プロローグ
「俺ら、友達だろっ!?」
目の前に立った少年が、悲痛な表情で訴えてきた。
ボクがため息を吐くと、彼は期待するような視線を向けてくる。
――嗚呼、吐き気がする。どれだけおめでたい頭なのだろうか。
まあ、この期待の眼差しは、今までのボクの行いが原因なのかもしれないが。もしそうなら、その甘い考えをボクがばっさりと切り捨ててあげるべきなのだろう。
ボクは、今まで彼にむけたことのない一番の笑顔を顔にはりつけて言った。
「そうだったら、どんなに良かっただろうね」
……キミにとっては、だけど。
ボクの笑顔を見て安心しきっていた彼の表情が、歪んだ。
ボクが言ったことを理解するのを拒んでいるのだろう。
「彼を牢に」
彼が口を開く前に、ボクは言った。
ボクの言葉を聞いて、周りにいた船員たちが動いて彼を連れて行った。
その場に残った人たちは、「知り合いなのではないのか?」という表情でボクを少し心配そうに見てきた。
それに対して、ボクは軽く頷くだけにとどめて部屋に戻った。
ボクのために空けてもらった質素な部屋を見回した。
白を基調とした無駄のない家具を視界に納めて、漸く少し落ち着いた。
思えば、ここに来てからまだ三月ほどしか経っていないんだよね。
随分長く……それこそ、年単位で居るような気持ちになっていたけど、全く代わらない彼の態度から思い知らされた。
椅子に座り手帳を開いてから、この件の原因である先ほどの少年を思い浮かべて言った。
――ボクは、キミが大嫌いだったよ。
この呟きは、誰にも聞かれることなく海に溶けた。
流石に短すぎるので、後でもう一話投稿します。