小説家 2日目
今日は、2025年7月11日。朝の光が再び液晶を白く染めた。机の上には、新しい原稿用紙ファイルが開かれている。カーソルは相変わらず鼓動のように点滅していた。冷房の効いた部屋で、手のひらに汗がにじむ。昨日、私は初めて小説を完成させた。あの『き』が世界の始まりだった。その重みが、今日は倍増していた。二つ目を書かなければいけない。
アイデアノートをめくる。走り書きの断片は色褪せている。指がキーボードに触れるも、震えて動かない。呼吸を整える。吸って、吐いて。心臓の音が耳に響く。
突然、閃いた。
「今日の日付を書こう。」
実際に、文字を打ち始めた。
『今日は、2025年7月11日。』
文字が流れ出す。自己を喰らう物語——昨日の汗、震え、あの文字の孤独。書くたびに自分が溶解する気がした。300字を超えた頃、喉が渇く。
窓の外から蝉の声が押し寄せた。その熱気に背中を押され、最後の一打を叩いた。
『2025年7月11日、二つ目の物語が、ここに生まれた。』
保存ボタンを押す。画面には完成の文字。だが、達成感は儚い。カーソルがまた点滅し始めた。明日への鼓動だ。2025年7月11日、二つ目の物語が、ここに生まれた。