彼女とボク *1
お久しぶりです、と書くのが恒例になっているような気がします。すみません。
今回は更新していなかった間にポスターを描いたり、お世話になった方への色紙のデザインとかをしていました。真剣なペン書きがあれほどの疲れをもたらすことを久々に思い出しました……。
「……ボクは折れるつもりは無いので時間の無駄だと思うのですが、どうでしょう? 諦める気は?」
「うん、ないかな」
「……どうして」
その時、俯いていた友里音ちゃんがぽつりと零した。その声は小さなものだったけど、妙に響いた。
「……癒織はあたしのことが嫌いなの?」
「そんなことはないけど」
「だったら、どうして? ねえ、あたしに仕えるのが嫌?」
「だから、そういう話じゃなくて……」
「嫌いじゃないなら、あたしの言うことを聞いてくれないと許さないっ!」
友里音ちゃんが叫ぶと同時に、ボクの肌にぴりぴりとした緊張感が走った。
そういえば、最近はなりを潜めていたけど、友里音ちゃんは元々癇癪持ちだったね。そもそも、これのせいで彼女の名前を呼ぶことになったんだし。
懐かしさのようなものを感じながら様子を窺っていると、突然嫌な予感がしてボクは後ろに数歩距離をとった。それと同時に、先ほどまでボクがいた場所に大きな籠のようなものが出現していた。
……一体どういうことなのだろう?
彼女は魔術を使えない筈なのに、これは明らかに魔術抜きでは起こりえない現象だった。状況を見極めようと、目に魔力を集中させたボクは、それだけで彼女の身に何が起こったのか凡そ推測することが出来た。
……いや、その言い方は正しくないか。彼女が何をしたのか、と言った方が正確かな。
ボクの目が捉えたのは、見覚えのある気配の魔力だった。というか、殆どボクの魔力そのものだ。違いは彼女の固有の魔力と混ざり合って変質した分くらいのものだろう。そちらの魔力の状態はボクには判断できないけど、残りの方は今までの守護に働いてしまった分……と、恐らくはボクが知らぬ間に落とした羽を回収してしまった分ではないかと思う。一度強制帰還しているため、あの時に落とした可能性が圧倒的に高いだろう。
あれはボクの一部でありながら母上から譲り受けたものでもあるので、単純に魔力の含有量だけで言えばかなりのものになる筈だ。
勿論、一般人はそれだけの量の魔力を受け止める器がないから、通常なら羽を回収してしまう心配はない。しかし、彼女の場合はそうではなかったらしい。
此処からは完全に予想でしかないが、守護の力が中途半端に機能して器の代わりの役目を果たしてしまったのだろう。当然それだけでは説明しきれない分もあるから、相性とかの話も関わってくるとは思うけど。
まあ、ボクの仮説が正しいとするなら、現在は結構な危機的状況であるというわけだ。
ボクの魔術は彼女にはあまり効かないけど、その逆はそうとも言い切れない。しかも、魔力が器の代わりをしているなら、魔術を使うことで自分に負担もかからないため魔術の使用者を護る魔力も必要なくなる。つまるところ、自分の持ち得る全力の魔力で戦えるということ。
更に言うなら、ここは彼女のホームグラウンドだ。一度来ただけのボクには予想し得ない手だって打てるわけだ。
どう考えても、不利な点しか見当たらないんだけど。
……さてと、どうしたものかな。