魔石加工
「さて、何を材料に作ろうかな?」
ボクは、自分の持ち物を一度改めてみることにした。
久遠くんにもあげた物と同様の効果のあるピン留め、魔力無効化空間でも使える高性能な魔道具、魔石、以上。
偏り方が異常だね。大抵、魔術か魔道具で解決できてしまうものだから、他の物を持ち歩く必要がないんだよね。
因みに、ピン留めは服の袖やポケットやらに大量につけてあって、いざという時には飛び道具としても活用出来る。無駄に様々な属性の耐性がついているから、錆もしなければ熔けもしない。
魔道具の方は、組織に居る手先が器用な子が作った一点物ばかり。本人が認めた人にしか渡さないので、希少価値がある。以前、物凄い値段を持ちかけられたけど、断ったという話を聞いたことがある。
まあ、耐・魔力無効のようなものは、更にそれを防ぐものが作られていくからいたちごっこなんだけどね。
「やっぱり、魔石かな。……というか、他に使える物が無いしね」
ボクは、以前作った魔石を並べてみた。
どれも似たような、何色とも言えない色ものばかり。
……これは、作成者の魔力属性に対応したものになるから、ボクが作ると全部同じような不思議な色になるんだよね。
「あ、そういえば……」
ボクは、ポケットの中に手を探ってみた。
予想通り手は、ひんやりとしていてつるりとした触り心地の物に触れた。
そう、これは水色生物たちと会った時に、仮面さんのお腹から出てきた物なんだよね。
色は、ほぼ白に見える水色。実は、魔石も色の薄い物の方が、純度が高いんだよね。ざっと見た限りだけど、ボクが貰ったものが一番良い物だったと思うよ。
「でも、これを使ってしまうのは勿体無いから、後で別の物に加工しよう」
ボクは、並べた魔石から幾つか選んで手に乗せた。
それから、魔力を流していく。
魔石というのは、元々魔力から作られている物だから、魔力を流すことで任意の形に変形させることが出来る。
今までも幾つか装飾品を作ったことがあるけど、上手い人には敵わないんだよね。
ボクは、この魔石が変化していく過程を見るのが好きだった。
父上がこういうのを作るのが得意だったから、ボクは幼い頃から何度も見る機会があった。でも、何度見ても飽きることは無くて、ボクは常に真剣に見ていた。
……今思えば、これがボクが魔術を習い始めたきっかけだったような気もするよ。
っと、昔を懐かしんでいる場合ではなかったね。
慣れ親しんだ行為というのは無意識状態でも出来るもので、ボクが意識を逸らしている間に額は七割方完成していた。
魔力の流し方で色に差を付けたから、程好く水玉模様が描かれていてイメージ通りに出来たと思う。
「あとは、折角魔石を使っているのだから、何か効果をつけたいよね……」
ボクは、少し考えてから口を開いた。
【光転。聖なる光、彼の物に宿りてこの船に幸運を運べ。……幸運招集】
因みに、この魔術は目に見えて効果があるようなものでは無い代わりに、効力が長い。どちらかと言うと御守りの様なタイプで、運気を上げる後押しをしてくれるものだ。
……そういえば、額を含めてこの絵の機能が大変なことになっているね。まあ、気にしないけど。
今度こそ壁に飾られた絵を見て、ボクは満足気に頷いた。
「……おや?」
その時、扉の向こう側から子供特有の軽い足音が響いてきた。
その足音は、扉の前で止まった。
「おまえら、入らないのか?」
「……でも、じゃまになるかもだよ」
「オレは、入るぜ」
……なにやら、揉めているみたいだね。
ボクは、扉のところまで浮遊して行った。声を聞く限り、まだまだ入ってくる様子はなさそうだ。
ここで騒がれると集中出来なくて迷惑だからと、ボクはさっさと子供たちを部屋に招き入れる事にした。
「キミたち、用があるなら入っておいでよ。……さっきから、声が聞こえていたからね?」
「あっ! よ、よく気づいたな、ほめてやる!」
あれ、何かデジャブ……。
もしかして、フワくん。……不測の事態が起こると、いつでもこうなるとかなのかな? どもり&上から目線、再びだね。