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魔術師の異世界召喚  作者: かっぱまき
海上にて①
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サプライズ

 パーン……!


「敵襲!?」

「……っ」


 突然響いた破裂音に、ボクは思わず身構えた。

 だけど、隊長たちは、ボクの様子を見て顔を見合わせると、何故だか笑い始めた。


「え、え? 何さ?」

「……癒織、これはクラッカーといってだな。お祝いの時に鳴らしたりするものなんだ」

「……どういうこと?」


 ボクが首を傾げると、隊長たちは新たなクラッカーらしき物体を手に持ち直した。


「「「お誕生日おめでとう、癒織!!」」」


 反応するより早く、ボクの視界はクラッカーの中から飛び出してきた色とりどりの紙で埋め尽くされた。


「……ふぇ? 一体何がどういうことなの?」

「だから、今日がお前の誕生日なんだよ」

「つまり……、ボクは父上の誕生日をお祝いしようとしていたのに、お祝いされる側になっているということ?」

「そういうことだ。……だから、五日待った方が良いと言ったんだ」


 ボクは驚きながら、手に持っているプレゼントをどうすれば良いのかと、手持ち無沙汰に転がした。


 ……これでは、さっきまでの状況の二の舞だ。


「あー、ええと、父上……」

「なんだい?」

「それで、渡したい物があるんだけど……」


 何とも煮え切らないボクの言葉に、父上は怒るでもなく目線を合わせてゆっくりと待ってくれた。

 そんな父上に励まされる様に、ボクはプレゼントを持った手を父上の目の前に突き出した。


「……あんまり、上手じゃないけどさ」

「有り難う。儂は、こんなに嬉しい誕生日は初めてだよ。……開けても良いか」

「勿論良いけど、開けてがっかりとかしないでよ?」

「そんな事をするわけが無いだろう」


 ボクは、父上の手がリボンを解いていく様子を、固唾を呑んで見守った。


 ……判決を待つ罪人は、こういう気持ちなんだろうか?


 ボクが変な所に意識を持っていっている間に、父上とぬいぐるみはファーストコンタクトを済ませた。

 夜空のような色のつぶらな瞳、柔らかい若草色の体、一番大切なお皿、そして、一際存在感を放つ純白の翼。


 翼は最後の最後、箱詰めする直前に思いついたんだ。

 そういえば、父上の持ち物には翼を模した物が多かったな、と。


 暫しの間、沈黙が辺りを支配した。

 ぬいぐるみを隅までじぃーっと見詰めた父上は、納得したように一つ頷くと口を開いた。


「お前の名は、一ノ介だ」


 父上の言葉を聞いて、ボクは雷にでも打たれたかのような衝撃を受けた。


 それだ! ボクが求めていた名前は!!


「さっすが、父上ー!」

「ふふふ」

「……おい、二人だけの世界から、帰ってこようか?」


 ボクたちが二人で笑みを浮かべていると、隊長からストップがかかった。


「……そうだな。折角の料理が冷めてしまう」


 そこで漸く、ボクはテーブルを見ることが出来た。

 テーブルの上には、いつも置いてある父上の書類は全く見当たらず、代わりに美味しそうな料理がずらりと並んでいた。


「さあ、召し上がれ」

「頂きまーす!」


 隊長の言葉を聞いて、ボクは両の手を合わせて挨拶をすると箸を持った。


「これは、俺が作ったものなんだ。遠慮しないで、沢山食べると良い」

「……え? お店の料理じゃないの?! この、万能隊長め!」


 因みに、「万能隊長」というのは、組織の男性陣が言っていたやつね。

隊長、二つ名みたいなものが多いみたいなんだ。お陰で、本名はあまり呼ばれないらしい。……隊長の名前をフルで言える人は、組織に何人くらい居るんだろうね。


 ボクは、隊長の名前に思いを馳せて、少しだけ切なくなりながら、料理を口に運んだ。


「……うわっ、美味しいし。お店で食べるものより美味しいというのは、一体全体どういうことなのか」


ボクは料理を堪能しながら、これでまた隊長の人気が上がるんだろうな、なんて、のんびりと考えていた。

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