お茶会 *1
*Side:星砂 癒織
折角の機会だからと、ユノくんの他にひーちゃんとフワくんにクレくんを交えて楽しもうということになった。
……つまり、ボクがこの船で知り合った子供たちだね。
いつの間にか増えていたまともに話せる人の数に、ボクは少し緩んだ頬を抑えた。
この世界の人は元の世界より基本の魔力量が多いみたいだから、ボクとも普通に話してくれる人が結構いるんだよね。
この世界に来てから、一度も変に怖がられたことが無いのは、快挙だよ。……この船の人たちが、そういう人ばかりの可能性もあるから、過度な期待をするのは控えるべきだけどね。
因みに、皆には見えていないようだけど、リーダーさんたちも居てボクたちの周りをふわふわと漂っている。
ヨイくんは、甲板に来ていなかったフワくんとクレくんへの招待の伝言を頼んでいるから、ここには居ない。
……張り切っていたから、任務はしっかりと遂行してくれると思うけど、少し心配だよね。
「ここよ」
ひーちゃんの言葉に、ボクは顔を上げて考え事を中断した。
「……いざ、お部屋訪問」
ひーちゃんが押さえてくれていた扉を、ボクは会釈しながら通った。
目の前に広がっている部屋は、女の子らしさはあるものの、やはり整頓されていて無駄な物は見当たらない。
「座って待っていてね」
ひーちゃんは言うと、キッチンらしき所に行ってしまった。
……実は、当初の予定ではボクの部屋で食べるつもりだったのだけど、ひーちゃんがお茶を淹れてくれると言うから、彼女の部屋を使うことになったんだ。
「……ユオリがさっき話してたやつらは、そこにいるんスか?」
「「やつ」って、「れでぃ」にたいしてしつれいなの」
「「しつれい」は「わるいこ」?」
「うん! きっと、わるいこ」
「……わるいこ、おいだすー?」
「こらこらこら。追い出さないであげてね?」
「何スか? ……何か、不名誉なことを言われてるッス?」
水色生物がユノくんを手で押し始めたのを見て、ボクは慌ててストップをかけた。
「あ、う、まあ……」
「……察したッス」
「ええと、女の子扱いして欲しいらしいよ」
「分かったッス! おお、こんな所に可愛い女の子がー(棒)!!」
「……うん、何かごめんね」
虚空を見つめながら芝居がかった動作で語りだしたユノくんを見て、激しい罪悪感に襲われたボクは顔をそむけながら言った。
ユノくんの見ていた方向に少し前までいた水色生物は面白がって避けてしまっていたから、正真正銘の一人芝居だったのだよね。……しかも、棒読みというね。
「ざわざわ」
「ままー、あれ、なーに?」
「しっ! みちゃいけません!!」
「……あれはー、「おおきなおともだち」というやつー?」
「ちがうよ。「しんし」っていうんだよ」
「ものしりだねぇ」
「うふふー」
……うん、彼女たちの姿がユノくんに見えていなくて良かったよ。本当に。
つっこみ不在、恐ろしいね。
「ユオリー。ファリと、クレ? つれてきたよ、きたよー! えらい? ぼくえらい??」
絶妙なタイミングで入ってきた、ヨイくんたち。
……この空気をどうすれば良いのかな?
取り敢えず、残念な姿(勿論、一人芝居のアレね)を見られなかっただけ、ユノくんは運が良かったということで。……悪運というのかもしれないけど。
「ヨイくん、お疲れ様」
現実逃避を決め込んだボクは、期待の眼差しできらきらしているヨイくんの相手をすることにした。
「もっともっと、ほめて、ほめてー」
「そうだね、では。……ヨイくん隊員、この度はご苦労であった。大義であるぞ。褒美を取らせよう。……こんなので、どうかな?」
子供って、こういう隊員ごっこみたいなのが好きだよね。……ボクの偏見ではないことを祈るよ。
ボクは少しだけどきどきしながら判決(ヨイくんの反応)を待った。
「ありがとうであります! ……あります? あってる、あってる?」
「……なかなかの返しだね。ヨイくん」
「ほめられた、ほめられたー」
にこにこ笑顔のヨイくんを見ていると、和むね。
「ちょっ、放置は止めて欲しいッス!」
「お待たせ、準備出来たわよ」
ユノくんにコメントをする前に、ひーちゃんが戻ってきた。
「さあ、始めましょう」
ひーちゃんはさっきまでの会話を知らないから、何があったのか気になっても可笑しくないのに、ユノくんを完全に無視して涼しい表情で言った。