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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
26/37

さあ、お仕事です




 とりあえず材料が揃ったということで、工房はついにポーション製作工場として稼働することとなった。と言っても、ザクロ1人なので「工場」なんて大それたものでは無いのだが。



 まずは中級ポーションから作っていく。先日の迷宮探索で手に入れたホタルダケを適当な大きさに切り、浄化水を入れたポーション鍋で煮込んでいく。その際、ゆっくりと低量の魔力を流し込むことでミズダケが分解されて溶け込んでいく。

 その後にいくつか乾燥薬草の粉末を入れて、光魔法『治癒』をかける。



 これが、ポーション作成で外せない部分の一つだ。

 一般向けに売られている薬は徐々に治していくので、素材や患者本人の自己再生能力で完治へ向かう。それに対して、ポーションはすぐさまその効果を求められているので、待っている時間はない。そこで必要なのが、そこに込められている魔法なのだ。



 薬師は、正直いえば医師になることもできる。それは知識だけでなく、習得必須魔法が被っていることも要因の一つなのだ。だからこそ、収入、待遇ともに良い医師に流れていってしまう。薬師の成り手不足は、そういった流れがある。



 最後に人喰い蔓の蕾を適量入れて、魔力が逃げないように蓋をして1時間ほど煮込めば完成だ。レシピ通り作ればいい、と言われればその通りなのだが、いかんせん、その素材に含まれた魔力量も考慮して流し込む魔力や素材量を調節しなくてはいけない。



 そこが難しいところでもあり、ザクロにとっては楽しいところでもある。



 煮込んでいるうちに、ポーション容器にラベルを貼っていく。これは、誰が製作者なのかを判別するためのものである。

 ポーションはすぐさま回復を促すという魔法役であるが、見方を変えれば劇薬だ。そのため、何かあった時のために『誰が作ったのか』『いつ作ったのか』というのは、販売する上で表示義務がある。



 なんだったら、それを守らなければ犯罪になるということだ。



 もちろん、中級薬師以上でなければ作成許可は出ていないので、低級薬師または無資格者が作っても犯罪になる。



 ラベルは、そのままラベルに名前を書いてもいいが、シンボルなどがあれば、それを刻印してもいい。

 ザクロは実家でのポーション作成にあたって、シンボルを作るように言われた。


 それが『アネモネの花』だ。


 なにしようか考える中で、様々な本を読んでいるとアネモネの花言葉『真実』が目に入り、それに惹かれた。なぜかと言われたら返答に詰まるところではあるのだが、その時の自分にはそれが光って見えたのだろう。今でもその決定を後悔していないし、気に入っている。




 ラベル貼りや次の作成準備をしていると、あっという間に1時間が経過した。


 今回作ったのは10本分だ。本当はもう少し作れる容器なのだが、急に量を増やして失敗しても嫌だったので、通常の倍で留めておいた。



 ……それでも10本……。



 注文本数を思うと、ゴールが全く見えない。しかも、今作っているのは中級ポーションなので、さらに上級ポーション作成が待っている。当たり前だが、上級ポーションの方が流す魔力も上がるので、作成の手間が増えるのだ。



「……考えんの、やめよ………」



 考えれば考えるほど、虚しさが募ってくる。納品まで2週間を切っている。単純に時間を考えれば間に合うが、自身の魔力量を考慮すればギリギリだ。


 今はとにかく、目の前のことから片付けていこうと気持ちを切り替え、ザクロは無心で手を動かしていった。




アネモネには、色々な花言葉がありますね。ザクロの気持ちは、末畠の気持ちでもあったりして。なんだが、「いいな〜」って思ったので持ってきたのでした。

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