表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
13/37

ライラ魔道具店




 迷宮都市の道具街は、人通りは少ないものの、人々にとってなくてはならない場所だ。小さなものから大きな物まで、一般向けから職人向けまで様々な物が売られている。

 例えば調理器具にしても、鍋やおたまといった物から冷蔵庫などの大型器具まで、この道具街に来れば揃うのだ。



 道具街を足早に進んでいたザクロは、ある店の前でようやく足を止める。そして、慣れた様子で中に入っていった。


「どーも。ザクロですけど、オヤジさんいるー?」


 入ると同時に声を掛けると、中から返事が返ってくる。


「いらっしゃーい! でも、ごめんなさい!父さん今出てるんですよ」



 現れたのは、薄紫色の髪を一つにくくった10代くらいの少女だった。彼女はマラヤ・ライラック。この【ライラ魔道具店】の看板娘である。


「え、まじで? ちょっと急ぎの要件なんだよねぇ……」

「予定では、あと30分くらいで帰ってくるので待ってます? いいお茶あるんですよ〜」

「んじゃあ、お言葉に甘えて」



 年が近いこともあってか、マラヤとの会話は自然と崩れた口調になる。マラヤ自身も看板娘ということもあり、コミュニケーション能力が高く、人の懐に入るのが上手いのだ。


 それに、この店を知るキッカケになったのも、何を隠そうマラヤとの出会いである。





 5年前、なんとか住む場所は見つけたものの、中はすっからかんだったため、基本的な魔道具、いわゆるコンロや冷蔵庫といった大型器具が無かった。そのため、道具街をブラブラしながらガラス越しに店の中を覗いていると、マラヤから声を掛けられたのだ。


『お兄さん、良い魔道具ありますよ』


 最初はいかがわしい店の釣りかと思い、初めてのことにドギマギしてしまった。その様子を見て、マラヤは大笑いしていたが。


 誤解が解けて素直についていくと、なんとも年季の入った魔道具店があった。彼女の父が店主をしており、彼女曰く『魔道具ならライラ魔道具店』と、この迷宮都市でも有名らしい。

 そこで、知り合ったのも何かの縁、と諸々お願いして作ってもらったのが始まりだった。





「このお茶、王都で人気なんですって! この間来たお客さんが旅行土産にくれたんです!」

「へぇ〜、癖もなくて飲みやすい。こっちでも売ればいいのにね」

「なんか、産地がどうの…とか言ってたんですよねぇ」



 お茶を飲みながら、まったりムードで店主の帰りを待っていると、ガチャってと裏口から音がした。


「帰ったぞー。……ん? ザクロの坊主じゃねぇか。なんで茶ぁしばいてんだ」

「父さんおかえりなさーい!」


 入ってきたのは、ライラ魔道具店の店主兼職人であるロード・ライラック、その人である。


 帰ってきて目に入ったのが、可愛い娘と若い男が和やかにお茶を飲んでいる場面というのは、普通なら怒りそうなものだが、良いのか悪いのかザクロはそういった目で見られていないため、いつもの光景とばかりに受け入れられている。


「オヤジさん、お帰りなさい。ちょっと注文というかお願いというか……まぁ、注文には間違いないんだけど……」

「あ? なんだ、ハッキリとしねぇなぁ?」


 この後の展開が分かっている分、ザクロの歯切れも悪い。何てったって、これから話すのは職人なら誰しも眉を顰める内容だ。

 しかし、ここで尻込みしている暇もないのは事実。ザクロは腹を括った。



「1週間でポーション用の魔道具、作ってください!!」




やっと女の子が出てきました〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ