俺の記憶の君
別にいいんじゃないかな
俺は君が幸せならそれでいいから
俺は嬉しいんじゃないかな
君が今笑顔でいるから
俺が君を幸せにできるんだと
思い込んでたんだ
だけど
君のそばにいるのは俺じゃなくて
君が笑顔でいれるのは俺じゃなくて
そんなこと考えてるうちに
君はもうあいつのもとへと行ってしまった
俺はなにが悪かったんだ
きっとなにも悪くない
俺よりあいつの方が言うのが早かった
それだけなんだ
そうやって割り切ろうとしたのに
君は泣きながら俺に言うんだ
そんなに嫌ならあいつから離れればいいのに
その言葉を必死で呑み込んで
君とあいつの仲を修復しようとするんだ
みじめな俺
君の笑顔を願いながら
自分のものにしたいと願うんだ
いつか伝えていいのかな
俺は伝えていいのかな
そのうち
君の笑顔を願えなくなる時が来る
その時俺は
この想いを君に伝えていいのかな
鈴の音のような声をした君に
伝えようと思うんだ
困った君を見るのも少し楽しみだったりしてね・・・
「なに考えてるの?」
純白の布に包まれた女の人が俺を覗き込む
ベールの中から覗く顔が
いつもより大人げに見えて
ついつい抱きしめたくなった
「昔のこと・・考えていたんだ」
今日を迎えれば
俺はもう二度とあの日の事を
思い出すことはないだろう
だからこそ
帰れないあの日を
俺は今思い出した
「なぁ・・・今幸せか?」
ベールをめくりながら
目線を合わせて尋ねてみた
小さくはにかみながら
頬を薄い桃に染めて言う
「世界で一番幸せだよ」
女の人の手を引きながら
真っ赤な絨毯の上を歩いていく
細い白い指に銀色の輪をはめる
永遠に俺のもの
そんな刻印を刻みつけた
帰りの車の中で
純白の布から
赤の布に羽化した女の人が聞いたんだ
「ねぇ・・・なんで急にあんなこと聞いたの?」
あんなこと・・?
あぁ・・・
幸せかって聞いたことか
「いや、俺の選択肢は間違ってなかったかな・・ってな」
窓の外を見ながら
そっけなくつぶやく
そしたらクスっと笑って
こう言うんだ
「なに言ってるの
自信満々に
俺があいつよりも幸せにしてみせるから
って・・・そう言ったのはあなたのくせに」
君はとびきりの笑顔で
俺に抱きついた
俺は一生離さないと
その小さな体を
胸に抱きしめたんだ