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偽物の聖剣

「じゃあ、開けますよ」


 図書館の奥にある明らかに仰々しいドアの鍵穴に鍵を入れる。


 ギィィ


 鈍い音を立て、ドアが開いた。


 その中にあったのは……


「聖剣……?」


 黄金に光り輝く剣。


 僕の持つ聖剣と全く同じだった。


「偽物じゃよ」


 背後から声がする。


「爺やさん……」


 そこに立っていたのは、この図書館を守っていた老人。


「北の聖剣のレプリカじゃ。儂らが作った贋作で、聖剣としての価値はない」


 ミクツはその偽物の聖剣を引き抜く。


「でも、良い剣だ」


 そして、その刃をじっと見つめた。


「当時儂らが知る中で一番の鍛冶屋に作らせたからな。偽物にしてはよくできている」


「どうして爺やさんはこの偽物の聖剣を守っていたんですか?」


 僕の問いに、爺やは目を細め、


「さぁな。もう忘れてしまった。どうでもよすぎて、忘れてしまったよ」


 と言った。


 その目は、遠い昔を思い出しているようである。


「坊や。お前が本物の勇者だろう?今何をしている最中なのかは知らないが……幸運を祈る。そして、少女よ」

「儂らの剣は、お前に託した」


 ミクツは親指を立て、


「託された」


 と笑う。


「うむ。儂に勝ったのがお前で良かった」


 爺やは満足そうに微笑んだ。


「あれぇ!?先客いるじゃん!なんでなんで!」


 爺やの後ろの図書館の入り口に、一人の少女が立っていた。


「下がりなさい若人よ」


 爺やが腰から剣を引き抜く。


「誰このおじいちゃん!つよそー!」


 少女は楽しそうに笑う。


 なんだ、この感じ……


 頭がくらくらする。酷く痛い。


「魔力酔いだ!多分、あいつの魔力で……」


 ジンが叫ぶ。


 よく見ると、少女の周りの空間は少し歪んでいる。


 これが魔力の影響……?


 どんな魔力量してるんだ、一体。


「おじいちゃん一人でいいの?全員でかかってきなよ!あ、狭くて無理か」

「空間魔法」


 バンッ!!!


 図書館が、吹き飛んだ。


 嘘じゃない。図書館を成形している石が吹き飛び、大量の本が宙を舞う。


「これで広いね!あははは!」


 少女は楽しげに笑う。


「逃げなさい」


 爺やが剣を構える。


「ジジィ!」


 ミクツが叫ぶ。


「殿は、この爺やにお任せを」


 爺やが優しく笑った。


「逃げるぜ、ミクツ。俺たちじゃ足手まといだ」


「クッ……」


 ミクツが奥歯をかみしめる。


「死ぬなよ!ジジィ!」


 そして、僕たちは森の中へ散り散りになって隠れた。




「あれ?後ろの人たちは?強かったのに」


 少女が悲しそうに……いや、悲しそうな雰囲気をまといながらも、どうでもよさそうに言う。


「最近の若い子はどいつもこいつも血の気が多くて困る」


 爺やが間合いをじりじりと詰める。


「私は嘘の角ネムリ!おじいちゃん、名乗っていいよ!」


 負王角。


 魔王を筆頭とした、最強の十六体の魔族。


「儂の名前は爺やじゃ」


「変な名前!あはは!」


 少女は楽しそうに笑う。


「遺言も先に言っとく?せっかくだし!」


「その必要はないですなぁ」


 爺やが剣を振るう。


「儂は、負けん」


 ネムリの右腕が切り落とされる。


「ふぅーん……」


 ネムリは薄ら笑いを浮かべる。


「治癒魔法」


 ネムリの右腕が生えた。


「じゃあ、耐久戦にしよう!私の治癒魔法が追い付かなくなるのが先か、爺やちゃんが倒れるのが先か!」


 ネムリの体が切り刻まれる。


「おっとっと……痛い痛い」


 ネムリの首が飛んだ。




「さすがにもう疲れたかな?爺やちゃん」


「まだまだ……まだ……」


 跪く爺やの周囲には血や肉片が飛び散っている。


 しかし、爺やは無傷で、また、ネムリも無傷であった。


「限界かなー」


 ネムリが爺やの頭を人差し指で押した。


 爺やは力の方向のかかるままに倒れる。


「……儂も老いたな」


 そして、観念したように目をつむった。


「それじゃ、お疲れさまー!」


 ネムリが人差し指を爺やに向ける。


「空間魔法」


 穿孔モルヘル


 パン


 爺やの頭が消し飛んだ。


「ふぅ。楽しかった楽しかった」


 ネムリは周囲を見渡す。


「時間が経てば帰ってくるな」


 そして、その場に胡坐をかいて座り込んだ。


「気長に待つかー」


 嘘の角、ネムリ。


 この世界において、最も回復系の魔法を極めた魔族の少女である。

最後まで読んで下さりありがとうございました!


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