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魔術師の異世界召喚  作者: かっぱまき
日本にて
16/109

召喚陣



《集計が終わりましたので、体育館にお集まり下さい》


 昼食後、再び行われた放送で、ボクたちは体育館に移動した。

 生徒達が集まると、挨拶もそこそこに結果発表が行われた。



「なんと、三十個全てのスタンプを集めた生徒がいました! ……藍澤あいざわ めぐむ君、おめでとうございます!」

「……スゲーじゃん、メグ!」

「おめでとう!」


 呼ばれた生徒は知らない名前だったけど、少し離れた場所で歓声が上がるのが聞こえた。なんとか生徒がずれたタイミングで隙間から覗くと、そこには長身で少し猫背の隈が目立つ少年が居た。

 少し照れたような反応からも予想がつくけど、彼が藍澤くんなのだろう。


「第二位は、スタンプを二十八個集めた香川かがわ 唯花ゆいかさんです!」

「唯ちゃん、おめでとう!」

「……わぁっ、ありがとう!」


 騒がしい方向を少し見てみると、黒いショートカットの生徒がいた。


 何度かグラウンドで見たことがある気がするし、陸上部とかかな?


「第三位は、スタンプが二十七個で二人います! 協力して探したのかな? ……久遠 氷雨君と星砂 癒織さんです!」


 ……あれ? 「期待出来そう」とは言ったけど、ここまで良いとは思わなかったよ。


「やりましたね!」

「……いえーい」


 少し得意気な表情の久遠くんが両手を出して来たのを見て、ボクは一瞬迷ってからハイタッチで応えた。

 久遠くんはボクの反応に驚きの表情を浮かべた後、「棒読み」と呟いた。


 ……ゆるして。ボクの限界だったんだよ。


 そういえば、と空閑くんと無敵くんを見ると、二人は固まっていた。


「……おーい、二人ともー?」

「お、おお。おめでとさん、久遠、星砂」

「……」


 おや? 無敵くんがぶるぶると震えているよ?


「……お前ら、凄いなっ! どうやったんだっ?!」


 突然テンションが爆発した無敵くんを見て、ボクは思った。


 あの「ぶるぶる」は何かのエネルギーを溜めていたのだろうか、と。

 そして、やっぱり黙っていてくれた方が良かった、と。



 あの後発表された結果、空閑くんと無敵くんもなかなか奮闘したようで、二十四個集めたことが判明した。

 因みに、一位の生徒が望んだものは、「休み時間の延長」だった。


 ……彼とは、気が合いそうな気がするよ。



 こうして、新入生歓迎会は幕を閉じた。



「起立、さようなら!」

「「「さようなら!!」」」


 帰りに元気になるのは、中学も高校も同じなのかと思いながら、ボクは久遠くんの所へ歩いていった。


「今日は、妹ちゃんが来てくれるんだよね?」

「ええ。たまには僕達から動くべきだという話になりまして。恐らく、校門前にいると思いますよ。……それより、星砂の家は本当に大丈夫なんですよね?」

「ボクたちのせいで迷惑がかかる人なんて居ないから、大丈夫。……それにしても、妹ちゃんが出歩けるほど元気になって良かったよ」


 実は、最近体調が良くなってきた妹ちゃんの快気祝いも兼ねて、他属性の扱いを教える約束をしていたのだ。

 勿論、最初は以前教えた分だけで終わる予定だったのだが、二人とも呑み込みが早くて教えるのが段々楽しくなってしまったのだ。


「さてと、待たせても悪いし行こうか」

「そうですね」


 その時、軽い足音が聞こえてきた。


「ひさ兄、来たですよ~。星砂さんも、こんにちはなのです」

「こんにちは。……入って来ちゃったの?」

「はい、なのです~。実は……」

「あーっ!! なんだこれっ?!」


 妹ちゃんの説明と無敵くんの爆音が重なった。

 なんて迷惑なやつだ、と無敵くんの方を見ると、嫌なものが視界に飛び込んできた。


「どうして、こんなところに……」


 無敵くんの近くの壁には、ボクが正すべき歪み――を遥かに凌駕した安定感を持つ陣が存在していた。


「無敵くん、それに触らないで」

「……えっ?」


 咄嗟に声を上げたけれど、時すでに遅し。無敵くんが、その陣に触れてしまった後だった。

 拳大程だった陣は、一気に膨れ上がり、直ぐに教室を覆い尽くした。


「……どうなっているんだ?」


 漸く異常に気付いた教師とクラスメイトを尻目に、ボクは今までの経験からこれが何かアタリをつけていた。


 ――恐らく、召喚陣。


 しかも、例によって例の如く、今までと同じ世界の気配がする。


【闇転。忍び寄る闇、彼の陣を覆いて抑えよ。……抑制】


 急いで唱えたお陰で、陣は天井に触れるとともに止まったが、角で曲がり床に広がった部分はもう教室から出てしまい端が見えなかった。


 ……これでは、陣がどこまで広がってしまったのか確認出来ない。


 一歩踏み出そうとしたが足は教室の床に貼り付けられたように、少しも動かなかった。

 ボクと同じように行動しようとした生徒たちも、動けないことに気付き騒ぎ出した。

 教室の様子を見ながら解決法を考えていると、足元にある巨大な陣の一部が光を帯始めた。陣を抑える為だけに展開した闇は、今の時間帯も手伝って呆気なく霧散してしまった。

 それと同時に魔力が体から引き剥がされていく感覚が襲いかかってきた。


【魔転。この身に宿りし魔力、我と強固な結びを交わせ。……魔力執着】


 ボクは慌てて、久遠くんと妹ちゃんにも同じ魔術を使った。

 これは、自分の持つ魔力と体の結び付きを強固する魔術。滅多なことでは魔力が奪われなくなる代わりに、魔術が使い難くなる上に消費魔力も馬鹿にならないという切り札的魔術でもある。

 因みに、普通は他人に使うタイプの魔術ではないので、現在のボクの魔力残量はいささか心許ない状態になってしまっている。


 ……どうやら、世界移動時に魔力が離れる現象は、魔力を認識している人にしか起こらないみたいだね。


 ボクは新たに得た情報を心の中に書き留めながら、その時を待った。

 突然、陣が大きく発光すると同時に、ボクたちの視界は真っ白に塗り潰された。

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