空虚な人生に花を咲かす(死神ber)
ホラー系の話です。
苦手な方気をつけて
僕は、どうして生きるているのだろう。
僕が生きているこの世界は、果たして僕を必要としているのだろうか?
学校生活という日常の中また言われてしまった。
こんな言葉……。
『この役立たずが!!』
自分だってもう少し早く走れていたら少しは、ゴールを歓迎されていたのかもしれない。
小学校の帰り道、夕日に照らされたブランコに乗っていた僕は、今日起こった一日を深く反省しながら時間が経っていくのをひたすらに待っていた。
「死にたいよ……」
そんな事を呟いた。
今から思えば、そんな事を言った僕は、大馬鹿モノだったのかもしれない。
カラスの鳴き声が辺りに不気味な雰囲気をかもち出した夕刻、涙が流れるのを堪えていた僕の目の前に突然『ソレ』は現れた。
恐らく僕より何歳か上と思われるグチョリと濡れた黒いワンピースに身を包んだ女。
顔は長く垂らされた前髪に覆われており、まるで疲れきった様に力が抜けだらりと垂れた腕が妙な雰囲気を放っている。
恐怖のあまりブランコの鎖部分から手が放せなくなってしまった。
『やばい、このままじゃ……』
突然の事で状況が把握出来ない
このままじゃ、確実に殺されてしまうのではないか。
『何か、無いのか……そうだ声を出そう、声を出せば誰かが助けに来てくれるかもしれない』
脳裏の中に浮かんだのは、心の準備をしていない僕の目の前に立っている死そのもの
「たぁすけぇ……て」
僕のそんな思いも虚しく息の詰まった様なほんの小さな声、まるで子猫が鳴くかのようなそんな小さな声しか出てこなかった。
僕の額から冷ややかな汗が流れた。そう僕の恐れているソイツはゆっくりとコチラに近寄って来たのである。
……ヒタ。
……ヒタ。
ずぶ濡れの状態のソイツは、小さな音を放ちながらゆっくりとコチラに近寄ってくるのが分かった。
やめて!来ないでよ!!
そんな事を何度も心の中で繰り返しながら復唱していた僕は恐怖のあまり目を瞑った。
また一歩また一歩、ひたひたとコチラの方に近づいて来るのが分かる。
恐怖のあまり目をつむるまぶたに一層の力が込める。
音だけではない、目を瞑っているのにも関わらず、背筋が凍る様な物凄い気配でソイツの姿、形、今何処に居るのかが手に取る様に分かってしまうのだ。
ついこんな事を呟いてしまった。
「死にたくないよ……」
そんな言葉を呟くとソイツはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、気がつくと女の気配が消えている。
女の気配が消えて数十秒経っただろうか僕は恐る恐る目を開けた。
すると、僕の直ぐ目の前にソイツは立っていた。
更に、僕を見下ろしていたソイツは大きな声でこう叫んだ。
「斉藤 翔太アナタは明日午後8時に殺される」
そんな事を大声で叫ばれた僕は、気が遠くなり倒れてしまった。
フト気がつくと、すっかり暗くなった公園の外灯の真下のベンチで僕は倒れていた。
ゆっくりと体を起こした僕は、辺りを見回した。
公園の隅の方にある時計は午後8時をさしている。
どうやらここで、2時間近く眠っていた事になる。
あれは、夢だったのだろうか。
そんな事を考えていると公園には、妙な寒さの残る風が吹き付け、怖くなり家に走って帰った。
家に着くと、僕はランドセルを玄関にこっそりと置き家族のいるリビングに一目散に駆け寄った。
二回にランドセルを置いてから、下に降りようかとも思ったのだが、一人になるのが怖かったのだ。
テレビには、コメディー番組がやっており何となくだが少し笑えた。
家族と居ると少しだけ気が楽になった。
母親がこんな事を言ってきた。
「翔太、も~寝なさい」
確かにもう遅い、僕は、素直に二階に上がって行った。
別に明日は8時に家族の前に居たらいいだけの話だし、冷静になれば自分が死にたいと思っていた事を思い出しなんとなくそれでも良いかなと思えたのだ。
ベットに着くといつもより寝つきが良い気がした、恐らく今日はたくさんの事があったからなのだろう。
次の日なんとも無い日常がやって来て僕は、学校に向かった。
学校に行き、帰って寝るそんな毎日の繰り返し、なんとなくそれが当たり前であり、不幸せな事と理解していた。
例えばクラスの人気者の男子な様に、例えばクラスの中で一際目立つマドンナ的な存在の女子の様にそれが、タマタマ僕であれば僕は幸せ者だったのかもしれない。
しかし、そんな存在では、無いという事を何となく理解していた、だから少し残念だった。
そんな事をぼんやりと考えていると、僕の変わらない学校生活は飛ぶ様に過ぎていってしまった。
午後7時40分
こんな夜遅くにも関わらず僕はまだ学校に残っていた。
花が無くなっているのだ。
生き物係だった僕は花に水をあげなければならなかったのが、いつも置いてあるその場所に花瓶が置いてなかったのである。
責任感の強い僕は、ソレを探さなくてはと思ってしまっていた。
しばらく探すのに夢中になっていた僕は、ある事に気がついた。
『斉藤 翔太アナタは明日午後8時に殺される』
昨日公園で言われた一言を思い出したのだ。
午後7時58分
あの言葉が本当なら、僕はあと少しで殺されてしまうという事になる。
やばい!
僕は、急いで教室から駆け出した。
恐らく、後少ししか時間が無い!急いで廊下を走っていると、背後から気配を感じた。
その気配は、足音と共にモノ凄い勢いでコチラに近づいてきた。
その瞬間
僕の腹部から突然姿を現したのは、月光に照らされギラリと光る貫通した刃。
その刃の根元からはドロリとした真っ赤な血があふれ出してきたのが分かった。
冷や汗が一気に出てきたかと思うと物凄い激痛が腹部を中心に体全体に行き渡る。
いっ痛い!
そう言ったかと思うと、僕は横向きに倒れてしまった。
『ああ~死ぬんだ僕』
体はとても冷たくなり痛みの感覚失った。
まるで、置物みたいだ。
『アレッこんな、僕の人生ってなんだったんだろう』
横向きになっていた僕の体は、自然の赴くままゆっくりと仰向けに倒れていった。
すると、僕の目の前には僕を刺したソイツがたっていた。
しかし、顔が見えなかった。
そして、僕の目の前に花が降ってきた。
ああぁぁぁ
探してた花だよ……
そう思うと、僕の体は、ますますと楽になり目を瞑った。
僕が完全に動かなくなったのは午後8時00分の出来事だった。
最後に僕は、こんな事を考えていた。
何か一つでもやり遂げたかったよ……。
しかし気がつくと僕の視界は真っ黒になっていた。
あれっ死んでない
そんな事を考えていると、自分が今暗闇にいることに気がついた。
「あれっ此処どこだ?」
暗闇の向こうに何かが光っているのが見えた。
「おーーーい」
暗闇の中をやまびこのように声が反射を繰り返す。
その光はゆっくりと大きくなりコチラに近づいてきた。
しかし、目がまだ慣れてきてないせいか何が近づいてきているのか良く分からなかった。
そしてその光は、僕の目の前まで来てようやく、動きを止めた。
すると、ようやく視認することに成功した僕は、正直驚いた。
なんと其処にいたのは、僕に死亡宣告を告げた、怪しい女なのである。
手には、ランタンを持っており長かった怪しい前髪も横に分けられ、服も濡れていないとてもキレイな容姿になっていた。
「も~ちゃんと忠告したのに、死んじゃうなんて」
そういうと彼女は、メモ帳を取り出した。
「アナタの人生どうだった?」
僕の人生?
正直とても詰まらないものだったかもしれない。
それにしても、此処は何処なのだろうか?
思考を蔓延らせ黙っていると、彼女はこんな事言い出した。
「私、実は神様なの、だからアナタを助けようと忠告した。だけど、アナタは私の忠告を夢だと勘違いしそれほど気に止めなかった。だからアナタは死んでしまった」
更に彼女は続けてこう言った。
「此処は夢間の世界、天地の振り分け前の場所、だからまだ、間に合うの」
「どういうこと?」
そう聞くと彼女は、こう言い返した。
「翔太アナタは、まだ助かるの。少しの時間だけど死んだ筈のアナタを死ぬ一歩手前の世界に戻すの。そしてアナタは、アナタを殺した犯人に復讐をする」
「そして、もう一人のアナタは生き残り、未来のアナタはその廊下で気絶しているだけの状況になる。どう、やってみない?」
何故か不快感の無い笑みで微笑む彼女。そんな事を突然言われても翔太の頭の回転では、状況を理解しきれなかった。
「?」
「要するに、アナタは、犯人を倒して自由を手に入れるの」
ようやく意味が分かった僕は、疑問に思った。
『死にたいと言っていた僕はこのままでもいいのかもしれない』
そんな事を考えた僕の意識をよみとったのかこんな事を言ってきた。
「翔太、お前何度も後悔しただろう、悔しかったんだろ?じゃ~生き返って幸せになれ!!」
確かに、彼女の言うとおりなのかも知れない、いつも、後悔して常に何かをやり遂げたかったと思っていた。
それに、もし彼女の話が本当なら恐らく彼女は、僕の見方である。最初にお告げをくれた時、驚いて気絶してしまった僕をベンチまで、運んで、寝かせてくれていたのだから。
すると彼女は、前とは違うキレイな笑顔を一つ振りまいて見せた。
「うん、僕生まれ変わる」
そう言うと僕は、鼻息をふっと抜いた。
「じゃ~時間は少ししか無い、行くぞ~」
そう言うと彼女は、ランタンの光を消した。
そして、真っ暗になり目を開けると、学校のグランドに僕は居た。
建物に設置してある時計の針は7時53分を指している。
ヤバイ本当に時間が無い!
僕は急いで駆け出し、靴箱を通り階段を駆け上がる
『僕は、死にたかった』
『でも、でも違う』
『本当は死にたかったのではない、誰よりも上手く生きていたかった』
『誰よりも素直な自分でいたかった』
僕を殺したソイツは廊下にいた。
しかし、僕の存在に気づいてか気づかないのか定かではないが、凄い勢いで走りだした。
ヤバイ逃げられる!!
このままじゃ僕が殺されてしまう……。
僕は急いでソイツを追いかけた。
アレッ早く走れる恐らく僕は今まで生きた人生の中で一番早く走れたかもしれない。
『命を感じた人間の体はこんなに軽いものなのか』
そして僕は僕を殺した犯人にナイフを突き刺した。
終わった……。
アレッおかしいや、この光景どこかで見たことがあるぞ……。
突き刺した相手の背後からはドロリとした真っ赤な血があふれ出してきたのが分かった。
そして、ゆっくりと崩れ落ちていく少年の姿を見て僕はゾッとした。
『僕が……倒れてる……。』
そう彼女は最初からこのつもりだったのだ。
すると、突然姿を現した僕の直ぐ横を通った彼女はその死体に向かって、花をたむけた。
「こうしなくては、駄目だったんだ」
彼女は更に続けてこう言った。
「私は神は神でも死神、しかも、低級の死神いくら誰かを助けたいと思っても、持っている力は、一時的に人を蘇らしたり、誰かが死ぬのを見て魔力をためたり、そんな最悪な能力しか持っていなかった」
「私は、アナタが学校の屋上から自殺しようとするのを発見した。だからそれを止めにいった」
「だけどアナタはしばらくして直ぐに自殺してしまった」
「だから、私は、アナタをアナタに殺させる事を思いついた」
「そして、自殺したアナタを一時的に蘇らせ昔のアナタを殺させた」
「そして、その死を見続けた私は、魔力を溜めていつかアナタの人生変える」
それが、彼女の最初に掲げた目標……。
だから、その時が来るまで……。
読んで下さった方ありがとうございます。
やたらと暗いお話になりましたが、空虚の人生に花を咲かすの死神バージョンです。
これからも、がんばりますので、アドバイス等々宜しくお願いします。