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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
32/37

雇用契約




 口約束の契約もなんだから、ということで、そのままセレスティンを伴ってアネモネに戻ってきた。セレスティンにとっては元職場なので、中に入ると「空っぽ……」と以前の光景との違いに驚いているようだった。



 工房に通して、契約書を作っていく。人を雇う経験は、先日のドラバイトから2人目だ。しかし、ドラバイトはギルドを通しての契約だったため、自身で契約書を作るのは初めてだった。

 こんなこともあろうかと、ギルドに寄った時、シトロンに契約書のひな形を貰っていたのだった。このまま1人で経営するのは自殺行為だと互いに判断し、出来るだけ早く人を見つけなくてはと考えていた。



 まさかこんなに早く見つかるなんて思っていなかったが。



 そんなこともあり、出番が来た雇用契約書。いざ書こうとしたところで、手が止まる。





 そういえば、何も考えていなかった………。




 営業時間も、仕事内容も、給料も。もう丸っと全てだ。あまりの忙しさに、頭が考えることを放棄していた。

 前の店舗は1人で運営していたり、客が日中くらいしか来なかったりしたため、営業時間はその時次第だったし、給料を払う相手なんていなかった。仕事も全部、自分のその時の気分で動いていたので、リズムなんてものは無いに等しい。



「あの、わたし……何か…してしまいましたか?」


 ザクロの手が止まったことで、不安に思ったのだろう。セレスティンが不安気にこちらを見ている。



 これは言っていいやつか? いや駄目だろう。だが、しかし………。



 黙れば黙るほど、空気は重苦しくなる一方だ。背に腹は変えられない。ここは、隠さず話してしまおう。

 すでに、ライラ魔道具店で自身の弱みを見せている。今さら格好つけようとしたところで、見せかけだけなのは丸わかりだ。



「えーっとね、セレンちゃん。とっても申し訳ないことを言うんだけど……」

「ま、待ってください! わたし、本当に薬師になりたいんです!! そのためなら、多少の危険も耐えられます!」





「前の店の契約書、見せてくれる?」



「へ?」





 セレスティンは一度家に帰り、契約書を持って再度アネモネにやってきた。

 いくつも店を持つ商会の契約書ということもあって、ギルドでもらった契約書のひな形に形式がよく似ている。


「いやぁ〜、ごめんね。おれ、人雇ったことなくて」

「いえ。やっぱりやめる、って言われるのかと思ったので、安心しました」


 セレスティンは口元に手を当てて、クスクスと笑っている。その仕草がなんとも似合っていて、笑われているのに『お嬢様みたいだなぁ』なんて思ってしまう。あぁ、そういえば実家では結婚の話が出ていたというのだから、本当にお嬢様なのかもしれない。



 営業時間は、2人しかいないこともあって、13時〜17時とした。短時間ではあるが、冒険者は朝から潜る者が多いので、この時間に準備のために買い物に出る人が多いのだとセレスティンが教えてくれた。その分、午前中は薬を作る時間に充てて、余裕が持てるようにした。セレスティンに薬の販売経験があるため、素材が足りなくなれば、ザクロが素材を採りに行っている間、少しの時間であれば1人で店番することも出来るのがありがたい。



 給料に関しては、前は見習いということもあって大銀貨4枚だったらしい。世間の平均月給が金貨1枚と大銀貨3枚なので、相当カツカツな生活だったのではないかと思う。聞くと、ライラ魔道具店でも時折働いていたらしい。

 給料は、平均金額を出すことで合意した。最初はそんなにもらえないと言われたが、先行投資ということで納得してもらった。セレスティンが育てば、ザクロの負担も軽くなる。



 働き始める時期はいつでも大丈夫とのことなので、早速明日から来てもらうことにする。今は月末なので、準備とを含めてオープンは来月中旬頃を予定し、それまでに店の内装や薬の作成に取り組むこととなった。




オープンまで頑張ります!(オープン後も頑張れ)

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