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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
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契約書




 部下職員に呼ばれ、ちょっと失礼しますね、と言ってシトロンが席を立つ。

 その間、ザクロは今後必要なものを頭の中でリストアップしていく。



 ポーションを作る上で必要なものは、素材だけではない。調剤器具も大切な道具だ。

 軟膏などの安価な薬と違い、ポーションは作り方も特殊なものが多い。そのため、ポーション用の魔道具が必要になってくるのだ。

 実家にいる時は当たり前にあったものなので、どういった器具があるのか、使い方はどうかといった情報については充分実地で経験済みである。


 そのため、魔道具店で器材の購入をしなくてはいけない。薬師が沢山いれば量産されているが、あいにく薬師は人材不足だ。これはオーダーメイドになるだろう。

 それから今までよりも基本素材が増える分、保管場所が足りるかどうか……。




 ザクロが今後の出費について頭を悩ませていると、シトロンが部下を引き連れ、応接室に戻ってくる。部下の手には大量の紙の束が見える。

 まさかと思い、シトロンに目をやるとニッコリと微笑み返された。


「こちら、冒険者達からのポーション購入希望申込書です」



 ポーション購入希望申込書とは何ぞや?やら、そんなに注文が既に入っているのか?!やら、疑問は尽きない。


「えーと、まず冒険者はポーション切れの可能性を既に知っているってことですか?」

「ええ。既に大通りの薬屋はポーション入荷の見込み無しと判断し、迷宮都市での運営を止めて撤退しています」

「撤退??!」



 店まで無くなっているとは驚きだ。そういえば、この間、うちの店にもポーションを探し求めてきた冒険者がいた。きっといつもの安さを求めての店巡りかと思ったが、そうではなかったらしい。


「そのため、今はギルドがポーションを臨時で販売しています。今ある在庫は、薬師協会に無理を言って融通して頂いた分です。こちらとしても、今後どの程度購入希望者がいるのか、いくつ必要なのか知るためにこのような様式を取りました」



 なるほど、確かに切迫した状況下にありながら、出来るだけの対応をしていてくれたようだ。しかし、この紙束を見てしまうと何ともやる気が削がれる。


 そんなザクロの気持ちを汲んでか、シトロンが一言付け足す。


「ちなみに、そちらの紙は希望者が1つ単位から書けるようになっていますので、そこまで膨大な量ではないですよ」



 ホッとするような、しないようなフォローだ。それぞれが1つずつの申込書だとしても、パッと見て100は下らない。それを採取込みやら魔道具準備やら込みで3週間……鬼か……。


 すると、その紙束の1番上からシトロンが紙を机に置く。


「スプルースさん、こちら契約書となります。2枚ありますので、こちらの2箇所にサインをお願いします」



 先程の専属云々のものか。まぁ、もう断ることはできない状況だし、書く以外に選択肢がない。

 諦めにも似た感情で紙にサインをしていく。書き終わると、シトロンがスッと回収していった。



「はい、確認致しました。専属契約書と店舗契約書、お二つとも受理致します」



「え?」




 店舗契約書ってなんだ??




なかなか応接室から出られない(笑)

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