サプライズ
パーン……!
「敵襲!?」
「……っ」
突然響いた破裂音に、ボクは思わず身構えた。
だけど、隊長たちは、ボクの様子を見て顔を見合わせると、何故だか笑い始めた。
「え、え? 何さ?」
「……癒織、これはクラッカーといってだな。お祝いの時に鳴らしたりするものなんだ」
「……どういうこと?」
ボクが首を傾げると、隊長たちは新たなクラッカーらしき物体を手に持ち直した。
「「「お誕生日おめでとう、癒織!!」」」
反応するより早く、ボクの視界はクラッカーの中から飛び出してきた色とりどりの紙で埋め尽くされた。
「……ふぇ? 一体何がどういうことなの?」
「だから、今日がお前の誕生日なんだよ」
「つまり……、ボクは父上の誕生日をお祝いしようとしていたのに、お祝いされる側になっているということ?」
「そういうことだ。……だから、五日待った方が良いと言ったんだ」
ボクは驚きながら、手に持っているプレゼントをどうすれば良いのかと、手持ち無沙汰に転がした。
……これでは、さっきまでの状況の二の舞だ。
「あー、ええと、父上……」
「なんだい?」
「それで、渡したい物があるんだけど……」
何とも煮え切らないボクの言葉に、父上は怒るでもなく目線を合わせてゆっくりと待ってくれた。
そんな父上に励まされる様に、ボクはプレゼントを持った手を父上の目の前に突き出した。
「……あんまり、上手じゃないけどさ」
「有り難う。儂は、こんなに嬉しい誕生日は初めてだよ。……開けても良いか」
「勿論良いけど、開けてがっかりとかしないでよ?」
「そんな事をするわけが無いだろう」
ボクは、父上の手がリボンを解いていく様子を、固唾を呑んで見守った。
……判決を待つ罪人は、こういう気持ちなんだろうか?
ボクが変な所に意識を持っていっている間に、父上とぬいぐるみはファーストコンタクトを済ませた。
夜空のような色のつぶらな瞳、柔らかい若草色の体、一番大切なお皿、そして、一際存在感を放つ純白の翼。
翼は最後の最後、箱詰めする直前に思いついたんだ。
そういえば、父上の持ち物には翼を模した物が多かったな、と。
暫しの間、沈黙が辺りを支配した。
ぬいぐるみを隅までじぃーっと見詰めた父上は、納得したように一つ頷くと口を開いた。
「お前の名は、一ノ介だ」
父上の言葉を聞いて、ボクは雷にでも打たれたかのような衝撃を受けた。
それだ! ボクが求めていた名前は!!
「さっすが、父上ー!」
「ふふふ」
「……おい、二人だけの世界から、帰ってこようか?」
ボクたちが二人で笑みを浮かべていると、隊長からストップがかかった。
「……そうだな。折角の料理が冷めてしまう」
そこで漸く、ボクはテーブルを見ることが出来た。
テーブルの上には、いつも置いてある父上の書類は全く見当たらず、代わりに美味しそうな料理がずらりと並んでいた。
「さあ、召し上がれ」
「頂きまーす!」
隊長の言葉を聞いて、ボクは両の手を合わせて挨拶をすると箸を持った。
「これは、俺が作ったものなんだ。遠慮しないで、沢山食べると良い」
「……え? お店の料理じゃないの?! この、万能隊長め!」
因みに、「万能隊長」というのは、組織の男性陣が言っていたやつね。
隊長、二つ名みたいなものが多いみたいなんだ。お陰で、本名はあまり呼ばれないらしい。……隊長の名前をフルで言える人は、組織に何人くらい居るんだろうね。
ボクは、隊長の名前に思いを馳せて、少しだけ切なくなりながら、料理を口に運んだ。
「……うわっ、美味しいし。お店で食べるものより美味しいというのは、一体全体どういうことなのか」
ボクは料理を堪能しながら、これでまた隊長の人気が上がるんだろうな、なんて、のんびりと考えていた。




