第八話 悪役令嬢参上!!
第八話 悪役令嬢参上!!
デスティニーを雇ってから一週間、次の候補者の面接が決まった。今度の子は何か訳ありらしい。
侯爵家のご令嬢で、イディオット王国の王子と婚約していたらしいが、態度が悪く周囲からの評判が原因で、婚約を一方的に破棄されてしまったらしい。
どうやら、それで家も出されてしまったらしく、身を傭兵にまで落としたのだとか。このパターンで行くと、王子に誤解されてしまってなのか、本当に素行が悪いのか微妙だ。
でも、アリスが選んだ人材だ、本当に素行が悪いパターンではないはずだ。とにかく面談をしてみてから判断をすればいい。
アリス、デスティニーと3人で、前回面接をした喫茶店に向かった。
「ショーヘイ、見えるかしら、今日の面接の子はあの子よ。」
「あの、銀髪で真っ直ぐな長い髪の毛の子かな。」
「そうそう、ちなみに瞳の色は赤よ。どう美形でしょ。」
「ほんとだ、めちゃめちゃ美形じゃん。アリスには負けるけど。」
「やーねー、ショーヘイったら。照れるじゃない。で、見た目は合格かしら?」
「うん、合格。後は中身だね、デスティニーはどう?」
「はい、私はどなたでも構わないのですが、あの方はあまりいい噂をお聞きしませんので、ちょっと。」
「へーそうなんだ。口は悪いって聞いているから、悪いのは口だけだといいね。」
「じゃ、彼女のプロフィールを紹介するわね。
えっと、名前は、チャリティー・ビーバー。17歳で、傭兵登録では回復士となっていたわ。
ま、回復は必要ないから、どうでも良いのだけれど。」
「回復魔法が得意なのか。確かにアリスがいれば、回復士は必要ないね。」
「まぁまぁ、とにかく会ってみましょ、二人とも行くわよ。」
そう言ってアリスは俺とデスティニーを引っ張って店に入った。
チャリティーは机に頬杖をついて、ぼーっと外を眺めていた。俺は彼女の向かいに座り、その横にアリス、デスティニーはチャリティーの横に座った。
「初めまして、僕は山田昭平と言います。」
チャリティーは変らず外を見たままで、こちらの方を見ない。もう一度声を掛けてみる。
「あの、チャリティーさんですよね。」
するとチャリティーは口を開いた。
「自分、誰に向かって口聞いてんねん。わしのこと知っとるんか?あぁん?」
チャリティーは首を傾け、下からこちらを睨み、舌打ちをしながら言った。
はい。完全に輩です、輩決定です。
「いや、面接に来られたチャリティーさんですよね?」
「せや、わしがチャリティーや、何や自分か、こんなしょーもない所に呼び出したんわ。えー根性しとんのぉ。」
「あの、面接なのですが。状況はご理解いただいていますか。」
「自分、わしのこと馬鹿にしとんのか?面接ぐらいわかるがな。」
「では、まず自己紹介をお願いします。」
「わしが、あの有名なチャリティーや。回復魔法使わせたらこの国で右に出るもんおらんちゅうて有名な、術者や。自分も知ってるやろ?なぁ?」
「いや、僕は知らないのですが。」
「お・ま・え・は、アホか。ほんとしょーもないのー。なんで知らんねん。気分悪いわ。」
「すみません、あまりこの世界のこと詳しくなくて。」
「なんやねん、世界に詳しないとか、自分、頭弱い系の子か。」
「まぁ、そんなところです。すみません。」
「じゃ、ま、しゃーないな。許したるわ。」
「で、なんぼ払うねん。」
「あ、契約の金額でしょうか。」
「それ以外に何があんねん。自分、わしを雇いたーて来たんやろ、ちがうんか?」
「えぇ、そうです。あなたを雇うかどうかを決めにここに来たんです。」
「せやろ、だったら、なんぼ払うか言いや。」
「いや、その前にお話しをして、僕達の仲間としてやっていけるのかを確認をしたいのです。」
「あー、そういうのいらんて、かまへんかまへん。」
「ですから、あなたが不要でもこちらがいるんです。」
「自分細かいやっちゃのぉ、そんなんやったらモテへんで。」
俺はこれ以上話しをするのが嫌になってしまった。確かにすごい美貌だ。だが、話が出来ないのでは、どうしようもない。
王子が逃げるのも、納得できる。こんな婚約者は嫌だろう誰だって。しかし、侯爵家の教育はどうなっているのだろう。にしても、何故関西弁なのだろう。
とにかくアリスに面接を終わるように言おう、これ以上は無駄だ。
「アリス、彼女とは話しが出来ないので、今回は見送りにしよう。」
「ショーヘイがそれで良いなら良いわ。」
俺とアリスが席を立つと、チャリティーは慌ててすがってきた。
「いやいや、ちょっと待ってーな。きぃ短いのぉ、自分。わしが悪かった、話ししたるから、金くれ。」
「いや、もう無理です。しかも金くれって何ですか。」
「せやから言うてるやん、わし金ないねん。住むところもないねん、仕事もないねん。だから、助けると思って金くれ、頼む。」
「僕と契約してくれるなら、住む場所も、給与を支払いします。でも、あなたはまともに話しをしようとしないじゃないですか。」
「ちゃうねん、そういうんじゃないねん。照れてるだけやねん。な、わかるやろ。」
「いや、わかりませんが。」
「もぉ、自分いけずやのぉ。」
チャリティーはどうやら本当に照れているようで、顔を赤くして下を向いている。
しかしこれは面倒だ、相当に面倒だ。ツンデレに分類されるのだろうが、ツンの癖が強すぎる。デレも分かりづらいし。
俺も困っていると、今まで黙っていたデスティニーが口を開いた。
「昭平さん、彼女は悪い人ではないと思います。少し面倒な人ではありますが、そこも含め可愛いと思って良いのではないのでしょうか。」
アリスを見ると微笑みながら頷いている。じゃ、しょうがないか。
「わかりました、チャリティーさん、あなたと契約します。」
それを聞いたチャリティーは笑顔になり、俺に抱き着いてきた。
「ほんまに?ありがとう。自分ええ奴やん。」
俺は彼女に抱き着かれたまま、言った。
「今、デスティニーが住んでいる家に一緒に住んでください。それから、仕事については、追って連絡します。」
「おおきにな。それからデスティニーよろしゅうな。」
「はい、チャリティーさん。よろしくお願いします。」
その後、何度かチャリティーと話すうちに、関西弁は本当に照れ隠しなのだと分かってきた。どうやら初対面の人とは関西弁で、しかも輩風にしか話しが出来ないようだ。
王子と上流階級の社交場に同伴した際も、その調子で話してしまい、ひんしゅくを買った。王子はチャリティーを理解しているので、問題としなかったようだが、周りから婚約解消の圧が凄かったようだ。
結局王子は圧に屈して婚約を解消し、それを知った侯爵家は娘を恥として、家から追い出した。そんな感じだったらしい。
「チャリティーも素直に話せば可愛いのに、何故出来なかったのかな。王子も気の毒だよ。」
「んなもん、知るかいな。大体あいつが小さいねん。いや小さいのは息子のことちゃうで、それは小さくなくて、わしも満足しとったからの。しかし、自分は小さそうやの。わしに見せてみ。」
「嫌だよ、何言ってんだよ、見せないよ。確かに小さいとは思うけどさ。」
「わしに見せたら大きくしたるがな。そりゃもう、パンパンに大きくな。」
「品が無いよ、侯爵令嬢だろ。」
「元、侯爵令嬢な。今はただの品の無い傭兵の女や。せやから、自分はわしに、好きに触ってもええねんで。」
「いや、触らないよ。怖いし。」
「相変わらずいけずやの、自分。ま、その内わしの魅力で貢がせて、精も搾り取ったるわ。」
「いや、マジで怖いよ。」
そんなこんなで、無事に下衆な二人目が決まった。後一人決めたらいよいよ冒険の旅に出発だ。