父上の誕生日 *1
「ねえ、父上の誕生日はいつなの?」
「儂か? さぁて、何時だったか……。ところで、突然どうしたのだ?」
「んー、お友達から聞いたんだ。お誕生日は、周りの人皆でお祝いするんだって」
ボクは、一人の少女を頭の中に思い浮かべながら答えた。
「それは、一人称が「ボク」である子か? もしそうなら、会ってお礼を言いたいものだが」
「だから、その子は偶然会ったただの子供だし、何処に住んでいるかも知らないよ」
「しかしなぁ……」
父上は、何故かボクの卵焼きを奪った少年をいたく気に入っているらしく、ことあるごとに聞いてくるんだよね。
「で、その話じゃなくてさ。……父上の周りにはボクしか居ないから、ボクが盛大にお祝いしてあげるんだから」
後になって思えば無神経なボクの言葉に、父上は何かに耐えるような複雑な表情で笑った。
「そうだな……」
「……? でね、父上の欲しいものを聞こうと思ったんだけど、何かないの?」
「お前がくれる物なら何でも嬉しいさ。……とは言うものの、別に無理して用意してくれなくても良いのだよ? 儂は、その気持ちだけで充分だ」
幸せそうな表情で語る父上を見て、ボクは何故だか対抗意識の様な感情を抱いた。
……絶対に父上を驚かせてやる、と思ったんだ。
「気合いだけは有るものの、どうすれば良いのか……」
ボクは自分の部屋に戻って、プレゼントを何にするか思い付かなくて唸っていた。
「やっぱり、あの子に……。いや、自分で考えないと」
ボクは、さっきから何度か浮かんでいた考えを打ち消した。
だって、「誕生日」の話も聞いたのに、プレゼントの内容についてまで頼りでもしたら、情けないと思わない?
「うー、やっぱり駄目だー。……隊長に聞いてみようか」
これならセーフだよね、と自分で自分に無意味な言い訳をしながら、ボクは組織の建物に向かった。
最近、父上に紹介してもらえて漸く組織の一員になれたばかりだから、知り合いは少ないんだ。
……でも、隊長たちは優しいから、遊びに行っても退屈する心配は無いけど。
「隊長ー、居るー?」
声を張り上げると、向こう側からばたばたと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「良く来たな。……今日は何をして遊ぼうか?」
「隊長ー。毎回、遊びに来ている訳ではないし。今日は、相談があって来たんだ」
ボクは、ここに来るに至った経緯を大まかに説明した。
絶対に、凄いプレゼントをあげたいということも。
「……誕生日のプレゼントか。そういえば、庵さんの誕生日っていつなんだ?」
「んー、分からないって」
「……誤魔化されたんじゃないのか?」
「でも、それなら、いつでも良いってことでしょう? ……だったら、たっぷり準備が出来るよ」
ボクは、満面の笑みで意気込みを語った。
因みに、庵というのは父上の名前。
母上は、ユーリアっていうんだって。
まあ、ボクが産まれる時に亡くなったと聞いたから、会ったこともなければ、顔すら分からないけど。
名前から察するに、外人だったのかな? ……父上は、母上についてあまり話してくれないから知らないんだ。何故か、写真も無いし。
「なるほどな。そういう考え方もあるか……」
隊長は、感心したような表情でボクの頭を撫でてくれた。
ボクは、人に頭を撫でてもらうのが好き。何だか、安心感があってさ。
……父上は、滅多に撫でてくれないけど。
やっぱり、ボクが悪いのかな。母上のことも……。
「よしっ! ……どんな物が良いか、一緒に考えようか」
隊長の明るい声が、暗い思考を打ち消してくれた。
隊長は、人の感情に敏感らしく、ボクが落ち込む暇を与えてくれない。……そういうのが、隊長の格好良いところだと思うし、尊敬している。
まあ、調子にのられても困るから、言わないけど。
癒織さんの喋り方が少し違うのは仕様です。




