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優しいキス  作者: キヨ
2/7

第2部

展開はやし

 「39度5分」

明はため息をを吐いた。


 近頃、美月の高校では風邪がはやっていたらしく、

明は毎日のように美月に『気をつけろ』と言っていた。

だが、それも空しく美月は普通に風邪をひいてしまった。


「何コレ、・・インフルエンザ・・?」

明は体温計を見ながらボソリと呟くと目の前のベッドに横たわっている美月を見た。

 顔は赤く、息づかいも荒くなり咳をするのも辛そうにしている。

明は自分の無力さを改めて痛感した。


「あき、ら・・?」

ふいに美月が明の名前を呼んだ。

「美月?」

明は心配そうに美月の顔を見ると美月は「フフッ」と笑った。

「・・何か、明がそんなに心配そうにするの、久しぶりに、見た・・」

明は黙っていた。

「最初は、音楽室で初めて出会った、時、・・次は・・・」

美月はそこで一旦話すのを止めた。

「次は、お父さんが・・・交通事故で死ん、じゃった、時・・・・」

「明、朝までずっと、一緒にいて、くれたよね・・」

美月は苦しそうに咳をしながら言い、パジャマの袖で両目を隠した。

 明は口を開きかけ、何かを言おうとしたが、かける言葉が見つからず目をそらした。


コンコン


 突然、医務室のドアがノックされた。

「あの〜、森ですけど。入っても良いでしょか??」

医務室にいるはずの先生は出張中でいなく、仕方なく明はかわりに返事をした。

「あ、長瀬先輩・・」

森は明の姿を見ると顔がほのかに赤くなった。


「森さん、だったけ。久しぶり」

「覚えててくれたんですね・・」

「・・まあね」

明はそっけなく言った。


「美月は・・?」

そう訊かれ、何と言ったら良いのか分からない明は美月の方を見た。


 美月は明たちのほうに背中をむけ、一生懸命に眠っているように心掛けているようだった。

「眠ってるみたいだね」

明はそう言うと再び森の方を見た。

「・・そうですか。あのっ、先輩」

「何?」

「ちょっと、話したいことがあるんですけど・・良いですか?」

「・・・いいよ」


ーーーーーー*

 明は中庭に連れ出された。

回りに人の気配はなく、今にも雨が降りそうだった。

「・・・で、何?」

明は森をせかした。

「あの、先輩、私、私。先輩のこと、ずっと前から好きでしたっ」

「・・・」

「美月が先輩のことを好きになる前から、ずっと好きだったんですっ」

明は冷めた眼で森のことを見ていた。


「それだけ?」

「え・・?」

「もう、戻って良いかな?ここで、無駄な時間を費やしたくないんだ」

明はそう冷たく言い放つと森に背中をむけ歩き出した。

「待ってください!・・お願いです、先輩、私と付き合ってくださいっ」

森は明の背中にしがみつくようにして半ば叫びながら言った。


 明には森の考えていることが分からなかった。

「知ってるとは思うけど、僕は美月と付き合っているんだ。だから森さんとは付き合えないよ」

「知ってます!それでも良いんですっ」

何が良いのだろうか、明はますます森の考えていることが分からなくなった。


『それでも良い』の意味が分からない。

 明がはっきりと断っているのに森はなかなか引き下がらなかった。


「・・・ごめんね、もうちょっと言い直すよ」

森は顔を上げた。

「悪いけどね、キミが良くても僕は良くないし、それに・・・」

明はそこで一旦話を区切った。




 「僕、キミみたいな子が、“しつこい子”って、大嫌いなんだよね」




 森は自然と明から離れた。目は大きく見開かれている。

「じゃあね」

そう言うと明は足早に去って行った。



ーーーーーー*


 「・・美月?」

医務室に入りながら呼んだ。

「明・・?」

「もう、起きてても良いの?」

「うん。だいぶラクになったよ」


明がベッドの横にある椅子に座りながら訊くと美月は笑顔で答えた。

「そう、寮生活も大変だね。男子だけじゃなく、女子まで団体部屋なのは・・・」

明は苦笑しながら言った。

「ホンッとにそうだよね!

団体部屋は楽しいけど、おかげで病気したときは医務室で生活しなきゃ

いけないだもん」

すっごい、寂しいんだよ?と美月が頬を膨らませながら言う。


「そうだね。でも、せめて美月がぐっすりと眠れるまでは、ずっとそばにいてあげるよ」

明は優しく微笑んだ。


「まぁ、とりあえず今日は眠ったほうが良いよ」

「・・分かった」

そういうと美月はベッドによこになった。


「ねえ」

「ん?」

「手、握っててくれる・・?」

明はクスクス笑いながら「もちろん」と答えた。

「・・おやすみなさい」

「おやすみ、美月」

明は美月の額に優しくキスをしながら言った。


                                     fin

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