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薬屋【アネモネ】  作者: 末畠ふゆ
第一部
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薬屋【アネモネ】



 パンテラ王国。国土南部に王都を置き、山、海といった自然に恵まれ、概ね温暖な気候が特徴的だ。北部には迷宮があり、周囲の密林を含めてモンスターが生息している。その中には人間を害するモンスターもおり、共存が難しいところである。そのため、『剣士』『魔術師』といった冒険者達に対してギルドを通じて討伐依頼は常にあり、それに見合った報酬が得られる。危険度が高ければ高いほど、報酬や討伐時に得られるドロップ品も上がるため、冒険者といった職業の人気は衰えない。



 北部近くにあるセルペンティナは迷宮都市として栄えており、パンテラ第二の都市とも言われている。街の中央には常に冒険者の姿が見られ、ギルドは冒険者や依頼者の出入りが多い。大通りは冒険者を客とした宿屋や食堂、鍛冶屋や道具屋などが軒を連ねている。活気に満ち溢れ、日中は商店の、夜は飲み屋の呼び込みの声が高らかに響いている。



 そこから裏へニ、三本奥に入ると、先ほどまでの熱気は何処へやら。静かな路地へと行き着く。立ち並ぶのは民家や大通りの店の工房だ。なぜ工房がここにあるかというと、大通りに出店したい商人の想いを汲んだ結果、工房スペースまでは入り切らなかった為である。荷物の持ち運び等を考えれば面倒この上ないが、儲けと比較してみると大通りに出店する意義があるというものである。





 そんな路地裏に、青年ザクロ・スプルースは薬師として小さな店舗兼工房を構えている。首の後ろで一つに結んだ濃緑の髪に薄緑の瞳、肌は青白く健康とは程遠い。身長は170に届かないくらいで、顔立ちは男とも女ともつかない不思議な印象を与える。歳は20代前半といったところだろうか。椅子に腰掛け、カウンターに頬杖をついてあくびを噛み殺している。カウンター後ろの陳列棚には、切り傷や擦り傷用の軟膏、発熱や腹痛を抑えるための飲み薬が並べられている。冒険者の必需品であるポーション(回復薬)は見当たらない。そう、この店は迷宮都市に暮らす民間人を対象とした店舗なのである。



 カラン



 静かな店内にドアベルが響く。中年の恰幅のいい女性が柔らかな笑顔を称えて入店してきた。

「こんにちは薬屋さん。この間おおすすめしてくれたハンドクリーム、とっても良かったよ。おかげで手荒れが落ち着いて、水仕事が苦じゃなくなった」

「それは良かった。前回いらした時は、赤みが目立って痛々しかったですからね」

 ザクロは前回の来店時の事を思い出し、女性に声を掛ける。

「もう少しで無くなりそうでね。またお願いしたいんだよ」

「ありがとうございます。こちらの切り傷用の軟膏をおまけしておきますね」

「おや、いいのかい?」

「ええ、いつもご贔屓にしていただいていますから」

「そういう事なら、ありがたく受け取らせてもらおうかね」

 女性は来店時同様、笑顔で店を後にした。




 こうして薬屋【アネモネ】の日々は過ぎていく。決して客足は多くないが、『自由気ままに無理をせず』をモットーとした営業姿勢は、このゆったりとした時間の流れを体現している。




名前や名称を考えるのがとにかく苦手です。話を考えるよりも名前を考える方に時間が掛かるという残念さ……。

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