タイトル未定2026/01/24 21:42
僕たちの視界に映ったのは、金髪の少女と、頭のない老人の死体。
「やっぱり!帰って来た!」
「貴様……!」
ミクツが青筋を立てる。
「落ち着け」
ジンがミクツの腕をつかむ。
「全員で勝つぞ」
そして、懐から杖を取り出す。
その時、ミクツはすでに少女の背後に立っていた。
ブォン!!
そして、少女の首を切り落とす。
落とされた少女の生首の口が、少し動いた。
(治癒魔法)
すると、少女の首から体が生えてきた。
「嘘だろ……ありえねぇ……」
ジンが驚愕する。
アルテは怯えるように首を横に振り、
「無理」
とだけ言った。
生首の状態から体が再生できるのか?
それって本当に生物かよ。
「私は嘘の角ネムリ!名乗っていいよ!」
完全復活した少女が楽しげに言う。
嘘の角……?
負王角か!!
なんで負王角がこんなところにいる?
いや、そんなことを考えるのは今じゃない。
今は、倒すことを考えろ。
「炎魔法」
ジンが唱えた。
炎弾
ネムリの体に炎の攻撃が当たる。
「きゃー」
ネムリの体は黒焦げになったが、すぐに再生をする。
「まぁ、そうだよな」
ジンは納得したように頷いた。
「私は魔力だけで才能はないからね。こんな治癒魔法もエーエンの下位互換にしかならない……あぁ、彼は勇者に倒されたんだっけ。知ってる?永の角のエーエンって」
知っている。永の角エーエン。
西の勇者の冒険譚で出てきた強敵だ。
物の形を維持する魔法の使い手で、自身の体の形を維持することですべての攻撃を無効化していた。
ちなみに嘘の角であるネムリはどの勇者の冒険譚にも出ていなくて、”嘘の角”という名前だけが独り歩きしている魔族だ。
しかし、対面して分かった。この異常な魔力量。僕たちは、この圧倒的な魔力量を持つ少女の治癒魔法を突破し、殺さないといけないのだ。
出来るのか?僕たちに。
しかし、どうやって……
「空間魔法」
穿孔
ビュオゥッ!!
僕の隣を風が通り過ぎた。
「私が使える魔法は治癒魔法とこれだけ。魔力をギュッって圧縮して放出するんだ」
そう言って自慢気に胸を張るネムリ。
……なんでネムリはさっきから手の内をぺらぺらと話しているんだ?
考えろ。きっと何か理由があるはずだ。
嘘の角だろ?嘘……何か嘘をつかれているのか?僕は。
いや、分からない。ただ、今は……
僕は少女の肩から右腹までを切り裂いた。
攻撃魔法を使わせる暇を作らせない。
あの攻撃は一撃必殺レベル。絶対に使わせるわけにはいかない。
「あはっ。いいね」
対抗策は戦いながら考えろ。
こいつの、”嘘”について。
何時間経った?
分からない。しかし、僕の体力がもう限界に近いのだけは分かる。
……魔力のせいかな。頭、痛いな。
じゃないじゃない。目の前の戦いに集中しろ。
「うわーん。いたいよー。つらいよー」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
ネムリの体が再生する。
「ずっと見てるだけの女の子にたまにしか攻撃しない魔法使い。女の子の方の勇者は頑張ってるけど男の子の勇者はダメそう」
ネムリは退屈そうにため息を一つ付き、
「一人、殺すか」
と言ってアルテの方を見た。
そして、右手の人差し指をアルテに向ける。
その右腕をミクツが切り落とした。
「もー。面倒くさいー」
「私、飽きてきちゃったよ」
ネムリの右腕が再生する。
考えろ。どうすれば倒せるのか。
考えろ。どうにかして。
ネムリが持っているのは膨大な魔力による治癒魔法というほぼ無限の耐久力。
これを突破する方法だ。
考えろ。
倒し方としてあげられる例はなんだ?やはり一番は封印だが……封印の仕方なんて僕は知らない。それに、封印しても先送りにするだけだ。根本の解決にはならないだろう。
ネムリは莫大な魔力を持っている。それをどうにかして逆手に取りたいが……いい案が浮かばないな。
もし魔法の炎が魔力を可燃物として燃え盛っていたらネムリに魔法の炎を付けるだけで勝手に自滅してくれるのに。現実はそううまくはいかない。
何かいい作戦は……
あ。
……いや、これはあまりにも非人道的すぎる。するべきではない。
…………。
いや、これしかないな。
僕は地面に落ちた爺やの剣を拾う。
そして、ネムリの腕を切り落とした。
「またー?」
再生する前の瞬間。
僕は傷口に剣を差し込む。
「あれっ?」
新しく生えてきた腕は、差し込まれた剣によって真っ二つにされた。
やっぱりだ。
こいつの能力は治癒魔法じゃない。
”再生させる”魔法だ。
おかしいと思ったんだよ。なんで腕を拾ってくっつけたりせず、無駄に魔力を消費させ再生をさせているのか。
こいつは治癒魔法を使えない。
こいつが使えるのは、傷をゼロから再生させる魔法だけだ。
「まずっ……」
ミクツがネムリの首を切り落とした。
そして、首に偽物の聖剣を突き刺す。
「これは……無理だな」
ネムリは観念したように目をつむると、
「死ぬか」
と言った。
瞬間、僕を襲っていた頭痛が止む。
「……勝った?」
ミクツが剣を抜いた。
ネムリの頭はごろんとその場に落ちる。
再生は……しなかった。
「やった……勝った……」
周辺には、ネムリの血肉が無限かと思えるほどに散らばっている。
勝ちはした。
……甘いな。僕は。
たとえ魔族だろうと、僕は相手を尊重し、なるべく楽に殺そうとだなんて考えている。
勇者として、清く正しく、殺そうとしている。
きっとこれからは、そんな綺麗ごとは通じない世界なのだろう。
「ちゃんとしないと」
僕は、一度落とした聖剣を握りしめた。
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