表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
6/37

局長現る





 薬を作ってカウンターで寛ぐ、ザクロの通常ルーティンである。客は相変わらずまばらで、時々近所の人がやってくるのみ。

 そんな日常を何よりも気に入っている店主は、『のどかだなぁ〜』なんて心の中で呟いていたりいなかったり。




 カラン



 ドアベルが来客を告げる。入ってきたのは金髪の美丈夫だった。貴族感漂う男性に、思わずだらけ切っていた背筋が伸びる。


「いらっしゃいませ」


 当たり障りない挨拶をし、笑顔で男性を迎える。すると、男性は人当たりの良さそうな笑みを見せながら、ザクロに話し掛けてきた。


「失礼致します。こちらはザクロ・スプルースさんの店舗でお間違い無いでしょうか?」

「はい、わたしがスプルースですが?」

「あぁ、貴方が! お会いできて光栄です!」



 男性は興奮した様子でザクロの手を取ると、力強く握手をしてくる。余りの勢いに目が点になってしまい、しばし時が止まっていたが、ハッとして慌てて男性に聞き返した。


「えーっと、あの……どちら様でしょうか?」


 ザクロの声に男性も我に返ったのか、パッと手を放すと、入店時の時のような雰囲気を取り戻す。



「申し訳ありません、少々興奮してしまって。わたしは迷宮ギルド所属、素材管理局局長、シトロン・シャルトルーズと申します。突然の訪問で申し訳ないのですが、少々お話しするお時間を頂けないでしょうか?」



 ギルド職員だと名乗るシトロンに、思わず訝しむ目を向けてしまう。『何故ギルドが?』という疑問が頭の中を駆け巡る。しかも相手は素材管理局の局長だという。ザクロ自身、違法な採取は行なっていないし、迷宮都市に来てからギルドでクエストを受けたのも、更新規定ギリギリの年に1回ずつだ。


 ほぼ閑古鳥が鳴いているようなこの店に時間などたっぷりあるが、果たしてこの話は聞いていいものか。




 いや、聞くべきではないと本能が告げている。




 少しの逡巡の後、ザクロの返答は決まった。



「……申し訳ありま」

「店を閉める時間は、こちらの方で休業補償させて頂きますのでご安心ください。いやぁ、丁度どなたもお客様がいらっしゃらなくて良かった!ギルドの応接室もきちんと確保してきましたので、宜しくお願いしますね」



 ……イエス以外の返答は求められていなかったようだ。というか、『お時間を頂けないでしょうか?』の言葉は必要なかったのではないか?!




 完全にシトロンのペースに飲まれたこの空間は、果たしてどこなのか。自身の憩いの場ではなかったか。

 なぜ今日は素材採取に行かなかったのだろう、あぁ日用品の買い出してもよかったか、など今更な逃げ道を考えてしまう。後悔先に立たず、とはこのことか。




「さぁ、それでは行きましょうか!スプルースさん!!」



 かくして自分の意思はどこへやら。笑顔のシトロンに連行もとい連れられて、ギルドへと向かうことになったのであった。




キャラクターの容貌説明って難しいですね……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ