森の主
「誰かー!助けてくれー!」
森を歩いていると、声がした。
「行かないと」
僕が声のした方向に駆ける。
「えー!また面倒事ぉ!?」
ミクツがぼやきながらも走る。
「おーい!こっちだー!」
助けを求めている男の姿が目に入る。
その男は全身から血を流しながら横たわっていた。
「助けてくれ!主が!主が来る!」
主……?
主ってなんだ?
「イドゥル森の主。王都じゃちょっと有名な魔物だな」
魔物。
魔族の配下の動物。どの個体にも角が生えていて、全身が黒いことが特徴だ。
噂では魔族の誰かの魔法だなんて話もある。
「気を付けてくれ!この辺にまだいるはずだ!」
男が声を張る。
「罠だな。森の主はデカい。それに、魔物は全員が強力な魔力を放っている。俺の魔力探知に引っかからないはずがない」
「それだけじゃないよ、ジン。あいつ、”動けないですよー”みたいな顔してるくせに、体を引きずった跡がない。見え見えすぎる罠だ」
「しかし、ジンさんの魔力探知に引っかからないとなると誰が張った罠なんでしょうか?近くに居ないとなれば……」
「さぁな。分かんねぇから……この罠、乗るぜ」
ジンが男の方へ一歩を踏み出す。
僕達はそれについていった。
「やっと来てくれたか!早く助けてくれよ!」
「お前のお仲間はどこに居んだ?」
ジンが男の顔を覗き込む。
「仲間?仲間ならもう死んじまった!俺一人しかいねぇよ!!」
「そうか……こいつ、魔法にかかってやがる」
ジンが言う。
「近づいて分かった。こいつから流れ出る魔力の質は魔物そのものだ」
「はぁ!?何言って……」
「こいつ、もう死んでるぜ」
「何言ってんだよさっきから!早く助け助けたすたすたス助けてタスケテ」
男が白目を剥き、口から泡を吹く。
「魔法が解けた」
ゴ……ゴゴ!!
その瞬間、地面が割れる。
そして、五メートルほど落下した。
「いたた……落とし穴か」
「俺の魔力探知に引っかからないわけだ。本体は下にいたってわけね」
僕達の前に広がるのは巨大な空間。
そこには、イノシシのような形をした魔物が居た。
額には角が生えている。
こいつが森の主……主と言われるだけはある。強そうだ。
「こいつは魔法を使う。気を付けろよ」
「はーい」
「了解です」
森の主との戦闘が始まった。
「はぁー疲れた疲れた!」
森の主の退治が終わった。
強くはないが、ただひたすらに耐久力が高く、まさに”疲れた”って感じである。
「なんで面倒事に首を突っ込んでいくのかなーこの勇者は」
ミクツが僕を横目に見る。
「いつかは誰かがやることだったんです。それが偶然僕達だっただけですよ」
僕が笑うと、ミクツは不機嫌そうな顔をして
「めんどくさ」
と言った。
「まぁいいじゃねぇか。俺は楽しかったぜ」
ジンも笑顔で言う。
「変な奴らしかいないなー。アルテ、君はどうなのよ」
「……別に」
アルテが小さな声で言う。
「そっか。この子も変な奴だった」
ミクツがはぁと大きなため息を吐く。
「ところで、これどうやって登ればいいのかな?」
そして、上を見上げた。
確かに、こんなに深い穴だ。簡単には登れないだろう。
「俺が魔法で上まで行ってやる。木でも下ろせば登れるか?」
「木登りは得意だよ」
ジンが宙に浮く。
そして、上から木を一本落としてもらい、全員でそれを登った。
アルテの運動神経が悪くて少し手間取ったが、全員無事に穴から脱出はできた。
「処刑人の街だっけ。そこには何があるの?」
「魔王の封印に関する文献の情報ですね。処刑人の街の支配者、”処刑人”アーデルバイトが情報を知っているらしいです」
「ふーん……アーデルバイトね」
ミクツが嫌そうな顔をする。
「知り合いなんですか?」
「知り合いも何も……私たちはもともと親友だよ」
「ただ……」
「ただ……?」
僕が聞き返す。
「多分、死んでも私はあいつと分かり合えない」
ミクツは少々粗暴だが悪い人ではない。
死んでも分かり合えない、ね。
一体どんな人間なのだろうか。
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