使った模擬戦とかをしてみたらどうかな? やっぱり、船だからさ、備品を壊す可能性のあることは出来なかったと思うんだよね。ボクが居る間は、結界を張る位なら請け負えるよ」
「確かに、船であるが故の制約で体を動かし足りないという話は聞いているのである。同時に、ストレス解消にもなりそうで、なかなか魅力的な案である」
「良し、なら決まりだね」
「しかし、お主の負担が……」
「別に、助けてもらった分の恩が有るから充分なのだけど」
「それは、船医としての責務であって、これとは別の話である」
「……ううむ、律儀だね」
ボクは気にしないのだけど、ボク自身も変わった拘りみたいなものが有るから気持ちは分かるんだよね。
やっぱり、何か見返りを要求するべきかな。きーさんの負担にならないことで、ボクにも利益があることといえば……。
「そうだ、ボクに薬の種類と使い方を教えてくれないかな? ……やっぱり、魔術だけを頼りるのには不安が有るからね」
もし、上手く理解できたら、【魔力合成】をして持ち歩こうかなと思いながらボクは尋ねた。
「……別に構わないが、そんなことで御礼になるのであるか?」
きーさんは、少し疑いの目で見てきた。
「充分だよ。……寧ろ、ボクに旨みが有り過ぎるくらいだしね」




