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魔術師の異世界召喚  作者: かっぱまき
日本にて
2/109

転入生、来る

 予告通り投稿しました。

 楽しんでいただけると幸いです。

*.#~*.#~*.#~*.#~


 ボクは、学校では少し浮いた生徒だった。

 いや、別に何かをやらかした、というわけではない。

 だけど、高校一年という多感な時期の少年少女というのはなかなかに敏感なもので、ボクのことを異質だと感じとったらしい。

 いじめこそないが、皆がボクのことを遠巻きにしていた。

 簡潔に言うなら、所謂ぼっち状態だった。

 だけど、それと同時にボクは、とても注目されている生徒でもあった。

 何かが起こると、皆がボクの方をちらちらと見るくらいには。

 理由として考えられるのは、ボクに他の人と違うところがあったこと。


 でも、それはボクが好きでやっているわけではないし、巡りめぐって彼らのためになる行いなのだけど……。


 そんなぼっち生活は、意外なことで幕を閉じたのだった。


*.#~*.#~*.#~*.#~


 入学から一月ほど経ったある日、クラスは妙に浮わついた雰囲気だった。

 ボクは授業以外はほとんど寝て過ごしていたので、クラスの様子の原因が分からず終始疑問符を浮かべていた。

 ボクの疑問は、教室に担任が入ってくるまで続いた。

 因みに担任は、青柳あおやぎ先生という切れ長の瞳のイケメンさんだ。

 彼が教壇に立ち廊下に声をかけたことで、漸くボクは状況を理解した。

 教室に入って来たのは、道を歩けば十人に七、八人は振り向きそうなイケメン。


 ……このクラスのイケメン密度を上げないで欲しい。目がつぶれる。


 実は、このクラスにはタイプは違えど他にも数人のイケメンがいる。何とも、容姿が平凡な生徒にはつらいクラスだった。

 彼は、上手とは言えない文字を黒板に書いた。


「俺の名前は、無敵むてき 十六夜いざよい。変な時期の転入だけど、よろしくなっ」


 ……吹き出さなかったボクは偉いと思う。


 因みに、後で知ったのだけどこの無敵という名字、日本に三十人ほど実在するというのだから驚きだ。


……全国の無敵さん、ごめんなさい。

 というか、名字で笑いそうになったけど、名前の方もなかなかだよね。


「まあ、力強い名前なのね」

「格好いい……」

「名前負けしてないわ」


 Byクラスの女子。


 えー、それで良いのか? 顔さえ良ければ的なやつかい。


「質問とかあるやつは、HRが終わってからやってくれ。無敵は、星砂の隣の席だ。空いているのは、そこだけだから分かるな」


 青柳先生は、女子達の騒ぎをスルーしてHRを進めることを優先したようだ。


 ……って、ボクの隣じゃん。


 クラスの皆が無駄に注目しているのだけど。

 気にせず歩いてくる転入生。

 彼は、席に着くと話し掛けてきた。


「よろしくなっ! ……お前の名前は?」

「星砂。よろしく」

「名字じゃなくてっ」


 面倒な。関わり合いになりたくないから、名字だけで名乗ったのに。


「……」

「……なあっ! 俺が名乗ったんだから、お前も名前を言わないといけないんだぞ!」


 無言の抵抗を察して欲しかったよ。


「……ボクは、星砂ほしずな 癒織ゆおり

「よろしくなっ! 癒織」


 名前呼び、許可していないのだけど? しかも勝手に、呼び捨てるなよ。


「……よろしく、無敵くん」

「十六夜で良いぞ」

「ボクは、名字で呼ぶ主義だから」

「何言ってんだ? 俺が良いって言ってるんだから、名前で呼べよ!」


 あ、駄目だ。こいつ、人の話聞かないタイプの人間だわ。ボクが、一番苦手なタイプだね。


 ボクが無敵くんに折れる前に、クラスの女子が特攻を仕掛けてくれたので助かった。


……代わりにボクの席も盗られたけどね。

 ああいう人って、始業のチャイムが鳴るぎりぎりまで居座るよね。……面の皮が厚いのかな。



 昼休みになり、無敵くんに誘われる前に昼食を終えたボクは、机に突っ伏して睡眠タイムに移行した。話し掛けるなというオーラも出して完璧な状態。

 だけど、それを無視するのが無敵くんクオリティ。


「おーい、癒織。遊びに行こうぜ」


 無視を決め込んでみたが、しつこくてうるさい。

 周りの返事しろよ、という視線がつらい。


「……何、無敵くん。ボクには休息が必要なんだけど」


 昨日も急な仕事が入って、寝不足なんだよ。


「休息とか言っても、寝るだけだろっ」


 ……睡眠は立派な休息だよ。


「……うわっ!」


 声に出さずに突っ込んでいたら、いきなり腕を引っ張られた


 ……腕抜ける腕抜ける!


 ボクは、そのまま引きずられて行った。



 教室から出て少し進んだところで、無敵くんが口を開いた。


「体育館に行こうぜっ!」


 いやいやいや、無敵くん。キミ、体育館の場所知らないでしょうが。それに、今日は無理だよ。


「……無敵くん。今日は体育館使えないよ? 割り当てが上級生だからね」


 考えなしに体育館へ突撃しようとした無敵くんは、ボクの言葉に首を傾げた。

キョトンと形容出来そうな表情に、無性にいらっとしたボクは悪くないと思う。


 ……誰が、キミみたいにそこそこガタイが良い男子生徒の幼子のような動作を見たいんだよ? 誰得? ……自重してよ。


「割り当てとか可笑しいだろっ? 遊びたいやつが遊べば良いじゃん」

「いやいやいや、そういうルールだからさ。知らなかったでは済まされないんだよ。上級生に敵視されて転校した子もいるんだから」

「行くぞっ」


 まさに、天下天上唯我独尊ってやつだね。……人の話聞けよ。


「とにかく、ボクは行かないからね」


 というか、こいつボクの腕を掴んだままなんだよね。いい加減離してよ。さっきから、何だか腕が痛いんだよ。



 無敵くんはボクと行くのは諦めた様で、体育館への道を聞くと一人で行ってしまった。



 うーん、大丈夫かな?


 因みに、ボクは図書室で読書に勤しんでいる。


 ……何だか、嫌な予感がするんだよね。


「とりあえず、教室に戻るか」


 そこに彼がいれば、ボクの杞憂だったということが分かるし。



 教室に戻ってみたが、ボクの希望に反して無敵くんの姿はなかった。

 というより、「お前はお呼びじゃないんだよ。無敵くんを連れてこいや」という視線が突き刺さる。針のむしろですね。メンタルに大ダメージ。



「普通に考えて、やっぱり体育館か。……嗚呼、行きたくない」


 あの視線に耐えられなかったボクは、教室を出て無敵くんを捜している。


「……はぁ。仕方がないか」


 ため息を吐いて、ボクは体育館へ歩き始めた。



 体育館へ着くと、揉めているような声が聞こえてきた。

 しかも、片方の声は聞き覚えがある。

 嫌な予感は当たってしまった様だ。


「お前、一年だろ? ……お前らの割り当ては明日だから、大人しく帰れ」

「可笑しいだろっ! 皆で仲良く遊べば良いじゃん」


 嗚呼、先輩に向かってため口とか馬鹿なの、死ぬの? しかも、先輩は正論しか言っていないし。冷静な先輩で助かったよ。


 ボクは、無敵くんに突撃しつつ、流れるように頭を下げた。


「すいませんでしたっ」

「癒織、何で謝るんだよ?」

「無敵くんも頭下げて。申し訳ありませんでした。こいつ、今日転入してきたばかりで……」


 頭を下げたままで、先輩の気配を伺った。


「いいよ。二度目は無いけどな。今度は、しっかり止めてくれよ」


 ……助かった。


「はい。有り難う御座いました」


 綺麗にお辞儀をして、体育館をあとにした。……不満そうな無敵くんを引きずって。



 ……この野郎。無駄に先輩たちに目をつけられたんだけど。


「何で、謝ったんだよっ!?」


 無敵くん、五月蝿いし。理不尽だ。


 ボクは無言で苛立ちながら、無敵くんを視界に収めた。


 ……でも、あの体育館何かあるな。嫌な予感はそっちだったみたいだ。


 指令があるまで待機だから何もしないけど、一応、報告だけしておこう。



 教室に戻ると、ボクはふて寝をした。

 授業開始と同時に起きたけど。


 ……嗚呼、無敵くんのせいで眠い。



 因みに家に帰って袖を捲ってみると、腕にはうっすらと青あざができていた。


 うん、痛いとは思ったよ。まさか、こんなになっているとは。

 ……無敵くん、キミは手加減出来ない赤子か。



 翌日、腕を掴むなと注意したが無駄だった。どうやら、理解出来なかったらしい。持ち前の筋の通っていない理論を展開された。……驚愕。


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