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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
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新発明




 目の下にくまを作ったロードは怒りもあってか、さらに目が座っており、本当に怖かった。すぐにマラヤが止めに入ってくれたおかげで落ち着きはしたものの、これからは無茶な注文は絶対にしないと心に固く誓った。


「悪いな!集中しすぎて気付かなかったんだよ!」


 先ほどの怒りはなく、顔は疲れているものの晴れやかな笑顔で話を進めるロード。その頭には大きなタンコブがくっついている。怒り狂ったロードを止める際、マラヤが取った方法がフライパンだった。どう使ったのかは察してほしい。


 なぜそこにフライパン?という疑問は、ザクロも抱いたが、聞いてはダメな気がした。



「それでな、坊主!俺の考えは間違ってなかったんだよ!!」

「えーっと、どんなお考えで?」

「なーんにもわかんないんだけど」


 自分の世界に入り込んでいるほど、周りは見えないものだ。自分の考えは周りも理解しているという思考になりやすい。目をキラキラと子どものように輝かせて語り出すロードと、なんのことやらと言った表情のザクロとマラヤの対比は側から見ると面白いだろう。


「合金の話だよ!特効ポーションを作るなら器が強くなくちゃいけねぇ。だからポーション用の魔道具ってのは大きく出来ねぇのよ。坊主が注文した大きさは、ポーション用魔道具としては規格外だ。だから俺は最初難しいって言ったんだよ」


 確かに、母が使っていたポーション用の魔道具は両手の平くらいのサイズだった。その大きさでは注文を賄えないと考えての発注だったが、魔道具の小ささの理由をきちんと知らなかった自分がちょっと、いやかなり恥ずかしい。


「でよ!マラヤが『合金はどうか』って話振ってきて、俺は最初無理だと思ったわけよ。でもよく考えてみると試す価値はあると思ってな!それでこの3日、工房で試行錯誤を繰り返してたってわけだ」

「あれま、あたし一役買ってたんだー。それで? どんなのが出来たの?」

「フフフ!聞いて驚け!!これは発明だぞ!!」


 ロードは、よくぞ聞いてくれました!とばかりに工房にすっ飛んでいくと、何やら小さな器を持って戻ってきた。見た目は銀色のボウルのようなもの。普通に料理器具の一つとして売られていてもわからない。

 これが何か?というのが顔に出ていたのだろう。ロードは「わかってねぇなぁ」と言いながら、得意げに話し始めた。


「いいか? これはな、クロモリブデン鋼に魔砂を練り込んだものだ。魔石はそこまで砕けねぇし、他の鉱石も同じだ。だが、魔砂は砂だ。陶器を作るのと同じ考えで粘土の代わりに魔砂を使ったんだよ」


 「ま、これ以上は企業秘密だがな」と話すロードに対して、思わずザクロは拍手をしてしまう。魔砂というのは、迷宮の砂漠地帯にある砂のことである。暑さの上に足元を取ることで、邪魔な存在として冒険者には見られている。まさかそんなものに白羽の矢が立つとは。それ以前に、よく魔砂なんてものを持っていたなと思う。


「坊主、正直言って魔砂を使っても寸胴鍋サイズは無理だ。一回使って、ハイおしまいってなもんしか作れん。だが、通常サイズの2倍くらいの大きさなら毎日使っても3年は保つ。これは保証する。どうだ?」


 そこまでやってもらったのだ、ザクロに否はない。


「お願いします!!」

「よっしゃ!あと4日で作り上げるぞ!! マラヤ、店の方は任せる!」

「はいはーい。ほとんど任せっぱなしでしょぉ? よかったねぇ、あたしがいて」


 こうして職人の発明により、ザクロはポーション用魔道具を手に入れることとなるのだった。




魔砂まさと読みます。これは、もうどうにもならなくて考えました。他の名称はほとんど実物のものから持ってきています。ちょっと設定に生かしている部分はありますが、そこら辺の知識はふんわりですので、ちゃんとした知識が欲しい方は教科書を読みましょう(笑)

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