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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
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育った環境




 店の奥の工房兼自宅に戻り、椅子にかけると力が抜けると同時にため息が出る。セキから聞いた話が本当だとすると、確かに迷宮都市や冒険者、ギルドにとっては死活問題だ。



 薬師は重要な職業ではあるが、世間的に人気はない。理由として、各種素材の知識や識別はもちろん、薬品作成の知識、技術など、様々な事を覚えなくてはいけない。それは医者も同じではあるのだが、得られる収入が全く違う。医者は薬や器具を用いて治療をする。その前段階の薬を作るのが薬師だ。そのため、薬の値段の方が安くなるのは必然である。必要な勉強量と得られる収入が比例しない薬師は、常に成り手不足なのだ。これが、薬師一本で仕事をしない人が多い理由である。



 さらに、冒険者が必要とするポーションは中級以上の薬師でないと作ることができない。薬師のランクは、薬師協会の試験をもって決まる。下級は基礎知識と傷薬の作成、中級は応用知識と下級ポーションの作成、上級は中級または上級ポーションの作成と特効ポーション1種の作成が必要となる。

 受験級に決まりはないが、上級をいきなり受ける人間はまずいない。ザクロも下級から地道に受験した。




 まぁ……下級から上級の合格までは2ヶ月程だったのだが……。




 これには彼の育った環境が圧倒的に影響している。


 母が薬師であったため、日頃から薬草に囲まれた生活だった。工房に入ることを禁止されたことはなく、幼い頃から母の横で毎日のように作成の様子を見ていた。母は日常的に薬草の名前や効能を問題にして、遊びの一種としてザクロに投げ掛けた。

 「わからない」と言うと、子ども用の薬草辞典を渡してきて、自分で答えを探すように促す。答えを見つけて伝えると、頭を撫でて沢山褒めてくれた。そのやり取りが楽しくて、薬草図鑑はボロボロになるまで読み込み、いつの間にか空で言える程になっていた。子どもの興味と記憶力は恐ろしいものである。



 家の裏手には小さな薬草園があり、数種の薬草を育てていた。足りない分は近くの山に散歩がてら採取に行き、そこで実物の見分け方や採取方法などを実地で学んだ。

 10歳を過ぎると冒険者ギルドに登録させられ、クエストとして薬草採取を行うこととなった。常に父か母が同行していたため、命の危険がなかったのも大きかっただろう。特段、嫌だとも思わず、お小遣いが貰えるとウキウキしながら行ったものだ。


 母はとにかく「百聞は一見にしかず」という考えの持ち主であったため、薬草だけでなくモンスター討伐にも連れて行かれた。

 母はCランク、父に至ってはAランクの冒険者であったため、それはそれは簡単に「じゃ、行くか」と軽いノリで連れて行かれたが、戦闘訓練なんてものは何一つしていないザクロにとって、モンスター討伐は地獄である。

 といっても、素材の見極め方を伝えたい父母は、戦いに関しては自分達が請け負えばいいというスタンスで、討伐後のモンスターの素材採取がメインであった。




 結果、モンスターと戦わずとも素材を手に入れてギルドに報告、という流れを繰り返したことにより、ザクロの冒険者ランクはCまであがったのであった。



 そんなこんながありつつ、16歳で薬師になり、18歳で「世界は広いぞ、息子よ!」と独り立ちと言えば聞こえはいいが、家から叩き出された。

 まぁ、行き先の面倒まで見てくれたのだ。大いに愛されているだろう。


 金は実家暮らしの時にこなしたクエストの報酬が丸々貯金されていたため、細々と暮らしていけば大して働かなくても生きていける。何より田舎でのんびり暮らしていたのだ。忙しない日々はごめんである。



「ま、誰かが作るでしょ」




 果たして誰が作るのか…………。




本文よりもタイトルに困ってます……。普通に数字にすればよかった……。

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