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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
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覚悟を決めろ




 手にした辞令を何度読み直しても、書いてある文言に変化はない。何故こんなことになったのか。下級薬師と名乗ったからか、楽して生きようとしたからか。いや、どちらも要因になっている。


 現実から目を逸らしたい気持ちから、手元の用紙から目を上げると、目の前のシトロンと目が合う。そういえば、ギルド宛にも何やら送ったと書いてなかっただろうか。

 その考えを読んだかのように、シトロンは手元の封筒から用紙を取り出す。そしてにこやかにザクロに対して用紙を見せた。



『推薦状


迷宮都市の薬師不足の現状を鑑み、下記上級薬師をギルド専属常駐薬師として推薦致します。


上級薬師 ザクロ・スプルース


推薦者 薬師協会長 ヘリオドール・ジャスパーグ

    上級薬師 ベリル・スプルース     』



「ありがたいことに、我々の現状に心を寄せて頂きまして、スプルースさんを専属常駐薬師として置いてくださるとのことです。こちらとしては願ってもない申し出ですので、問題なく処理させて頂きます」



 ザクロの知らぬ間に、全てのことが終わっていたということだ。

 普通、本人に意向を聞くものではないのか?

 推薦状と辞令が同じタイミングで届くことのおかしさくらい、ザクロにだってわかる。どう考えても、正攻法ではザクロが頷かないことをわかっていて仕組んだに違いない。詐欺だと叫びたいが、協会長に母兼師匠では武が悪すぎる。


 約5年間、世情を気にせず自由気ままに生活したツケだろうか。手放したくはないが、ここまで外堀を固められては、もう逃げ道はない。

 ザクロは覚悟を決め、シトロンに向き直った。



「……推薦状、辞令ともに確認しました。専属常駐薬師の任、お受け致します……」



苦虫をどれだけ噛み潰したのかわからぬほど、ザクロの顔は歪んでいた。流石のシトロンも苦笑を漏らす。



「スプルースさんの心中お察しします。ですが、こちらとしても、そうは言っていられないのが現状でして。とりあえず、後3週間程度なら確保しているポーションでどうにか賄えると思います。その後は本当に何もないというのが正直なところです」

「それじゃあ、直近で必要になるのは3週間後ということでいいですか?」

「はい。それまでに素材採集もあるでしょうから。スプルースさん自身も迷宮に潜られるでしょうし、かなりタイトなスケジュールになってしまって申し訳ないのですが……」



 『迷宮に潜る』この一言に、ザクロは先程決めた覚悟を撤回したくなった。なんてったって自分は、採取や鑑定はできても戦闘はからっきしだ。だが、現状では自分が迷宮に潜らなくては材料を見極められない。


「あのぉ、採取の際に護衛を頼むとしたら、通常いくらくらい掛かるもんですかね?」

「そうですね。潜る先にもよるので一概には言えませんが、特殊素材になればなるほど深く潜らなくてはいけませんし、スプルースさんにはそう言ったポーション作成もお願いしたいところなので……Bランクで1日銀貨2枚でしょうか」



 まぁ、危険に晒してしまうのだから、仕方ない出費か。通常、下級ポーションが大銅貨1枚、中級ポーションが大銅貨3枚、上級ポーションが銀貨2枚だ。特効ポーションは、どれも大銀貨以上の値段が付く。通常ポーションは、冒険者の多い迷宮都市では他所に比べて手に入りやすい価格帯となっている。そのため、薬師も冒険者というのは当たり前だ。


 しかし、自分にはその能力は皆無であるため、まずは護衛役を探すことが1番にすることである。




価格帯の話は必要不可欠なんですが、どうしても物価決めが苦手で……。今の所、執筆が止まる原因1位に燦然と輝いております。

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