作戦会議
『ロードを煽って承諾を得る』
この作戦、ザクロでは考え付かなかった。
では、何故考えついたのか?
ロードの事を知り尽くした人物が、参謀として加わったからである。
マラヤだ。
ロードが帰ってくるまでの時間、お茶を飲みながら、これまでの経緯と今後の想像し得る苦労についてマラヤに愚痴をこぼしていた。ロードに魔道具作成を頼みたいということも。
それを聞いたマラヤは、同情しつつも難しい顔をした。
「うーん、どうでしょう? 期限が短いし、ザクロさんが求めてるのって、そこら辺にあるような魔道具じゃないでしょ?」
「まぁ、オヤジさんの腕あってこそとは思ってるんだけど……」
「じゃあ、普通に頼んでも父さん頷かないと思います。『そんなもん、受けられるかぁ!!』って、怒鳴っておしまいですよ」
「えぇ……じゃあ、おれ……どうすれば……」
ザクロはカウンターに頭がめり込むのでは、という程に気落ちし、初っ端から躓いたことに絶望する。
「……。ん〜、でも……方法が無いことも…無いかな?」
「え?!!」
マラヤの言葉に、ガバッと音が鳴る勢いで起き上がる。
「道具街の反対側にね、ケレル道具店ってあるんですけど知ってます?」
「いや、反対方面はあんまり行かないから……」
「ま、そのケレル道具店の店長さんとウチの父さん、同級生なんですよ」
へぇ、同級生で同じ職人、同じ街に店を持つかぁ。男同士の熱い友情なんかが生まれたりするのかなぁ、など想像すると良いものだ。
「で、すんごく仲が悪いんですよ」
あれ? 思ってたのと真逆だ。
「お互いバッチバチで、顔を合わせようもんなら嫌味合戦みたいな感じなんです。いい大人が呆れちゃいますよ」
娘にまで呆れられるほどとは、相当幼稚なやり取りなんだろう。日頃のロードを思うと、想像も出来ないが。しかし、今の問題はそこではない。
「……それが、説得の方法に何の関係が?」
そう、今はどうやって魔道具を期限内に作ってもらえるか、そもそも仕事を受けてもらえるかが問題である。職人同士のプライベートを知ったところで、ザクロに入り込めるものでもない。
「ザクロさん、にぶ〜い! バチバチだって言ったじゃないですかぁ。お互い意識しまくり!これがミソなんですよ!」
マラヤは、パチンとウィンクをして得意げに言い放つ。
「ケレル道具店の謳い文句は『速さが命』なんです。もちろん、父さんがライバル視するくらいだから、腕は良いと思います。でも、早く作るってことはミスもある訳です。父さんも本当は同じくらいのスピードで作ってるんですけど、装飾とかにこだわり出しちゃったり、関係ないことに興味が移っちゃったりして……。こんなことお客さんのザクロさんに言うのもアレなんですけど、それがウチの店の納品期限がちょっと長い理由なんですよ」
『細部の確認もちゃんとしてるんで、故障が少ないのも売りですからね!』なんて後付けフォローを入れつつ、最後は苦笑いを浮かべながら、ロードの秘密を教えてくれた。今の話が本当なら、ザクロの魔道具調達は可能なのではないか。そんな期待がムクムクと湧き上がる。
「それで、父さんに断られたら、『ケレル道具店で注文する』って言うんです。ぜっったいに火が着くんで、成功間違いなし!!」
こうして、優秀な参謀ことマラヤによって作戦が立てられたのであった。
マラヤにいっぱい説明してもらいました。