処刑人の街
「見えました。あそこが処刑人の街です」
木々の隙間から見えるのは、高くそびえたつ壁。
完全自治区、オール街。
通称処刑人の街。
この街は南の王国から完全に独立しており、王国とは違ったルールやマナーが存在する。
僕はあまりこの街に詳しくない。しかし、明らかに異質であることは、聞いた話から分かる。
この街の支配者である処刑人は、希望の象徴たる勇者が嫌いであることは有名だ。
そんな変わった人がトップに居るというのに、この街を出入りした人は皆、口々にこの街を”いい街だ”と言う。
それだけじゃない。”処刑人”という異名。これはかなり物騒だ。あまり良い響きではない。
それでも、”いい街”。
異常だ。
そんな異常な街に、僕は今から行かなければならない。
あぁ、不安だなぁ。
「リアル様、ミクツ様、ジン様、アルテ様ですね。どうぞこの街をお楽しみください」
門番の人が笑顔で対応をする。
僕は念のため剣の刃を隠していた。
まぁアーデルバイトと話すときは結局勇者なことをばらすけど。街中で無駄なトラブルに遭遇したくない。
「アーデルバイトさんにお話を伺いたいんですけど何かルールとかはあるんですか?」
僕が門番に聞く。
「おぉ!処刑人様!外の人で処刑人様に話があるなんて珍しいですね。この街の真ん中にある大きなお屋敷に居る門番に声をかけてください。その際、特にこれといったルールはありません。強いて言うなら……」
門番が自分の顔を指さす。
「笑顔で」
良い笑顔だ。
しかし、どこか作り物のようにも見えるその顔に、僕は一瞬不気味さを感じた。
「分かりました。ありがとうございます」
僕たちは門を抜け、街に入った。
街に入って一目。
そこは、楽園のような世界だった。
まず清潔感がすごい。町全体がキレイでどこか光り輝いているように見える。
広間の真ん中にある噴水の水も透き通っていて、鳥が何羽も。
恐らく各々がゴミを拾ったり、街を清掃する仕事をする人間がいるのだろう。
素晴らしいことだ。
そして、異常な点も発見した。
全員が、笑顔なのである。
走り回る子供や接客中の人はもちろん、ただ歩いているだけの人も少し笑っている。
「ジン」
「お前の考えてる通りだぜ。勇者」
なるほどね。
”いい街”のトリックは魔法か。
「ただ、見たことも聞いたこともねぇ魔法だな。それに、多分この魔法の対象は”街の中にいるやつ全員”だ。気を付けろよ」
僕たちは街を歩く。
老若男女誰を見ても笑顔、笑顔、笑顔、笑顔。
そして、アーデルバイトの屋敷の前についた。
僕が屋敷のドアの前の門番に話しかける。
「アーデルバイトさんにお話があるのですが」
「処刑人様ですね。かしこまりました」
門番が中に入っていく。
しばらくして、一人の男がドアを開けた。
「こんにちは、旅のお方。どうかされましたか?」
「こんにちは。僕は黄金の勇者のリアルと言います。魔王の封印に……」
「拘束魔法」
アーデルバイトがそう唱えると、僕の体が動かなくなる。
その瞬間、隣でミクツが剣を引き抜き、アーデルバイトの首に剣を当てた。
「大丈夫」
僕が言う。
「だから、剣を下ろしてください。ミクツさん」
「チッ」
ミクツが舌打ちをしながら剣を鞘にしまう。
「僕は魔王の封印に関する文献の在処を知りたいだけなんです。貴方と前任勇者に何があったのかは知りませんが、僕は前任勇者とは一切関係がないので、どうかご容赦を」
「そうか。俺は勇者が嫌いだ。リアル、お前じゃない。”勇者”が嫌いなんだ」
アーデルバイトが僕を睨む。
この人は、笑っていない。
となれば恐らく街にかかっている魔法はこの人の魔法で間違いないだろうな。この街は南の国でも有数の大きさを誇っている街。相当な使い手だ。
アーデルバイトはミクツの方を向く。
「ミクツ。お前が勇者の側につくとはな。俺が騎士団に居た時にさんざん言っただろ?”勇者に気を付けろ”って」
「どういう風の吹きまわしだ?」
「さぁ?文句は国に言ってほしいな」
ミクツは飄々とした雰囲気で返す。
「はぁ……お前というやつは本当に……」
アーデルバイトがため息をつき、僕を見た。
「まぁいい。勇者、貴様を……」
「処刑する」
アーデルバイトの手に剣が出現する。
剣の魔法?
いや、普通の剣ではないはずだ。それならば普通の剣で事足りる。
何か特殊な効果がある剣だ。
「処刑魔法」
執行の剣
剣が僕の肩に当たった。
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