父上の誕生日 *5
昨日は、当然毎日更新を止めてすみませんでした。
……夜の九時に寝落ちして、気付いたら空が白んでいました。
時計を見ると、朝の五時くらい……。自分が一番驚きました。はい。
……原因は、恐らく昨日行った三十分間走ですね。
次の日もその次の日も、ボクは作業部屋に籠ってプレゼントの作成に費やした。少しずつ形になっていくぬいぐるみに、ボクはわくわくとした気持ちを抑えられなかった。
二人とも、喜んでくれるかな? ……なんてさ。
今回の作戦を開始してから二週間ほど経った頃、プレゼントは漸く何をモチーフにしたのかが分かるレベルの出来になっていた。
時間をかけて縫っているから、縫い目が不揃いなところこそ在るものの、直ぐにほつれるという心配はなさそうだ。
「……河童の方の名前、どうしよう?」
猫村さんの様に河童にも名前を考えてみたのだけど、一向にしっくりくる名前を思い付かない。
「うーん、やっぱり父上に付けてもらうべきか……」
呟きながら、ボクは手に意識を集中して作業を続けた。
「……ふぅ、これでラスト。完成!!」
それから更に二週間後、ボクはぬいぐるみを作り終えた。
……初めてにしては、かかった時間なども含めて上出来だと思う。
その代わりと言ってはなんだけど、ボクの指は刺し傷だらけだけど。
その様子は、絆創膏の無い指が存在しない程で、父上には何度も心配されてしまった。
「……っと、報告しないと」
ボクは直ぐにでも駆け出したい気持ちを抑えて、完成したことを隊長に教えてあげることにした。
ここ一週間程は、猫村さんを隠し通すために、隊長が来ても居留守や門前払いを最大限に活用して部屋に入れなかったから、怒っていないか少し心配だ。
だけど、ボクの不安をよそに、久し振りに連絡をした隊長は嬉しそうな声音で、「直ぐに行く」とだけ言って連絡を切った。
ばたばたと慌ただしい足音が向こうから聞こえてきて、ボクの部屋の真ん前でぴたりと止まるまでは、それから一分もかからなかった。
「癒織、久しぶりだな。最近は、部屋に居なかったようだが……」
「……あ、うん。まあね」
ボクは居留守がばれていなかったことに驚きながら、机の下で急いで猫村さんにリボンを結んでいた。
……だって、予想より隊長が来るのが早かったものだからさ。
「……隊長、目を閉じて」
「? ……別に構わないが、何を企んでいるんだ?」
隊長は、怪訝そうな表情ではあったけど、言った通りに目を閉じてくれた。
ボクはその様子を確認すると、猫村さんを机の上に出してリボンの傾きを直した。
そして、猫村さんを隊長の目の前に突きつけた状態で声をかけた。
「隊長ー、もう、目を開いて良いよー!」
猫村さんを見た隊長は、その瞳を更に大きく見開いた。
「これは? ……って、怪我してるじゃないか!」
「……あはは。まあ、ボクにかかればこんな物だよね」
言ってはなんだけど、目に見えていた結果だし……。
「はい、これは隊長の分。誕生日、何時か知らないけど……」
「……プレゼントを縫ったせいで怪我をしたのか。俺のせいだな……」
何故だか責任を感じてしまったらしく、隊長は少し沈んだ声音になった。
隊長を困らせたかった訳ではないから、ボクは明るい表情を作って口を開いた。
「ええとね、この子は猫村さんっていうんだ。……黄緑色だけど」
「……ありがとな」
隊長は優しい表情になると、ボクの頭を撫でてくれた。
最近は隊長にあっていなかったせいで頭を撫でてもらう機会も無かったから、ボクは久しぶりの状況に頬を緩めた。
「ところで、これがあるという事は庵さんの分も完成したということか?」
「流石、隊長察しが良い! ……これから、渡しに行こうと思っているんだ」
ボクがそう言うと、隊長は天井の方を見上げて何やら指折り数え始めた。
何をしているのかと眺めていると、隊長は右手の指を全部折ったところでボクに視線を向けた。
「……後、五日待たないか? その方が、絶対に良いと思うぞ」
そう言った隊長は、何か悪戯を思い付いた子供のような表情をしていた。
次話で、「父上の誕生日」は終わる予定です。




