子供たちと疑問
「……おーい、ユオリ、聞いてんのか?」
ボクは、フワくんの声で現実に戻ってきた。
「あ、御免よ。……少し、ぼーっとしていたみたいだよ」
「まったく、しっかりしてくれよな!」
「……ところで、フワくんとユルちゃんは分かったけど、キミの名前は?」
ボクは名前を呼びながら二人の顔を順に見て、残りの一人に視線を向けて尋ねた。
突然あだ名をつけられたユルちゃんは当然といえば当然だけど、フワくんも何処と無く呆れたような表情で見てくる。
……心外だよ、全く。
だけど、ボクに名前を聞かれた少年は、妙にきらきらした眼差しでボクを見詰めてくる。
「……オレはっ!」
――ガッシャーン!
「……敵襲!?」
ボクは慌てて立ち上がって、音の出所を探した。
「ご、ごめんなさいぃ……」
「あ、ユルちゃんか。……良いよ良いよ、気にしないで」
そこには、先程壁に掛けたばかりの絵を床に落としてしまい、おろおろとしているユルちゃんの姿があった。
……というか、どんな状態になっても、ボクが少し魔力を流してやれば元通りだから気にする必要なんて無いしね。
「おおっ! もとに戻った!」
「すっげー! どうやったわけ!?」
盛り上がる子供たちを見て少し楽しい気持ちになったボクは、良いことを思い付いた。
「……キミたちも、作ってみるかい?」
「え? ……良いの?」
「やりたい!」
「了解したよ。……でも、その前にキミの名前を、ね?」
「……良い人だ!」
ボクが名前不明の子に言うと、少年はやっぱり妙な反応を返してきた。
「……どうかしたのかい?」
「いやー、オレが名乗ろうとすると、結構良い確率で邪魔が入るんだよな。……しかも、そのせいで、大抵のやつが名前を聞いていたことを忘れちゃうしさ」
「は、はあ。……何というか、不憫だね」
だけどさ、名乗れない原因の一部は、キミにあると思うんだよね。
……説明とかしないで、さっさと名乗ってはいけないのかい?
ボクが、半分憐れみ、残り疑念という気持ちで見ていると、その少年は唐突に顔を上げた。
「じゃなくて、オレの名前は……! だ、大丈夫だよな? カシートっていうんだ。……二回目で名乗れたのは初めてだ!」
「あ、うん、良かったね。……よろしく、スイくん」
名乗るだけで不安になって辺りを見回す姿に哀しみを感じながら、
ボクは挨拶をした。
何だか、この子には優しくしてあげなくてはいけないような気がしたよ。……完全に、憐れみだけど。どんな目に遭ったこんな風になってしまうのかな……。
因みに、今回のあだ名は、カシート→シート→席→椅子→スイ。という流れだったりする。
……まあ、分かる人は居ないだろうね。
「……おお! あだ名を付けられたのも初めてだぜ!!」
「……」
「で、ユオリ、何をすればいいんだ?」
思わず閉口してしまったボクに助け舟を出してくれたのは、意外にもフワくんだった。
「……ええとね、先ずは好きな魔石を選んでもらおうかな」
ボクは、机に出したままだった魔石を指して言った。
勿論、仮面さんから手に入れた分はポケットにしまってあるから、ここにあるのは殆どがボクの魔力から作られたものだね。
「……良いのか? 魔石って、結構高いって聞いたぜ?」
「子供が、お金のことなんか気にしなくて良いよ。……原価、只だし」
「……えっと、それじゃあ」
ボクは子供たちが魔石を選んだのを確認してから、咳払いをした。
……後は、イメージ力だし子供の得意分野だよね。
「作りたい物を頭の中に思い描きながら魔力を流す。以上」
「おい、いきなり雑だな!」
突っ込まれたけど、それ以上説明の仕様が無いから仕方がない。
「あ、もしかして、魔力を使えなかったりする?」
「それくらい出来るから! ……というか、出来ないやつは船から降りてる」
答えながら、子供たちはそれぞれ魔力を流していった。
「……ほぅ」
出来た物は不恰好ながらも、魔力の使い方に関しては文句無しの実力だ。
……一体、この船は何なのだろうか?




