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「有機肥料」ってな~んぞ?

ホームセンターに売られている肥料に、「有機成分配合!」と謳われている商品を見かけたことはおありだろうか?


美味しくなる!とか元気に育つ!とかきれいに咲く!とか、様々な売り文句の枕詞(まくらことば)としてよく表示される有機成分入りの表示だが、そもそも我々は有機成分とは何か、実はよくわかっていない。わかっていないまま何となく良さそう。に流されている。チコちゃんも激怒ものだろう。


そも、有機肥料とは。有機肥料とは動物や植物を由来とする肥料のことだ。

例えば私が一番よく使うのは鶏糞。読んで字のごとくニワトリの糞だ。これがいちばん分かりやすい有機肥料だろう。だってニワトリから出てくる肥料なのだから当然有機肥料だ。

それから油かす。菜種油を搾った後に残る搾りかすなのだが、これもまた、植物を由来とする肥料だ。

他にも本当に色々なものがある。豚糞、牛糞などの大型家畜の肥料、イワシを原料にした魚粉肥料、大豆のおからを上手に発酵させたものまで、本当にいろいろある。最近は石灰すら牡蠣の殻を丁寧に焼いてすりつぶしたものを有機石灰と言って売っていたりする。


では、これら有機肥料はいったい何がそんなにいいのだろう?何となく良さそう、の中身をちゃんと話そうと思う。


有機肥料の良いところその1、土に負担をかけにくいこと。

百姓的にはこれはあんまり重視していないのだが、何年も畑を続けるならば重要になってくる。

例えば前回、ハーバー・ボッシュ法で作られる窒素肥料の中に、硫安という化学肥料があることを書いたと思う。


この硫安、まあまあお手頃で使いやすいのだが、ひとつ困った点がある。

肥料として効き終わった後、硫酸の成分が土に残ってしまうのだ。

硫酸が土に残るなんて書くととんでもないことのような気がしてくるが、実は日本の畑の土は大概、火山灰が厚く降り積もったところに植物が育っては枯れを繰り返して作られる。そのため、火山由来の硫酸は最初から結構な量が土に含まれている。濃度がとんでもなく濃いということさえなければ、植物は硫酸に含まれる硫黄分すら栄養として使うため、問題にはならない。


とはいえ、硫安を使い続けた畑はどうしても土に硫酸が余計に残って酸性が強くなる。酸性が強くなると、酸性の土が嫌いなほうれん草なんかはすぐに育ちが悪くなる。困ったことにこの酸性は打ち消すのがやや難しく、アルカリ性の消石灰を入れても中和しきらない。中和させようと石灰を投入し続けるとこんどはカルシウム過剰で植物に異常が出たり……なかなか難しいのだ。


その点、鶏糞は安心して使える。鶏糞にはもちろん硫酸の成分はごくわずかしか含まれていない。肥料成分もそこまで多くないがとにかく安く、たっぷり買って色々な野菜に使っていいのだ。


油かすも土の表面にばら撒く使い方で不具合が出ることはあまりない。魚粉も同じく、思いつきで追肥してもあまり土に負担をかけない。欲しい時にすぐ使えるのはいいところだ。



有機肥料の良いところその2は、成分表の中に含まれない、微量要素という成分が含まれていること。

これが有機肥料の最もすぐれた特長だと思っている。初回のテーマだった「肥料の三要素」のほかにも、植物には、量はごく少なくて良いが全くのゼロでは困るというものが多数存在する。


ぱっと思いつくだけでも、鉄、ホウ素、モリブデン、銅など。

これは化学肥料には本当に全く含まれないものが多数ある。植物にとっては大量に必要ではないがごく少量、なくてはならないものだ。有機肥料の場合、その微量要素は、肥料のもとになる野菜や動物にもともと含まれているため全体のバランスが良い。


逆に化学肥料だけで野菜を育てているとそのうち微量要素の欠乏が容赦なく起きてくる。百姓にとって最もなじみがあるのはホウ素欠乏だ。


詳しくは調べてみてほしいがかさぶた状の枯れた斑点が葉のいたるところに現れ、特に葉っぱそのものを食べる白菜でホウ素欠乏を食らうとゴワゴワで食べられないレベルのものがたくさんできてしまい途方に暮れる。

それを予防する意味もあって、牡蠣殻石灰やその他の有機肥料を入れるというのは家庭菜園レベルでも農家でもよくあるのだ。さらに言えば有機肥料に含まれる微量要素は植物の生育のどのステージにおいてもプラスに作用し、化学肥料のみで作った野菜より美味しいというケースが出てくる。大概の有機肥料配合の商品はこのあたりの特長を「美味しく育つ」とアピールすることが多いだろう。


有機肥料の良いところその3は、土壌改良効果が多少期待できること。

日本各地にたくさんの畑がありその畑の土は様々な性質をもつ。その中には野菜にとって良い性質もあるし良くない性質ももちろんある。

日本の土で野菜にとって良くない性質と言えば、なんと言っても水はけの悪さだろう。少し雨が降ると畑にすぐ水たまりができるような場所は、水はけが悪いと言える。水はけが悪いと根っこが呼吸できずに根っこから腐ったり、湿気を嫌う植物はそもそも育ちが大変悪くなったりする。


これに有機肥料を使うのは理にかなっていると思う。有機肥料には肥料成分と別に、植物や動物の身体だった組織が入る。例えば油かすなどは菜種の植物組織が肥料の中に残っている。これが土の中に徐々に入っていくと、カチカチに固まっていた土の中に菜種かすの植物組織が入っていき、適度なすき間を土にもたらして水はけをよくしてくれるのだ。これがつまり、上で書いた土壌改良効果というやつだ。


そもそも価格の安い有機肥料は、化学肥料にはない良さもたくさん持っている。この良さをうまく活かしながらいろいろなものを育ててみてほしい。


一度おさらいしよう。


有機肥料とは?→植物や動物を由来とする肥料のこと。


有機肥料の良いところ→土に優しい、微量要素を含んでいて野菜の微量要素欠乏を防ぎ味を良くする、肥料としてまくと土の状態そのものを良くすることもできる。


以下、代表的な有機肥料を性質とあわせて列挙する。

①鶏糞:暇庭がいちばん好んで使う有機肥料。窒素とリン酸が多め。臭いは強いので都市部では好まれないのが難点。


②牛糞肥料:ウシの排泄物と牛舎の敷き藁をまとめてよく発酵させたもの。土壌改良効果が高い。あまり肥料としての効果は強くなく、カリウムが多め。土が硬くて困ったとか、そもそも畑の土が浅くてすぐ下から石の層になるという人におすすめ。プランターで使うことはまずない。


③魚粉:基本的には鰯を乾燥させて使いやすいよう機械で粉砕したもの。リン酸を多く含み微量要素が効きやすい。果樹栽培などによく使われる。


④油かす:菜種油を搾った後に出る残渣(ざんさ)(搾りかす)。窒素が多く葉物野菜に向く。慌てて土の中に混ぜると不具合が出やすいので油かすは混ぜないで土の表面にまくことを心がけよう。


いかがだっただろうか。わりと有機肥料というのは家庭菜園の園主には人気の肥料だと思う。美味しい作物を目指して、栽培にうまく取り入れてみて欲しい。

有機肥料に関しては本当にたくさんの立場の人が様々なことを言うため正解が分からないが、暇庭の経験から確かに言えることを述べさせていただいた。また質問等あれば感想欄にてお待ちしております。

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