ユオリ観察(リューノ)
今回は、前話の内容に重複有りなので、苦手な方はご注意下さい。
*Side:リューノ
最近、オイラに出来た友達は、ちょっと変わってるッス。
まあ、本人が友達と思ってくれているのか正直自信ないッスけど、そこそこ上手くやっていけているとは思うッス。
そいつ――ユオリが現れたのは、本当にぎりぎりのタイミングだったんス。
多分誰に聞いても肯定してくれないと思うッスけど、あと少し遅かったら姉ちゃんもハイト兄ちゃんのように海に飛び込むことになっていたと思うんス。……自分から進んでなのか、他の人の手によってなのかは分からないッスけど。
そういうこともあって、オイラからするとユオリは友人(希望)兼、恩人なんス。
その翌日には、ハイト兄ちゃんを助けてくれて、現れてたった数日でユオリはこの船に幸運を運んできた。……って大人たちが、言ってたッス。
……大人たちに「天の遣い」と呼ばれていることを知ったら、ユオリはどんな反応をするッスかね。
恥ずかしがるか、無表情を貫き通すか、それ以外か。……とか、考えてしまうッス。
まだ短い付き合いッスけど、一度だけ見た無表情が崩れた姿をまた見たいと思うッス。
……やっぱり、オイラは誰かが笑っている姿を見るのが好きッスから。
今日は、ユオリが大活躍だった嵐の日から数日経って、漸く落ち着いてきたから、一番の功労者を遊びに誘おうと思ったんス。
その後、ユオリが全く魚を釣れなくて、はらはらする羽目になったッスけどね。
オイラの方は普通に釣れてたッスから、あの時のオイラの背中は、冷や汗がだらだらだったッスよ……。
しかも、漸く釣れたと思ったら、仮面さんだったという状況ッス。
……いやー、実のところ、仮面さんが現れた時は詰んだと思ってたんスよ?
まあ、それもユオリが比較的あっさりと倒してしまったんスけど。
……《天使の祝福》の対処法を知っていたり、その説明だけで《悪魔の口付け》のことを口にしたりと、一の説明で十を理解するというようなところがあるんスよね。
と思えば、仮面さんのことのように常識を知らなかったりして、ちぐはぐな印象を受けるッスね。
無理に聞こうとは思わないッスけど、気にはなるッス。
さっきも言ったようにユオリが知らない常識もあるみたいで、仮面さんから出た魔石を放置してるッス。
……一応、倒した人が最初の一つを拾わないと他の人は手をつけてはいけないというルールがあったりするんス。
お陰で、皆がユオリに注目してるんスけど、本人は何か別のことをやってるみたいッス。
何をしてるんスかね?
……しゃがんで、何か喋ってるように見えるんスけど。
って、本人に聞けば良いだけッスね。
「ユオリー、何してるんスか?」
オイラの言葉に振り向いたユオリの手には、可愛らしい箱が乗っていて、少しだけ表情が緩んでいるように見えたッス。
……まあ、気のせいかもしれないんスけど。ユオリの気持ちを読み取るには、まだまだッスね。
「ん? 何って、この子たちと話して……。あー、もしかして視えていないとか?」
「取り敢えず、ユオリの正面には何も視えないッスね。……辛うじて、何かがいるような感じはするッスよ」
答えると、ユオリは何かを考えているのか、少しの間行動を停止したッス。
「ふむ、成る程ね。……ユノくん、ボクはこれからケーキを食べる予定なのだけど、一緒にどうかな?」
「わぁっ、ケーキッスか? いただくッス! ……ところで、一つで良いから、魔石を拾ってやってもらえないッスか?」
魔石とユオリを交互にじっと見る船員達が、段々可哀想になってきたんス。
事情を知ってるからこそ、見ていると軽い使命感に駈られたッス。
「……ん? どうしてかな? あ、拾うのが嫌なわけではなくて、ただの好奇心だから」
「一応、ユオリが拾ってからじゃないと、他の人は拾ってはいけないというルールなんス。……理由は知らないッスけど、従ってくれるとありがたいッス」
落ちている魔石全体をざっと見ると、ユオリは限りなく白に近い一つを選んで懐に入れてから、オイラを振り向いたんス。
「さて、お茶会と洒落込みましょうか?」
……そう言ったユオリの表情があまり変わらなかったことを少しだけ残念に思ったのは、オイラだけの秘密ッス。
全部口語なので、読み難かったら申し訳ありません。