第二の難題
あの後、ロードは思いついたことを実践するべく、早々に工房に引き上げていった。「3日後に来い」という言葉を残して。
そのため、デザインについてはロードに任せることをマラヤに告げ、ザクロは家路に着いた。
魔道具製作に漕ぎ着けはしたが、まだ課題は多い。あの山となった注文書の総数確認や新しい工房への早期移転など、思い出すだけで頭が痛い。
また、魔道具同様に必要不可欠な素材採集についても手付かずのままだ。明日は朝一でギルドに向かい、護衛依頼を出さなくては。頼むから話の伝わる人に当たってほしい。
翌朝、予定通りギルドへ向かい、クエスト依頼に『素材採取時の護衛、魔獣討伐』と記入し、受付に提出する。受付担当者は、申請者欄の名前を見ると「少々お待ちください」と丁寧にお辞儀をして後ろに下がっていく。すると、代わりに出てきたのはシトロンだった。
「スプルースさん、おはようございます。護衛依頼の件ですね」
応接室での話を覚えていたらしい。手元の書類をザクロに見えやすいようにカウンターに置くと、話を進めた。
「護衛が必要なようでしたので、迷宮ギルドに登録しており、かつ常時いるB級以上の冒険者をピックアップしておきました。クエスト成功率や職員が応対した時の印象も込みで厳選しておりますので、一定の人間性は保証しますよ」
なんと、こちらが頼む前にあらかじめ人選してくれていたらしい。
「ありがとうございます!変な人が受けてしまったらどうしようかと、ちょっと不安だったんですよねぇ」
「ですので、こちらの依頼は掲示はせず、個別に声を掛けてみようかと思います。金額は前回お話しした1日銀貨2枚でよろしいですか?」
「はい。後、できれば3日後くらいに出発を希望しているので、それに間に合う方がいいんですが」
すると、シトロンは少し難しい顔をした。
「うーん、3日後ですか……丁度皆さん出払っていまして、いらっしゃるのは……」
やはり急には難しいか。この間の応接室でのやり取りの時に、依頼内容についても話しておくんだった。まぁ、あの時のザクロにはそこまで頭が回るほど余裕があったかと聞かれると難しいものがあるが。
半ば諦めていると、シトロン「あ」と声を上げた。
「1人だけ明日帰ってくる方がいます。とりあえず、その方に話をしてみましょう。結果は分かり次第、お伝えしますので」
「はい、宜しくお願いします」
他の冒険者の予定も一応聞いてみると、今週いっぱいは潜ってしまっていて帰ってこないという。上級冒険者になると深いところまで潜るため、どうしても滞在日数が伸びるのだ。明日帰ってくるという冒険者が受けてくれなくなると、だいぶ苦しい。どうか了承してくれることを願うばかりだ。そして、話のできる人であってくれ。頼む!!
ギルドを出ると、まだまだ日は高い。先ほど新店舗の鍵も一緒に受け取ったので、庭の準備をしておくのもいいだろう。そのためには、山に入って苗を少々分けてもらわねば。それから、追加でいくつか必要な素材も採取したい。
ザクロは一旦家路に着き、山に入る様相に着替えると、今自分にできることを進めていくことにした。
1話につき、約1200字で書いていますので、文章量少なくない?と思われるのはそのせいです。最初の方をそれで書いてしまったので、今更文章量を増やせなくなってしまいました(汗)