旅立ち
この世には四つの聖剣がある。
北の聖剣。東の聖剣。西の聖剣。そして、南の聖剣。
人間や魔族、エルフや獣人は聖剣の周りに文化を形成し、発展してきた。
そして、その聖剣を引き抜ける聖剣に選ばれたものを”勇者”と呼び、平和の象徴として扱っている。
しかしある時、北の国……魔族の国で最悪の勇者が出現した。
魔王。剣呑の勇者。
魔王はほかの国に戦争を仕掛け、瞬く間に領地を広げていった。
それに対抗するように東の国、西の国、南の国は協力し、三人の勇者とその仲間の力をもってして魔王を封印することに成功した。
そして、世界は再び平和を取り戻した……
はず、だった。
どうやら、魔王の封印を解こうとする動向が北の国で起こっているらしい。
「頼んだぞ、黄金の勇者」
「かしこまりました」
僕は南の国、黄金の勇者。
黄金に光輝く聖剣を携え、魔王を”殺す”旅に赴くことにした。
今は旅のメンバーとの顔合わせ。
「私はミクツ!剣士だ!よろしくな雑魚共!」
王国騎士団団長、ミクツ。
「俺はジンだ。よろしく頼む」
王立魔法学園学園長、ジン。
「アルテ。聖女」
人間教教祖、アルテ。
「黄金の勇者、リアルです。よろしくお願いします」
僕、勇者。
僕たちの旅が始まった。
王都を出て、最初の森。
「子供だ」
森の中に、子供がいた。
ここは王都からそこそこ遠い場所だ。子供が一人で来れる場所とは考えづらい。
「どうしたんですか?」
僕が子供に近づき、話を聞く。
子供は体中傷だらけで、今にも泣きそうなのをこらえていた。
「盗賊が、出たんです」
盗賊か。
王都周辺にあるこの森は王都でお金を稼いだ行商人が多い。
だから、ある程度のリスクを飲み込んだうえで盗賊行為をする奴がそこそこいる。
「俺のお父さんが連れていかれました。俺は何とか逃げ延びれたけど……」
「俺だけ、助かってしまいました……」
子供の目から涙があふれる。
「大丈夫」
助かってしまったんじゃない。
君が頑張って、”助かった”んだ。
「僕は勇者。あとは僕たちに任せてくれ」
「勇者……?」
子供の顔が一気に明るくなる。
そして、僕の腰にある剣を見た。
「本物……!」
聖剣は王都出身ならだれしも一度は見たことがある。
王都のど真ん中に刺さっている黄金の剣。それが聖剣だ。
今刺さってるのはレプリカの偽物だけど。
「えーリアル。めんどくさいよー。無視でいいじゃん無視で」
ミクツが唇を尖らせる。
「ダメですよミクツさん。勇者の看板を背負ってる自覚を持ってください」
酷いことを言うミクツを僕がたしなめる。
「リアルだって”勇者だから”ってだけじゃん」
それでもなお文句を言うミクツ。
「そうですよ。僕は勇者なので」
僕は当然だと言わんばかりに返す。
「わけわかんない。まぁいいや、早く終わらせよう。おいガキ、どこに連れてかれたか分かるか?」
高圧的にミクツが聞いた。
「ごめんなさい。逃げるのに必死で……」
「チッ」
「ひっ……」
ミクツの舌打ちに子供がおびえる。
「ダメだぜミクツ。所詮はガキだ。期待はするもんじゃねぇ」
ジンが宙に浮かぶ。
「自分で捜せばいい」
そして、ゆっくりとジンが浮上していった。
木を越え、さらに上まで行く。
「浮遊魔法……すごいですね」
世界で数人しか使えないレベルの超上位魔法だ。少なくとも、こんな地味にお披露目していいものじゃない。
しばらくして、ジンが落下してきた。
「クッ……魔力切れだぜ……」
息も絶え絶えながらジンが続ける。
超上位魔法だもんな。そりゃ魔力切れもする。
そして、右斜め前方を指さした。
「馬車が……見え……たんだ……後は、たの……む……」
そして、力を失ったように倒れこむジン。
「……行きましょうか」
僕がジンを背負う。
「バカだなー」
ミクツがジンの頬をつついた。
まぁ、バカだな……擁護はできない。
「あっ、あれ!?」
その時、子供が声を上げた。
「傷が、治ってる……?」
子供を見ると、先ほどまでの傷がすべて治っていた。
治癒魔法……聖女であるアルテの魔法だとは思うが……
アルテは何もしゃべらない。
まぁ、いっか。
僕達はジンの指さした方角へ歩き出した。
「あそこだね」
僕の視界の先にあるのは、一つの洞窟。
その洞窟を僕たちは木陰に隠れながら見ていた。
見張りと思しき盗賊が二人いて、洞窟の奥は少し光り輝いている。
馬車も近くに一台止めてあった。
「どうしようか。実質的に人質を取られてるわけだし、バレないようにこっそり……」
「めんどくせー」
ミクツが木陰から出て、堂々と歩きだす。
「ちょっとミクツさん……」
そうすると当然、見張りの盗賊に声をかけられた。
「チビの嬢ちゃん。こんなところで何してんのかな?」
「ガキをさらう趣味はねぇ。とっとと……」
バン!!パン!!
速い。
ほとんど見えなかったが……ミクツが一人の顎を蹴り、顔を殴った。
盗賊が地面に崩れ落ちる。
「子供の前ですよ」
「だから殺さなかった」
まぁ、できうる限り最も平和な手段ではあったか。こっちは剣を持っているし。
僕はその場にジンを置く。
「アルテさん、ここでジンさんと子供を見張っててください」
アルテがこくりと頷いた。
僕はミクツの後を小走りで追いかける。
洞窟に入ると、すぐのところにそこそこ広い空間があり、そこには行商人が持っていたであろう大量荷物と、三名の男。そしてさらに奥には縛られた一人の男が居た。
あの人が多分お父さんの行商人だろうな。
部屋の中心にはリーダー風の雰囲気をまとった、周りよりもちゃんとした服を着た男が座っている。
「門番はどうした」
「外で寝てるよ」
「そうか……」
男が手を上にあげる。
「降参だ。あの二人は俺より強い」
「話が早くて助かる」
ミクツが行商人のところまで歩く。
僕はいつ誰が襲ってきても大丈夫なように剣を握っていた。
「安心しろ。誰も襲いやしねぇ。っていうか、その嬢ちゃんが怖すぎて襲えねぇ」
そう言うリーダーの体は少し震えている。
ミクツは行商人の縄をほどく。
「それじゃ、君たち全員縛っていくね」
そして、行商人の荷物にあった縄で盗賊たちを1人ずつ縛っていった。
「俺も運が良いな。まさか勇者に捕まるなんて」
リーダーが僕の剣を見ながら言う。
「何をするかは知らねぇが……健闘を祈るぜ、勇者」
「盗賊から応援される人生を送るなんて、勇者になる前は想像もできませんでしたよ」
「ハハッ。勇者っつーのは人類の希望だからな。俺たちみたいな小悪党でも、ガキの頃に一度は勇者の夢を見るんだぜ」
リーダーも縄で縛られる。
そして、馬車の荷台に荷物と盗賊を乗せていった。
外に出る。
「フォル!!」
「父さん!!」
親子の再開も無事終わったようだ。
「本当にありがとうございました」
行商人が頭を下げる。
「いえいえ。勇者ですので」
僕は柔らかく笑う。
「本当に、ありがとうございました」
そうして、行商人は街のほうへ消えていった。
「あーあ。盗賊が居なければ乗せてもらえたのに」
「歩いてゆっくり向かうのもまた一興ですよ」
僕はジンを背負う。
そして、目的地であるオール街まで向かうことにした。
オール街、完全自治区であり、通称”処刑人の街”。
そして、魔王の封印した際の文献がある街だ。
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