微かな違和感(空閑 緋波)
キリが良い所で切ったので、短めです。
*Side:空閑 緋波
今日、オレが星砂に話し掛けたのは本当に偶然やった。
普段から妙に取っ付き難そうな雰囲気だったし、自慢じゃないけど友達は多い方やから無理に話す必要を感じなかったから。
ただ、偶然教室に二人きりだったから暇潰しを兼ねて話し掛けてみたんよ。
最低限の受け答えだけで無表情で見詰めてくる星砂に焦ったオレは、しりとりを思い付いた。
……まあ、それで大分呆れられてしもうたみたいなんやけど。
そのあとに、気を悪くするかもと思いつつも好奇心に負けて、表情の話をしてみたんやけど特に表情は変わらんかった。
ただ、その話をしている時に妙な感じがしたんや。
……前にも、誰かと似たような話をしたことがあったような、そんな違和感やった。
本人に聞いてみても、知らない様子だった上に話も切り上げられてしもうたけど。
まあ、十六夜の行動を見ていると同情もするけどなぁ。
そういうオレは、あいつと結構仲が良かったりする。十六夜が星砂に置いていかれた時に話したんやけど、なかなかにおもしろうて。
数時間後に、あんなことになるなんて思うてなかったわ。
……星砂、助けてー。
もう嫌や。
十六夜と久遠、睨み合っとるんやけど……。
「貴殿方が来なければ、星砂はあんな危険なことをしなくて済んだんですよ?」
「なんで、氷雨だけなら大丈夫だって言えるんだっ!?」
おお、珍しく十六夜が正論を言っとるで。確かに、それはオレも気になっとったわ。どうも、久遠のやつ何かを隠している感じなんよ。
「……それは、お教え出来ません。約束があるので」
「隠し事はしちゃいけないだぞっ!」
……時と場合によると思うんやけどなぁ。
多分やけど、久遠はこれ以上話さへんと思うで?
「……貴方は他人との約束を簡単に破るのですね」
また睨み会う二人。
……もう、ええ加減にしたって。オレのメンタルが限界やわ。
……ん?
「ちょっと、二人ともストップや」
ちょっ、睨まんといて。
「何だか、上の方が騒がし気がせえへんか?」
途端にぴたりと動きを止めて、上の方を見る二人。
……意外と仲ええんちゃうの?
「……人が飛び降りた?」
「そう、聞こえるな」
顔が青ざめるのが自分でも分かった。
「「星砂!」」
「癒織っ!」
「……どうかした?」
近くから聞こえた声に、オレたち三人は飛び上がった。
「なるほどね。三人は、ボクが屋上から飛び降りたと思ったのか。……まあ、確かに飛び降りるふりはしたけどね。先輩方が慌てて下に降りるのを見送ったあとに柵を飛び越えて上に戻ったんだ」
ニコリともせずに淡々と語る様子を見て、なんとなくやけど、星砂が嘘を吐いている気がした。
……まあ、根拠もない上にどこが嘘なのかも分からないんやけど
。
ただ、何だかこいつは存在自体が嘘っぽい気がするんよ。……かなり失礼なことを言っている自覚はあるんやけどな。
……そういえば、星砂の性別に気付いているやつってどれくらい居るんやろか。
多分、本人は偽っているつもりはないんやろうけど。むしろ、勘違いされていることにすら気付いてないみたいやしなぁ……。
原因は一人称と顔の造形あたりやろか。せやけど、いくら私服の学校やからって、気付かれないのはある種の才能かもしれへんな。
とりあえず、十六夜と久遠の二人は気付いてなさそうやな。
……面白そうやから、教えたりせえへんけど。
「癒織っ! お前、もっと笑った方が良いぞっ!!」
……いつの間にか、会話が進んどった。
確かに、オレたちを逃がそうとしてくれた時は珍しく無表情じゃなかったなぁ。
あの笑みも意外と星砂に似合っとったというか、違和感がなく馴染んどったんやけど、かといって無表情の方が嘘っぽいという印象もあらへんしなぁ……。
……本当の星砂は、どれなんや?




