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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
21/37

いざ迷宮へ




 ドラバイトは、思った以上に真面目な人間だった。護衛という依頼ということで、相手の人間性や自分との相性を知るために来たとのことだった。それだけでなく、自分が受けても問題ないか、とまで聞かれた。依頼を出したのはこちらなので、基本的に受ける側に選択肢があるのだが、そこまで気を遣ってくれる冒険者は初めて見た。

 そんな人間性も相まって、ザクロはドラバイトに依頼を出すことに決めた。日程に関しても、予定通り明日で問題ないとのことで、朝の8時にギルド前で落ち合うこととなった。冒険から戻ったばかりで大丈夫かと声を掛けたが、そちらの依頼は休憩を兼ねた低層階での素材採取だったそうで、夜に宿で体を休めれば十分とのことだった。

 ドラバイトはこのままギルドに寄り、クエストを受注してから帰路に着くとのことだったので、この日はその場で別れた。





 翌朝、ザクロは簡単に朝食を済ませると、いつもの採取服に着替えた。その上から魔物隠しの香を振り掛け、自衛の準備をする。戦闘が出来ないザクロに父母が教えたことの一つが『身の守り方』であった。魔獣の素材が欲しい時、どうしたって出会ってしまう。というか、自ら出会いに行っているのだ。その時に、戦闘する人にとって困るのが、足手纏いがいることだ。ザクロはまさにそれなので、そのために魔物隠しの香を使う。これをかけると、一定時間、匂いや存在が薄くなり、ほとんどの魔獣からは存在が認識されないという優れ物だ。

 開発したのは母で、幼いザクロを連れて行くのに必要になったため作ったそうだ。そのおかげで、薬師協会の理事になっているのだが。



 準備を整えてギルドに着くと、すでにドラバイトが待っていた。


「すみません!お待たせしてしまいましたか?」

「いや、大して待っていない」


 返答にほっと息をつくザクロを見て、ドラバイトは眉を顰めた。


「それにしても……そんな軽装で行くのか?」


 確かに、迷宮に潜るにはあまりに軽装過ぎる。B級冒険者だというドラバイトは、籠手や胸当てなどの防具や剣などの武装をしているのに対し、ザクロが持っているのはいつもの採取用マジックバッグとお飾り程度の短剣だけだ。事前に戦闘が出来ないことは伝えているため、ドラバイトも承知の上で受けてくれているが、この姿を見て不安が募ったのだろう。


「あ、魔物隠しの香を纏っていますから、今回行くところなら先頭の邪魔にはならないですので!」

「魔物隠しの香?」


 ドラバイトに魔物隠しの香について説明すると、半信半疑ではあるが一応納得してくれた。

 今回狙うのは、中級ポーション以上に必要な『人喰い蔓の蕾』と『ホタルダケ』、上級ポーションに必要な『ウィンドホークの羽根』と『ミストリーフ』だ。その他にも欲しい素材はあるが、欲張らないことも生き残るためには必要なことだ。取れればいいな、くらいに思っておこう。





 2人で迷宮に潜っていき、ドラバイトの案内でできるだけ魔物との遭遇が少ない道を行く。道中、使えそうな素材を摘みながら、目的の一つである人喰い蔓の縄張りに着いた。人喰いとはいうものの、魔物討伐の初級に割り当てられるような魔物である。真っ向から勝負してもいいのだが、安眠香を焚いたり、根元に酒を撒いたりして眠らせる方が労力は少なくて済む。もちろん2人も安眠香を焚いて眠らせる戦法に出た。安眠香は効くまでに1時間ほどかかるので、その間にホタルダケを採取していく。ホタルダケに関しては、木の根本によく生えているので特に群生地というものはない。途中で『ミズダケ』と『ヒャクヨウソウ』も見つけられたのはラッキーだ。2つとも万能な素材なのであるほど嬉しい。


 時間が経って戻ってくると、しっかり安眠香が効いた人喰い蔓がいた。ドラバイトが核を斬り、ザクロが蕾を鑑定して摘んでいく。比較的、若い人喰い蔓だったようだ。全体的に小さめのため、求めている量ギリギリの収穫だった。



「足りるか?」

「はい。とりあえずは大丈夫かと」



 あまり話さないながらも、時折こちらを気にして声を掛けてくれる。ドラバイトに頼んで良かったと改めて思いながら、2人で迷宮を進んでいった。




ドラバイトの名前を、これでもかと間違えまくって打ち直しています……ごめんね、ドラバイト。

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